- 原産:ヨーロッパ
- 科:キク(asteraceae)
- 属:ヤグルマギク/セントレーア(Centaurea)
- 種:ヤマヤグルマギク/モンタナ(montana)
- 別名:セントレーア・モンタナ/ペレニアル・コーンフラワー(perennial cornflower)/マウンテン・コーンフラワー(mountain cornflower)/モンタナ・ナァプウィード(montane knapweed)
- 開花時期:4月~7月
- 花の色:青色●紫色●白色〇黒色●
- 葉の色:緑色●
- 分類:多年草
- 草丈:約30~70cm
- 誕生花:
- 花言葉:
- 用途:切り花
目次 | ||
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花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
ヤマヤグルマギクとは!?
ヤマヤグルマギクは学名Centaurea montana、別名では「セントレーア・モンタナ」や「ペレニアル・コーンフラワー(perennial cornflower)」等とも呼ばれるヨーロッパ原産の多年草です。
ヤマヤグルマギクの語源(由来)
- 属名のCentaureaは、ギリシャ神話に出てくるケンタウロスに由来しており、ケンタウロスは古代ギリシャ語で「Κένταυρος」になり、ラテン語で「Centaurus」になります。
- 伝承によると、ケンタウロスのカイロンは、ヘラクレスの矢に射抜かれて怪我をした時に、ヤグルマギクで作られた傷薬もしくは湿布を使って傷を覆い、傷が治癒したと言われています。
- 種小名のmontanaはラテン語で「山の」を意味しており、高地の牧草地や山地に自生している事に由来します。
ヤマヤグルマギクの特徴(魅力)
- ヤマヤグルマギクは春から夏に開花する花を鑑賞する目的で育てられる多年生の植物です。
- ヤマヤグルマギクはヤグルマギクと比べると、やや野趣に溢れた草姿をしています。
- ヤマヤグルマギクは葉が大きく長さ約10(~30)cmありますが、ヤグルマギクは葉が長さ約2.5~10cmであまり目立たず洗練された雰囲気があります。
- ヤマヤグルマギクは花の外周部の小花(筒状花)が細長くひょろひょろとした外観をしていますが、ヤグルマギクはラッパの様に広がり大きく装飾的です。
- ヤマヤグルマギクは多年生のため毎年楽しめますが、ヤグルマギクは一年草のため花を楽しんだ後は枯れてしまいます。
- ヤマヤグルマギクの花は頭花で、外周に並ぶ細い筒状花(舌状花とされる場合もある)と、中央に直立する筒状花で構成されています。
- 外周の筒状花は不稔性(種を作らない)で、中央の筒状花を囲むように横向きに並び、色はふつう青色で、筒状の小花は裂片が5個あり、裂片と筒部はほぼ同長です。
- 中央の筒状花は雄蕊や雌蕊をもつ稔性(種をつくる)で、中央で直立しており、色は紫色で小さいです。
- 花の下には蕾を包む卵形の苞葉があり、苞葉は縁部分が黒色をした苞片が何枚も重なり装飾的な雰囲気をつくります。
- 花は切り花としても楽しめれており、管理の仕方にも左右されますが花瓶の中で5~7日程度楽しめます。
- 開花期の4月~7月になると花蜜を求めて花の周りを元気に飛び回る花蜂や優雅に飛び回る蝶々の可愛らしい姿を観察する事が出来ます。
- ヤマヤグルマギクは地面下に根茎があり、徐々に広がる事で群生をつくります。
ヤマヤグルマギクの草丈は約30(~70)cm、地下茎で広がり群生をつくり、茎は直立して分枝は少なめです。茎の色は緑色で、白色の毛が密生もしくは疎らにつきます。葉序は互生葉序、葉色は緑色で白色の毛が疎らもしくは密に生えています。葉身の大きさは長さ約10(~30)cm、葉身は披針形もしくは狭楕円形です。花序は頭状花序、頭状花序は直径約5cm、筒状花のみで構成(外周の花は舌状花とされる場合もある)されており、花序の基部には苞葉があり、苞葉は卵形で縁部分が黒色の苞片が重なっています。外周の筒状花(舌状花)は横に向かって広がり、細長く筒部とほぼ同長の裂片が5個あり、内部に雄蕊と雌蕊がなく不稔性(種を作らない)です。中央の筒状花は小さく直立していて雄蕊と雌蕊があり稔性(種を作る)です。果実は痩果(果実は成熟すると乾燥して裂開せず、中に1個の種子を包みます)です。痩果は楕円形で長さ0.5(~0.6)cm、色は薄褐色です。種子は冠毛があります。
ヤマヤグルマギクの切り花の楽しみ方
- 収穫は朝の涼しい時間帯もしくは夕方におこないましょう。
- 水揚げは水切りを行いましょう。
- 水揚げ後は花瓶に生けて飾ります。
- 管理場所は出来るだけ低温環境(糖の消費や蒸散が抑えられる)に置くと日持ちがよくなります。
- 管理は必要に応じて数日ごとに水切りを行い、水換えも同時に行いましょう。
- 日持ちは管理の方法でも左右されますが5~7日程度です。
水切り法
水切り法とは、切り花の切り口を水の中に付けた状態で切り戻しを行い、切り口の更新を行う水揚げ方法です。
水切りは、特定の植物または特定の条件を除いた、殆どの植物に行われている、最も一般的な水揚げ方法になります。
水切りは、水の中で茎を切るため導管内に気泡が入りにくいメリットがあります。また水切りを行うことで「微生物」「空気」「その他」が原因で詰まっている茎を取り除くため、切り口からの水揚げ正常に戻ります。
水切りの方法
切り花の切り口を水の中に浸けます。水の中につけた状態で、切口の根元から上に1~5cm程度を取り除くつもりで、ハサミを使って斜めにカットします。
切り口部分を斜めにすることで、吸水部分が広がり、水揚げの効果が高まります。
ヤマヤグルマギクの園芸品種の紹介
- パープルハート(Centaurea montana ‘purple heart’)は鮮やかな紫色と純白の2色の花色が上品な雰囲気をつくる魅力的な園芸品種です。花は外周にある長い筒状花が純白で、中央の小さな筒状花が鮮やかな紫色をしています。草丈は50cmまで成長して、地下茎により広がり群生をつくります。
- アメジストスノー(Centaurea montana ‘amethyst in snow’)は濃い紫色と純白の2色の花色が上品な雰囲気をつくる魅力的な園芸品種です。花は外周にある長い筒状花が純白で、中央の小さな筒状花が濃い紫色をしています。草丈は50cmまで成長して、地下茎により広がり群生をつくります。
- アメジストドリーム(Centaurea montana ‘amethyst dream’)は、花の中央から外側まで紫色1色の気品ある花色が特徴の園芸品種です。静かで優雅な雰囲気を漂わせる紫色の花は、高貴(貴族等)な印象を与えたり、ミステリアスな印象を与えるため、エレガントなお庭や格式の高そうなお庭等によく合うでしょう。草丈は50cmまで成長して、地下茎により広がり群生をつくります。
- ブラックスピリット(Centaurea montana ‘black sprite’)は、花の中央から外側ま殆ど黒色をした紫色の重厚感ある花色が特徴の園芸品種です。黒色の美しい花色は「夜(闇)」や「未知」などを象徴しており、重厚的で高価な印象を与えたり、モダンでスタイリッシュな印象を与えたりします。そのため重厚感のあるお洒落なお庭や、洗練された現代的なお庭などにおすすめです。草丈は35cmまで成長して、地下茎により広がり群生をつくります。
ヤグルマギク(セントレーア)の主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
ヤグルマギクの珍しい種類、主な種と園芸品種の紹介【2020】
ヤマヤグルマギクの育て方
花壇の土づくり
日当たり
ヤマヤグルマギクは日光のよく当たる場所で最も生産性が高まり沢山の花を咲かせます。そのため直射日光が6時間以上あたる日向が理想です。また直射日光が3時間から5時間の半日影までで育てられます。ただし日当たりの悪い環境で育てると茎が徒長したり花数が減ったりします。
作土層
ヤマヤグルマギクがしっかり根を張り健康な成長するには、十分な深さの作土層(表層にある柔らかな土)が必要です。深さ約30cmまでスコップを使い穴を掘り、根張りを邪魔したり保水性や栄養の保持を悪くする石やゴミ等を取り除いておきましょう。
土壌のPH
ヤマヤグルマギクは土壌のPH6.5~7.5の間を好みます。PHが低すぎると生育不良になる可能性が高くなります。そのため植付け前にPHを診断して、PHが低い場合は苦土石灰を入れる等してPHの改善を行いましょう。
土壌の土質
ヤマヤグルマギクは通気性と排水性がよく適度に肥沃な砂壌土を好みます。水捌けの悪い粘土質な土壌では根腐れや真菌性の病気にかかりやすくなるため注意が必要です。また肥沃すぎる過ぎる土壌でも草姿が乱れ倒伏しやすくなるため注意が必要です。そのため、植え付け前にしっかり土壌診断を行い改善してから植え付けを行いましょう。
- 土を掘る時に土が硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
- スコップで土を深くまで掘り返し石等を取り除きます。
- 土を適度に濡らして手にとり握って土塊を作り通気性・保水性を診断します。
- 手のひらを開き土の塊がバラバラと崩れる場合は通気性と排水性の高い砂壌土や砂土に近い土壌です。栄養の乏しい土壌や乾燥に強い植物にむきます。
- 保水性を改善したい場合は保水性を高める用土(堆肥や黒土など)を入れると良いでしょう。
- 手のひらを開いても土の塊は崩れず、土塊を軽く指で押すと崩れる場合は通気性と保水性のバランスが良い壌土に近い土壌です。幅広い植物に向く土壌です。
- 植物に合わせて保水性を好む植物であれば保水性を高める用土(黒土なバーミキュライト等)を入れたり、乾燥を好む植物であれば排水性や通気性を高める用土(川砂やパーライトなど)を入れましょう。
- 手のひらを開いても土の塊が崩れず、指で押しても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。必要に応じて排水性・通気性を高める用土(川砂・パーライト等)を混和しましょう。
- 手のひらを開き土の塊がバラバラと崩れる場合は通気性と排水性の高い砂壌土や砂土に近い土壌です。栄養の乏しい土壌や乾燥に強い植物にむきます。
- 土壌に入る有機物の量を診断しましょう。土の色を見て、有機物が沢山入る肥沃な土の場合は有機物(腐植)が多く含むため土の色が黒っぽくなります。一方で有機物(腐植)が少ない場合は土の色が薄くなります。
- 土壌の状態とバランスを見ながら、2割から3割を目安に堆肥(腐葉土・バーク堆肥等)を土壌に混和しましょう。
鉢土づくり
日当り
ヤマヤグルマギクは日光のよく当たる場所で最も生産性が高まり沢山の花を咲かせます。そのため直射日光が6時間以上あたる日向が理想です。また直射日光が3時間から5時間の半日影までで育てられます。
培養土
ヤマヤグルマギクは培養土は通気性の高い草花の培養土で育てられます。自作する場合は通気性が良く適度に肥沃な培養土で育てましょう。
- 赤玉土(小粒・中粒)+腐葉土=7:3
- 赤玉土(小粒・中粒)+パーライト+腐葉土=4:2:4
水やりの仕方
地植え
ヤマヤグルマギクは乾燥に強いため、地植えしている場合は極端に乾燥する場合を除いて、基本的には降水のみで育てられます。ただし土の中に指を入れて湿り気がない場合、葉や茎が萎れている場合は直ちに水やりを行いましょう。
鉢植え
ヤマヤグルマギクを鉢植えで育てる場合は土の乾燥が早くなるため、定期的な水やりが必要になります。ただし水やりを行い過ぎてジメジメとした環境が続くと根腐れしてしまうため、土の表面(数cm)が乾いてきたタイミングで水やりを行うといいでしょう。
肥料の与え方
ヤマヤグルマギクは栄養の少ない土壌でも問題なく育ち、基本的には肥料を必要としません。肥料の与えすぎは、花が少なくなったり、草姿が乱れ株が倒伏しやすくなる可能性があります。そのため肥料の与え方には注意が必要です。
地植えする場合は、極端に栄養の乏しい土壌でない限りは肥料不要です。鉢植えで育てる場合は2週間に一度の頻度で水やりの際に液肥を与えましょう。
剪定のやり方
ヤマヤグルマギクは剪定せずに育てる事も出来ますが、摘芯する事で茎の分枝を促してふさふさとした草姿を作ったり、花がら摘みを行うことで次の花の開花を促したりする事が出来ます。
摘芯
ヤマヤグルマギクの摘芯は必ず必要な作業ではありませんが、春の成長時期に摘芯することで、茎の数が増えて密度の高いコンパクトな草姿を作ったり、花の数を増やしたりすることが出来ます。ただし摘芯する事で開花が遅れたり、茎の長さが短くなり切り花に使いにくくなるかもしれません。目的に合わせておこないましょう。
摘芯のやり方は、植物が勢いよく成長する早春に茎の成長点を指で摘みとり分枝を促すだけです。
花がら摘み
ヤマヤグルマギクの種を採らない場合は花がら摘みを行いましょう。何故なら枯れた花を残すと見た目が悪いばかりか、こぼれ種により雑草化したり、種の生成のためにエネルギーが使われて株が弱り寿命が短くなったり、蕾にエネルギーが送られずに開花が進まなかったりするからです。開花を促進するためには、こまめな花がら摘みが重要です。
花がら摘みのやり方は花が終わったら葉の上で切り戻し剪定をおこないます。
夏越しする方法
ヤマヤグルマギクは夏の暑さに耐えますが、ジメジメとした多湿を苦手にしており、特に高温多湿環境では生育不良を引き起こしやすくなります。そのため必要に応じて夏越し対策をおこないましょう。
ヤマヤグルマギクの夏越し対策
- 高温多湿になる場所を避けて管理しましょう。
- 鉢植えの場合は長雨に当たらない場所に移動して、地植えの場合は雨の当たりにく場所で育てるといいでしょう。
- 土壌の土質が粘土質だったり腐植が多い場合は、植え付けの前にパーライトや川砂などを混ぜて土壌改善を行っておきましょう。
- 周辺より高い場所に植え付けを行うと土壌の排水性が高くなり、水分が停滞しにくくなります。
- 空気の流れの良い場所で管理しましょう。周りが壁に囲まれていたり、草が繁茂してる場所で管理すると空気が停滞して湿気が溜まりやすくなります。
- 複合的なストレス(日差し・暑さ・乾燥)がかかる環境は避けましょう。
- 一日中日向にある植物は【午後からの暑さ・強い日差し・乾燥】の複合ストレスを強く受け植物へのダメージが酷くなる傾向にあります。鉢植えで育てている場合は午前中のみ日が当たり午後から日陰になるような環境に移動しましょう。
- 必要に応じて強い日差しと暑さを避けるために遮光ネットを利用しましょう。
冬越しする方法
Hardiness:3b~8a
ヤマヤグルマギクは耐寒性が高く冬越しの準備をする必要は基本的にありません。
挿し木や株分けで増やす
ヤマヤグルマギクの株分け手順
- ヤマヤグルマギクの株分け時期は春もしくは秋が最適です。
- スコップを使い株を掘りあげます。
- 根茎に数個の芽をつけるようにしてナイフやハサミ等を使い切り分けます。
- 株分けしたらそれぞれの株を植え直して水をたっぷり与えましょう。
播種で増やす
ヤマヤグルマギクの種蒔の方法
播種時期:3月~5月・9月~10月
発芽適温:約15~20度
発芽日数:約7日
発芽条件:
- 種を撒く時期は、暖地では秋、強い霜の降りる地域では春です。
- 種を撒く前に、ポットに種まき用の培養土を準備します。
- もしくは直播きする場所の土壌を整えます。
- 種を土に置き軽く押し込みます(鎮圧と呼ばれる方法で土と種の接着を高め水分の吸収をよくする)
- 種の上に薄く土を被せます。
- 播種後は乾燥すると発芽率が落ちるため、基本的に土と種が乾燥しないように水やりを行い管理しましょう。
- 発芽して本葉が5~7枚出たらポット苗を定植しましょう。
植物の病気
ヤマヤグルマギクの病気
- 立枯病
- 菌核病
- 白絹病
ヤマヤグルマギクの害虫
- アブラムシ
- スリップス
- ヨトウムシ