プランターで植物を育てる時に大切なポイントは「通気性の良い培養土」と「プランター選び」と「管理」の3ポイントです。
プランターで植物を育てる場合は水で崩れにくい土粒とたっぷりの腐葉土で育てる必要があり、花壇の土等を使うと直ぐに土が固く植物が上手く育たなくなります。またプランターのサイズが植物と合っていないと、植物が倒れたり水やりのタイミングがはかり難い等の不便が生じてしまうためプランター選びも大切です。
このページでは通気性の良い培養土の作り方やプランターの選び方、管理の仕方を等を紹介しています。
プランターで使う培養土はホームセンターや園芸ショップに行けば既にブレンドした物が置いてありますが、その配合される用土や品質も様々です。袋が透き通っていれば配合され用土の割合や状態(カビや藻が生えてないか)が何となくわかりますが、基本的には買って開いて見ないと分からないなんて事もあります。その点で自分で培養土を作れば植物に合わせて保水性や通気性等のを変更する事が出来て、沢山の培養土を作る事でスキルアップにもなります。
基本用土と改良用土
園芸の培養土は基本的に基本用土と改良用土の組み合わせで出来ています。基本用土は培養土のベースとなる用土で、通気性や保水性の良い土や鉱石が使われます。改良用土は基本用土を補う働きがあり、膨軟性を持たせたり通気性や保水性をさらに高めたり、栄養(微量要素)を含む腐葉土等では微生物の働きを高めたり栄養(微量要素)を植物に供給する事が出来ます。
基本用土の種類
通気性や保水性のバランスがよく適度な重さと粒の崩れ難さがあり、最も人気のある基本用土ですが、リン酸を吸着しやすく植物への吸収を阻害する可能性があるため肥料を与える時は注意が必要(リンを多めに与える等)です。
培養土の通気性や排水性を大きく向上させ、湿った土壌でも土粒が崩れにくいため鉢土の培養土として非常に向きます。非常に軽いためハンギングバスケット等の培養土には欠かせませんが、一方で重い花木等に利用すると植物を支える事が出来ず倒れる事もあるため注意が必要でしょう。
通気性や保水性が良く適度な重さと土粒の崩れ難さから赤玉土と同様に利用されますが、酸性のため多くの場合はツツジの用土として利用されます。鹿沼土は濡れると黄色く色変わりして乾燥すると戻るため水遣りのタイミングが掴みやすいのも魅力です。
通気性や排水性がとても優れ、軽量で土粒が崩れにくく非常に軽量かつ強度があるため長持ちします。基本用土としてはサボテンやラン等に使われますが、水はけの悪い土に1割から2割を混ぜ通気性を改善する改良用土としても利用する事も出来ます。
黒土は有機物を多く含み保水性や保肥力を大きく高める用土です
通気性が低いため、水捌けのいい土壌を好む園芸植物に使われる事は少ないですが、菊等の肥沃な土壌を好む植物には向きます。
改良用土の種類
土壌の膨軟性や保水性、通気性や保肥力を高める働きがあり、また有機物が微生物の働きで分解される事により微量要素が植物に補われ健康な成長を補助してくれます。腐葉土はリグニンを含むバーク堆肥や酸性のピートモスより扱い易く、最も人気の高い改良用土です。
バーク堆肥は腐葉土と比べるとリグニンが多く含まれているため分解が遅く膨軟性が長続きすると言われます。一方でリグニンは植物の成長を抑制したり発芽不良等を起こさせる事があるため、成長の早い草本植物より低木やバラ等の植物に向くと言われます。
通気性や保水性、膨軟性を高める所は腐葉土と似ますが、腐葉土と比べるとピートモスは均一で軽く無菌で栄養を殆ど含まないため分解されにくく微生物の活性化は弱めです。またPH無調整のピートモスではPH4程度と非常に高い酸性のため、一般的な植物で利用する場合はPH調整済のピートモスを購入するか自前で石灰を加えてPHを調節する必要があります。また乾いたピートモスは水を非常に弾くため植付け前に水をかけしっかりかけ馴染ませる必要があります。
くん炭は根腐れ防止として利用される事が多い改良用土ですが、それはくん炭が土壌の通気性を大きく改善し、またくん炭を好むバチルス菌や菌根菌などの有用菌が増えやすい環境になるため結果的に根腐れを起こす病原菌から植物が守られるためです。ただしくん炭は単体でPH8前後とアルカリ性が強いため、多く使用すると土壌がアルカリ性になり栄養の溶解に影響が出る事があります。そのため一度の使用は10%程度に抑える方がいいでしょう。
パーライトと並んで非常に人気が高く、層状になった薄い板が水分や空気を溜め込み保水性や保肥力、通気性を大きく向上させます。また栄養が殆どなく無菌のため改良用土の他にも挿し木や種まきの用土としても使われます。ただし粘土質の重い土と混ぜて使用すると層が圧縮され土粒が崩れてしまうためパーライト等の軽い土と混ぜて使うのがおすすめです。
通気性や排水性を大きく改善し強度があるため土粒が崩れにくいのが特徴です。基本用土としてサボテンやラン等に使われたり、水はけの悪い土に1割から2割を混ぜて通気性を改善する改良用土として利用されます。
草花の培養土はベースとなる基本用土と改良用土を混ぜる事で出来ており、割合は様々ですが一般的には基本用土の赤玉土と改良用土の腐葉土を混ぜた物が使われます。赤玉土と腐葉土の組み合わせは非常に凡庸性があり殆どの草花を問題なく咲かせる事が出来ますが、基本用土をパーライトに変えて水捌け良く軽量の培養土にしたり、腐葉土を栄養の少ないピートモスやバーク堆肥に変えて微生物の影響を減らし膨軟性を長持ちさせる培養土にする事も出来ます。また赤玉土と腐葉土の一般的な培養土に根腐れ防止のくん炭や保水性アップのバーミキュライト等を少量混ぜ合わせる事で簡単に植物に合わせたオリジナルのブレンドを作る事も出来ます。
また培養土には基本用土や改良用土の他に肥料成分として元肥が混ぜこまれます。基本的には持続的に長く肥効が続く緩効性肥料が使われますが、肥沃な土壌を好む植物等では有機質も入った配合肥料等もおすすめです。
☆培養土の配合例☆ | |
赤玉土(6割)+腐葉土(4割)+元肥 最も一般的な培養土で、欠点が殆どなく草花から低木まで育てられます。赤玉土がリン酸を吸着しやすいため元肥はリン酸が多めの緩効性肥料を使うと良いでしょう。 | パーライト(4割)+ピートモス調整済(4割)+バーミキュライト(2割)+元肥 非常に軽量で無菌の培養土です。軽量のため扱いやすいですが、低木等の重量のある植物には向きません。用土に栄養素を殆ど含まないため微生物等の影響を受けにくく清潔感がありますが、微量要素を含む栄養は肥料に依存します。また赤玉土と比べてパーライトは土粒が崩れにくいため用土が長持ちします。 |
赤玉土(6割)+ピートモス調整済(4割)+元肥 腐葉土で作られた培養土と比べてピートモスは無菌で清潔感があり、膨軟性が長持ちします。一方で栄養素が殆どないため微生物の活性化もなく肥沃な土壌を好む植物等には向かないかもしれません。 | 赤玉土(6割)+バーク堆肥(4割)+元肥 腐葉土で作られた培養土と比べてバーク堆肥は分解されにくく膨軟性が長持ちするため低木等の培養土に向きます。バーク堆肥に含まれるリグニンが植物の成長を抑制したり発芽不良等を起こす可能性があるため成長の早い草花等には向かないかもしれません。 |
赤玉土(5)+腐葉土(3)+バーミキュライト(2)+元肥 一般的な培養土に、保水性と保肥力の高いバーミキュライトを足した培養土です。乾燥に弱い草花に向き管理が楽になります。 | 赤玉土(6割)+腐葉土(3割)+くん炭(1割)+元肥 一般的な培養土に、くん炭を混ぜて根腐れしにくくした培養土です。通気性が良くなる事で根に酸素がよく行き渡り、また菌根菌やバチルス菌等の有用菌が増えやすくなる事で病原菌が根から侵入する事を防ぎます。くん炭を利用する場合は一緒に菌根菌も使うのがおすすめです。 |
培養土と同様に大切なのがプランター選びです。植物の大きさ合わせてプランターのサイズを選び、通気性や透水性等を考慮して材質を選び、インテリアやお庭の雰囲気に合わせて総合的にプランターのサイズや材質、色等を選ぶと良いでしょう。
プランターは一般的に「標準鉢」「深鉢」「浅鉢」の3タイプに分けることが出来ます。標準鉢は鉢の直径と深さがほぼ同一で一般的な草花を育てるのに最も向いているプランターです。深鉢は鉢の直径よりも深さがあり、根を深く張るユリやシンビジウム等の草本植物やバラ等の低木で利用されます。浅鉢は鉢の直径深さが浅く、根が浅いアザレアやベゴニア等の植物や多肉、寄せ植えの容器に向きます。また植物の成長を抑える盆栽は根の成長を制限する浅鉢が利用され、種蒔や挿し木の際の容器としても利用されます。
プランターの深さ
プランターの深さは植える植物の大きさとバランスを考えて選ぶのが一般的です。コンテナの深さを100%とした時、植物の高さを80%〜120%程度にしておくとバランスが良く見栄えが美しなります。逆に高すぎたり低すぎるプランターを選ぶと風で倒れやすくなったり見栄えが悪くなってしまうので注意が必要でしょう。
口のサイズ(号数)
プランターの口のサイズは一般に1号〜8号、9号の様に表示されており、号から鉢の直径を知ることができます。
鉢に植える草花の広がりや、苗の数等を考慮して号数を選ぶといいでしょう。あまり号数の低いものでは根詰まりを起こしたり風で倒れやすくなったりします。一方で号数の大きすぎる物では植物とのバランスが悪くなり見た目が悪くなったり、水の乾きが疎らになり小さな植物を育てると水やりのタイミングがはかりにくくなる事があります。
【3cm ☓ 号数 = 鉢の直径】
1号鉢:直径3cm 2号鉢:直径6cm
3号鉢:直径9cm 4号鉢:直径12cm
5号鉢:直径15cm 6号鉢:直径18cm
7号鉢:直径21cm 8号鉢:直径24cm
植え付けのやり方
必要な道具
- 培養土(元肥入り)
- 鉢底石(軽石等)
- プランター
- スコップ
- ジョーロ
植付けの手順
![]() プランターの底に鉢底石(軽石等)を底が見えなくなる程度(約3cm)に敷き詰め、培養土を少し入れます。 | ![]() ポットから苗を抜き根鉢を崩して、培養土の上に苗を置き位置調整を行います。 |
![]() 苗の位置が決まったら、培養土をプランターの縁から下3cm程まで足していきます。 | ![]() 隙間が出来ないように棒や指を使い苗の間に培養土を押し込みます。プランターの側面を叩くことでも土を馴染ませることができます。 |
![]() 培養土を入れ終わったら、プランターの底から水が流れ出るほど、たっぷりの水を与えましょう。水が入ると苗との間に土が隙間なくはいり土が落ち着きます。 |
根鉢を崩す
根鉢はポットやプランター内で根が回ってしまう状態をさします。根鉢が出来ると新しい根が出にくくなるために成長が抑制されてしまったり、水が乾きやすくなり乾燥しやすくなります。
根鉢を崩し養水分の吸収効率の悪い古い根を取り除く事で、吸収効率のいい新しい根の成長が促され、同時に新芽や新しい葉が出やすくなります。
根鉢の崩し方は、「根鉢の側面や下部分、肩部分を指で毟る方法」「側面から根鉢を押して潰す方法」「水に付けて泥を落とす」「ハサミを縦方向に数カ所入れて土を落とす」等の方法があります。
一般的に宿根草は丈夫なので根鉢を崩しても平気なものが多いですが、一部では根を傷つけられるのを嫌う植物【クリスマスローズや豆科植物、ごぼうの様な下に真っ直ぐ伸びる根の植物等】があるため、これらの植え替えを嫌う植物は出来るだけ根を弄らずに、そのまま植え替えを行いましょう。
プランター植物の管理
水やり方法
プランター植物の管理で最も気を付ける事は水やりです。花壇の植物と比べるとプランターの土は乾燥しやすく水やりの頻度が高くなりがちですが、他の一般的な植物と同様に水の与え過ぎは根腐れを招き枯死する原因にもなります。
水やりのタイミングは植物によって様々ですが、基本は土壌の表面が乾燥したら与え、乾燥を好む症状では土壌の表層が乾いたタイミングで行うと良いでしょう。土の乾燥を知る方法は「土の色変化を見る方法」や「土の中に指を入れる方法」等があり、それぞれ表面の乾燥を知る場合は土の色を見て表層の乾燥を知りたい場合は土の中に指を入れる等するといいでしょう。またこの他にも土の乾燥を知る方法にはプランターを持ち上げ重さをみたり、植物の状態を見たり、水分計を使う方法等があります。
水やりの時間は一般的に光合成等で水分を必要とし始める午前中に行うのが一般的ですが、何時でも行う事が可能です。ただし夏場は日中に水やりをすると暑さで煮立ち根を傷めることがあるため朝もしくは朝と夕方に水やりをおこないましょう。
水を与える量はプランターの底から水が流れ出るくらいたっぷりと与え、根に新鮮な空気が行き渡る様にしましょう。根に新鮮な空気が行かないと酸欠を起こしたりガス(エチレン)が溜まった状態になり根が成長を止めたり根腐れを起こす事があります。また水を与えてもスムーズに鉢底から水が通らない場合があります、その場合は培養土の通気性が悪くなっている可能性があるため植え替えを検討して下さい。
基本的に水やりは、株元に優しく行って下さい。葉に水滴がかかったり泥はねをすると水滴の中で真菌や細菌が移動して気孔から入り斑点病等の病気を引き起こす可能性があります。また泥はねや土粒の破壊を防ぐために株元を腐葉土やバークチップ等でマルチングする事もおすすめです。
プランター植物への肥料の与え方
植物によって元肥だけで育てる植物や元肥と追肥の両方が必要な植物等がありますが、多かれ少なかれ植物には肥料が必要になります。特に植え付け時に混ぜ込む元肥は追肥で与えにくいリン酸やカリ等を土壌に混ぜ込んで与えれるため必須ともいえるでしょう。
元肥には様々なタイプがありますが、最も大切な事はリンが多めの肥料を選ぶ事です。赤玉土がリン酸を吸着しやすい事もありますが、リン酸は水に溶けにくく追肥で施すのが難しいため事前に培養土にしっかり元肥を混ぜ込んでおきます。
元肥には水でゆっくり溶けて効果が長く続くIB肥料や根酸でコーティングが溶かされ肥料成分が出る肥料等、好みや植物に合わせて元肥を選ぶと良いでしょう。また肥沃な土壌を好む植物や丈夫に植物を育てたい場合はアミノ酸やミネラルを豊富に含んだ配合肥料もおすすめです。
追肥は生育を途切れさせないための肥料です。通常は植付け後、1ヶ月~2ヶ月後から与え始め、成分はリンが多めの肥料から窒素・リン・カリがバランス良く入った肥料が好まれます。
追肥の肥料には液肥や緩効性肥料、錠剤等があります。液肥を使う場合は即効性がありますが、肥効が続かないため10日~14日に一度水やりの時に与える必要があります。緩効性肥料の場合は肥効が長く続くため一度与えると1ヶ月から3ヶ月程度もちます。基本的には好みや植物の状態に合わせて肥料の種類を選ぶと良いでしょう。
植え替えのやり方
コンテナ栽培される植物は数年に一度植え替えが必要になります。その主な理由は絡みあった根を崩す(切り戻す)事で新しい根や葉の成長を促し株の若返りをはかるとともに、劣化した土を入れ替えて通気性や排水性等を改善する事にあります。
植え替えは基本的に生育期間中であればいつでも可能ですが、成長の始まる春もしくは秋が最も適しています。逆に真夏や真冬は植え替えに適しておらず、根付きが悪くなったり暑さや凍結によって植物が枯れてしまう事もあります。
培養土の再利用
プランターを植え替え時に出る使用済みの培養土は、土粒が崩れ通気性がなくなっていたり、分解されて膨軟性や栄養がなくなっている事があります。そのまま使用すると植物の成長は悪くなってしまいますが、捨てるには勿体なく出来れば再利用したいものです。
使用済みの培養土は、病原菌(立枯病や疫病等)で土が汚染されていなければ再利用する事が出来ます。土フルイを利用して土粒が崩れて微塵となった土や根を取り除きましょう。残った培養土は新しい赤玉土や腐葉土等をブレンドして再利用する事ができます。病気が発生した土は消毒して再利用する事も出来ますが、基本的には廃棄した方がいいでしょう。