植物を冬越しさせる上で最も大切な事は「耐寒性」を知り「寒さや凍結」への対策をする事です。
耐寒性は後ほど詳しく説明しますが、冬の寒さに耐えられる度合いです。これを知らないと対策のしようがありません。寒さに弱い熱帯植物等は寒さに当たると葉が白化し落葉して枯れる恐れがあり、また多くの植物は0度を下回り細胞が凍結してしまうと葉や茎が枯れてしまい最悪の場合は枯死する場合もあります。
そのため自分の地域の最低温度と植物が耐えられる温度を知り、寒さや凍結から植物を守るケアをしてあげる必要があります。
耐寒性は大きく分けて【耐寒性】と【半耐寒性】、【非耐寒性】の3つに分かれています。
簡単に説明すると耐寒性は0度より下の温度にも耐えられ、半耐寒性は0度までの温度に耐えられ、非耐寒性は0度~10度の低温でも枯れてしまう恐れのある植物です。
とは言え3つのパターンに無理やり分けているためあまり厳密でなく、半耐寒性植物も軽い霜であれば耐えられるものもあり、耐寒性植物も強い凍結に耐えられる植物もいれば軽い霜にしか耐えられらない植物もいます。
そのためより詳しく植物の耐寒性を知りたい場合は次に紹介するHardinessを利用すると良いかもしれません。
Hardiness zoneとは住んでる地域の温度と植物が耐えられる最低温度を合わせ、屋外でも育てられる地域の範囲を示すガイドです。日本では商品のラベル等に植物が耐えられる最低温度やHardiness zone等の記載はありませんが、ネットで調べると出てくるためこれを参考にすると良いでしょう。
例えばHardiness 9b であれば-6度程度の軽い霜まで耐えられ、以降の寒さでは枯れてしまう植物です。地域の最低気温を調べ(気象庁のホームページから数年分の年最低気温を確認して、その平均値を利用)植物がその最低気温に耐えられない場合は様々な対策をとってあげる必要があるでしょう。
冬に植物が枯れる原因は「低温ストレス」「霜と凍結ストレス」「乾燥」の3つです。
低温ストレス
観葉植物や熱帯の植物等は非耐寒性植物と呼ばれ、寒さに弱く約0~10度の範囲の低温でも枯れる事があります。植物の膜機能を不全にして細胞を傷付け、白化や萎れ、枯れ等の症状を引き起こします。
一般にこのような植物は寒さに非常に弱いため冬越しには室内への取り込みが必要です。
霜と凍結ストレス
植物に害を与える霜と凍結ストレスは主に3種類があります。
0度~-2度 : 外側のみに氷ができ、凍結に対して全く耐性のない植物等は被害を受け枯れる事があります。夜間の温度が5度を下回り始めたら初霜が降りることを予想して対策をとりましょう。
-2度~-4度 : 植物内部で氷が形成され細胞が傷付き葉や茎等に大きなダメージを与えます。半耐寒性植物の多くがこの温度で枯れてしまいます。
-4度以上 : 強い霜と凍結で殆どの植物に対して甚大な被害をもたらす温度です。凍結や乾燥により地上部の葉や茎の多くが枯れてしまいます。
植物は低温や凍結、乾燥により地上部の大部分を失う事がありますが、植物の1部は地下で保護されたり、ロゼットを形成して寒さを凌いだり、また浸透圧を変えたり、凍結しにくい溶液で細胞を凍結から守り様々な方法で冬を乗り切っていきます。
次に紹介する対策でこれらの植物を保護してあげましょう。
室内に取り込む
寒さや霜への対策として室内へ植物を取り込むのが最も簡単で効果的です。
日当りの悪さの心配もありますが、寒くなると植物は光合成の量が減るため窓際等の明るい場所であれば殆ど問題なく育てられるでしょう。ただし部屋の温度が高い環境では呼吸の量が増え光量が足りなくなり光合成と呼吸のバランスが崩れて寿命が短くなる事があります。
その場合は植物育成ライトを利用して冬の期間も植物を成長させるといいかもしれません。
温室に入れる
霜や体感温度の低下を防ぐ手段として温室も室内に入れると同様にポピュラーな冬越しの手段です。
室内と違い光量についての心配は殆どない一方で、外気との温度差が殆どないため非耐寒性の植物等は枯れてしまう恐れがあります。温室の壁にプチプチ等を貼り保温効果があげたり、非耐寒性植物等を育てる場合はヒーターを活用するのもいいでしょう。
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不織布を被せる
植物を地植えで育てており、移動が出来ない場合は不織布やビニールで囲いを作り霜や風などから植物を守る事ができます。温室と同様の効果があり不織布であれば水を通すため水やりも少し楽になります。
株元にマルチングする
植物が耐えられる最低温度と地域の最低温度が同程度であれば、腐葉土等でマルチングして霜対策するだけでも十分でしょう。
腐葉土は春になり暖かくなり始めると地面を温めるのを邪魔するため取り除く事も出来ますが、そのままにしておいても分解される事で土壌の団粒化や植物の栄養として成長を助けます。
剪定する
冬に茎葉を剪定せずに残しておく事は霜から植物を守る働きをしますが、剪定する事で見た目を良くしたり不織布等で植物を囲うのが楽になるため必要に応じて剪定する事も可能です。一般的には早春に剪定を行い、新しい成長の促進と病枝の除去をします。
植物への水のやり方
植物は冬の間は休眠にはいり殆ど水を必要としない上に、乾かし気味に育てる方が寒さや凍結に対する耐性が上がる事を知られています。そのため秋頃から水やりの回数を徐々に減らしていき植物を低温馴化させて冬の寒さに備える事が大切です。
一方で霜から植物を守るために霜の降りそうな日の前の夜に水やりをするという考え方もあります。土壌にある水は土や空気よりもゆっくりと熱を放出し凍結しにくいため霜の予防に繋がります。しかし強い霜が降りると逆効果になることもあるため注意が必要でしょう。水やりによる霜対策は、春の遅れてくる霜に対して効果的な方法です。
冬は肥料を控える
冬に成長の止まる植物は、基本的に肥料を必要としません。
また窒素肥料を多く与えられた植物は軟弱に育ち寒さや凍結によるストレスに対して弱くなってしまいます。そのため寒さに弱い植物は十月頃から肥料を控えて丈夫に育てる事が大切でしょう。
一方で、ミネラルやアミノ酸がたっぷりの有機肥料を普段から与えられた植物は、病気や環境ストレスに対して強くなる事が知られています。与える肥料を化成肥料から有機肥料に変えて植物を丈夫に育てると冬越しが上手くいきやすくなります。