剪定とは、植物の特定の部位を剪定ハサミ等の道具で切り、不要な部分を取り除く方法です。剪定の目的は植物によって様々ですが、一般的には非生産的な古い成長を取り除いて新しい成長を促す目的であったり、樹形や草姿等を形を整える目的で行われます。詳しくは剪定の目的に書いてあるためそちらをご覧下さい。
このページで剪定のやり方や剪定するべき茎の選び方、その目的や理由などを紹介しています。
目次
剪定のやり方と目的
剪定のやり方は大きく分けて「切り戻し」「間引き」「刈り込み」の3つあります。剪定のやり方にはそれぞれ目的と理由があり、剪定のやり方によって樹形や草姿がかわったり、また作業効率も変わったりします。
剪定のやり方や目的を知る事で、意味のない剪定を行う事が減ったり、目的の樹形や草姿に効率よく剪定出来たり、また健康な成長を促す事に繋がったりします。
切り戻し剪定
切り戻しとは、伸びすぎた茎を1本1本剪定して取り除き草姿(樹形)を整える方法です。
切り戻し剪定を行う目的は「形を整えるため」「生産性の高い新しい成長を促すため」「多湿環境の改善」等があります。
形を整えるためとは、一般的に植物は頂芽優勢にあるため剪定しない場合は一本の茎がひょろひょろと長く伸びて茎数・葉数・花数が減り見た目が悪くなる傾向があります。そのため植物によっては必要に応じて切り戻しを行い、頂芽優勢を崩し側芽を増やして形が整うように誘導してあげる必要があります。
生産性の高い新しい成長を促すためとは、基本的に茎は古くなると成長が鈍り、花の生産性等も落ちてきます。そのため切り戻し剪定を行い生産性の高い新しい成長を促してあげる必要が出てきます。
多湿環境の改善とは、切り戻し剪定を行い植物の株元に光が通る様にしたり、繁茂した茎を切り戻し風通しをよくする事です。多湿環境を改善する事で病気の原因にもなる真菌(カビ)や害虫の被害が減り、夏越ししやすくなる事があります。
間引き(枝抜き)剪定
間引き剪定とは、不要となった邪魔な茎を根元から剪定して取り除く方法です。
間引き剪定の目的は不要な茎を取り除く事で、主要な茎もしくは新しい芽にエネルギーを優先的に送ったり、光の通りや風通しをよくしたりする事で健康な成長を促す所にあります。
不要な茎とは一般的に「枯れた茎」「病気の茎」「損傷した茎」「元気な成長が見込めない細く弱々しい茎」「成長が衰えた古い茎」「道等にはみ出した邪魔な茎」や「忌み枝」と呼ばれる茎等あたります。
刈り込み剪定
刈り込み剪定とは、枝葉の表面全体を均一に剪定する方法です。切り戻しと似ていますが、一本一本の茎を選別してきる事がないため作業効率がよく、基本的に表面を撫でる様に切りそえられます。
刈り込み剪定の目的は生垣やトピアリー等の形を整える目的で行われます。また切り戻しと比べて作業効率が良いところも魅力です。
芯止め剪定
芯止め剪定とは、主に高木等の庭木の高さを抑える目的で、最も高い場所にある茎(幹)の成長点を剪定する事です。一般的に落葉樹では冬の間(12月~2月頃)に芯止め剪定が行われ、常緑樹では暑さや寒さのストレスが少ない春から初夏・初秋から秋頃に行われます。
芯止め剪定を行う事で、頂芽優勢が崩れて上への成長が抑えられます。ただし、恒久的に上への成長が抑えられるわけではないため、必要に応じて定期的に芯止めが必要になる事もあります。
茎葉を剪定する目的
植物の茎葉を剪定する目的は様々ありますが、一般的には「植物の健康な成長を促す」「見た目をよくする」「邪魔になる部分の撤去」等の理由があります。
茎葉を剪定する理由は様々ありますが、植物のどの茎を剪定すればいいのかを何となく知っておけば、不必要な茎を剪定するリスクが減ったり、作業の効率があがったり、植物の健康な成長を促すためにどの茎を切ればいいか何となく分かるようになり、気づいた時にしっかり剪定してあげる事が出来るようになるはずです。
枯れた茎
枯れた茎とは植物の細胞が内部まで死に、黒色や褐色になった部分です。枯れた茎は生き返る事なく、芽吹く事もありません。
枯れた茎は、日光を遮り光合成の邪魔をしたり、健康な茎の成長を邪魔したり、枯れて損傷した部分から病気を侵入させるリスク等になります。そのため、枯れた茎は気づいたら根元から間引き剪定されるのが一般的です。
ただし、枯れた茎を残す事で冬の寒さや霜から株が守られる場合があります。その場合は冬の終わり、霜の心配がなくなり芽吹きが始まる辺りで剪定を行うといいでしょう。
病気にかかった茎
病気に感染した茎や葉は「その部位を剪定して取り除きましょう」と言われます。
その理由は、放置すると導管等を通じて植物全体に病気が回り治療不可になったり、カビ(真菌)が原因であればそこから胞子を飛ばして他の株にも病気を広げてしまったりするからです。
病気の原因菌(真菌or細菌orウィルス等)や株に与える影響によって対処方もかわるため、対処の仕方は一概にいえるものではありませんが、病気の部位が一部であるならば早めに切り戻し剪定して取り除く方がいいでしょう。また冬越し後、前年の病気を持ち越さないために強く切り戻される事もあります。
※病気の茎を剪定したハサミは刃の部分に菌がつき汚染されている可能性があります。基本的には使い回すのは避け、必要に応じて消毒(熱・アルコール)を行い他の植物の剪定に利用しましょう。
損傷した茎
損傷した茎とは折れたり傷ついたりした茎をさします。基本的には一部分のみが傷ついているだけのため、茎自体が死んでいるわけではありません。ダメージの具合にもよりますが、しばらくするとある程度回復して健康な茎と同等に成長したり、また緩やかに枯れていったりします。そのため絶対に必要な剪定と言うわけではありません。
ただ、損傷した部位が重要な部位でなければ、リスクを避けるために間引き剪定や切り戻し剪定を行い取り除き、新しい茎の成長を促した方が良いです。
忌み枝
忌み枝とは盆栽用語で樹形を乱す不要な枝をさしています。また忌み枝は盆栽の剪定だけにとどまらず低木や高木の剪定で用いられることもあります。忌み枝の種類は【車枝・閂枝・並行・枝立ち枝・逆さ枝・交差枝・落ち枝・幹切り枝・向かい枝】があります。
不要枝
不要枝とは低木や高木等を剪定する際に用いられる園芸用語で、樹形を乱す不要な枝に用いられます。
不要枝を剪定する目的は「樹形を整え美しい自然樹形をつくる」ためだったり、弱い枝に栄養がいくのを止めて「花や芽のつきをよくする」目的だったり、風通しや日当たりをよくして「病害虫の発生を抑制する」目的だったりします。
不要枝の剪定は一般的に間引き(枝抜き)剪定で取り除かれます。
不要枝の種類
徒長枝
徒長枝とは、上方に向かって真っ直ぐに長く伸びる茎をさしています。徒長枝は樹形を乱し、花芽がつきにくい等のデメリットがあります。※主枝の代わりに利用するため残される場合もあります。
平行枝
平行枝とは同じ方向に平行に伸びる2つ以上の枝です。単調に見え不自然な印象を与えるため不要とされます。
逆さ枝
逆さ枝とは他の枝とは逆(一般的に内側)に向かって伸びる枝です。不自然な印象を与えやすく、樹形を乱す要因になるため不要な枝です。
絡み枝
絡み枝とは、枝が不自然に伸びて正常に伸びた枝と絡むもしくは交差する枝です。枝葉が混み合い光合成の妨げになる他、樹形を乱します。
下がり枝
下がり枝とは地面に向かって下に伸びる枝です。樹形を乱す要因になるため不要です。
蘖(ヒコバエ)
蘖(ヒコバエ)とは、地際から勢いよく伸びてくる若い枝です。主幹の成長を妨げる場合があるため根元から取り除きます。萌芽剪定する時などは蘖を育てたりもします。
車枝
車枝とは1箇所から何本も枝が出ている状態です。樹形を乱す要因になるため一本を残して残りは剪定します。
胴吹き枝
胴吹き枝とは、幹の途中から勢いよく伸びてくる新しい枝です。新しく伸びる枝にエネルギーが回るため、上部の生育が衰える事があり、また樹形を乱す要因にもなります。
ふところ枝
樹冠付近にある小さく弱い枝です。光を遮り風通しを悪くするため不要です。
花がら摘み
花がら摘みとは、花が咲き終わって変色した花を摘む作業です。花がら摘みを行う目的は「種を作らせない」「病気を招かない」「見た目をよくする」の3つです。
植物が種を作ると、株の栄養が大きく取られてしまいます。その結果、株が弱り寿命が短くなったり、花の数が減ったり、開花期間が短くなる等のデメリットがあります。また花が在来種でなければ、種が逸出して在来種に悪影響を与える事態も考えなければいけません。その他にも枯れた花は全体の見た目を損ない、腐敗した細胞を好む病気(灰色カビ病等)を招く要因にもなります。灰色カビ病は初めは腐敗したものに感染しますが、健康な部分にも感染が広がる事があります。多年草が灰色カビ病に感染すると株が枯れてしまう事も多く注意が必要です。
そのため、花がら摘みは自浄作用(自ら花を落とす)のある植物でない限りは、しっかり花がら摘みを行った方が良いでしょう。
花がら摘みのやり方は、一般的に個々の花もしくは花穂を切り戻し剪定するか、花が多い場合は刈り込み剪定で一気に花がら摘みが行われます。
摘芯
摘芯とは茎の成長点を指やハサミで摘む事で、頂芽の成長を止めてしまい側芽の成長を促す方法です。
摘芯の目的は茎の数を増やして、ふさふさした草姿をつくったり草丈を抑える目的で行われます。摘芯を行うと花の数が増えて個々の花が小さくなる傾向があります。
摘芯は一般的に株が成熟する前の若い時に行われます。
萌芽更新
萌芽更新とは高木や低木を地際まで強く切り戻し、根元から新しい茎(蘖)を成長させて株を更新させる方法です。
萌芽更新の目的
- 薪や木炭等の資材を得るため
- 古い木を若返らせるため
- 単幹の木ではなく株立ち樹形を作るため
- ユーカリの魅力的な幼葉をえるため
萌芽更新は出来る低木・高木は多くはありません。株立ち樹形をつくる場合も一般的にはダメージの少ない1~数年の若木で行われます。
萌芽更新をする場合は2~4月の間で行われます。地際から10cm程度の場所で強く切り戻します。
仕立て
仕立てとは植物の形を美しく揃える目的で用いられる園芸用語です。
生垣やトピアリー等で、形を乱す突出した部分の枝葉が不要な部分です。
剪定は一般的に刈り込み剪定で表面を一気に剪定されますが、丁寧に仕上げる場合は切り戻し剪定が用いられる場合もあります。
開心自然形
開心自然形は、一般的に果樹において苗木(~幼木)のうちから剪定や誘引を行い、枝の成長を横に向かわせて、杯の様な樹形をつくり、上への成長を抑える剪定方法です。開心自然形は樹高が低く抑えられるため、果実の収穫や剪定等の管理がしやすくなる等のメリットがあります。
開心自然形に剪定の手順
- 1年目の剪定
- 高さ約40~60cmの芽のある場所の上で剪定を行います。
- 必要に応じてバランスよく主枝候補が出るように計算して位置の悪い芽を芽かきします。
- 2年目の剪定
- 主枝候補を何本か残しながら、それぞれの主枝候補を3分の1から2分の1程に切り戻し剪定します。
- 必要に応じて主枝候補を補木もしくは紐等を使い横に誘引して上に成長しないように抑えます。
- 3年目の剪定
- 2本~3本の主枝候補をある程度絞りながら、主枝候補と競合する枝や位置の悪い場所から出る枝を間引き剪定して根元から取り除きます。
- 主枝候補の新しく成長した部分を3分の1から2分の1ほど切り戻し剪定します。
- 必要に応じて主枝候補を補木もしくは紐等を使い横に誘引して上に成長しないように抑えます。
- 主枝候補から分岐して出た亜主枝は何本か残しますが、主枝候補が伸びる方向の逆に成長する枝(逆さ枝)や平行枝などの不要枝を間引き剪定します。
- 4年目の剪定
- 主枝を2もしくは3本に完全に絞るか、主枝候補をある程度絞りながら、主枝候補から外れた枝を間引き剪定して根元から取り除きます。
- 主枝(主枝候補)の新しく成長した部分を3分の1から2分の1ほど切り戻し剪定します。
- 必要に応じて主枝(主枝候補)を補木もしくは紐等を使い横に誘引して上に成長しないように抑えます。
- 亜主枝も必要なものは切り戻し剪定を行います。
- 主枝(主枝候補)から伸びる不要枝は間引き剪定して取り除きましょう。
- 5年目の剪定
- 幹から出る主枝候補を2本もしくは3本に絞りそれ以外の幹から出てくる枝を間引き剪定で取り除きます。
- 主枝の新しく成長した部分を3分の1から2分の1ほど切り戻し剪定します。
- 必要に応じて主枝を補木もしくは紐等を使い横に誘引して上に成長しないように抑えます。