植物は生きる為の栄養を生産するために光(明るさ/質(色)/持続時間)を必要とします。またエネルギーを得るための温度(上昇するほど呼吸が増える)も重要です。植物が丈夫に生きていく上で光合成と呼吸のバランスを考えて植物の環境を作る必要があります。
光の明るさは太陽光で育てる場合は殆ど問題になりませんが、室内で育てる場合は明るさが足りずに問題が発生する場合があります。
植物は光合成によって成長に必要な糖等を作り、光が弱いと光合成の量が減り成長を維持する事ができなくなります。そのため植物に必要な光を調べ適切な明るさで植物を育てる必要があります。
光の明るさは道具やアプリ等を使い、Fc(フートキャンドル)と呼ばれる照明単位で簡単に調べる事ができます。
成長を維持する光 | |
弱光 中光 強光 | 25〜74(fc) 75〜149(fc) 150〜999(fc) |
成長を促進する光 | |
弱光 中光 強光 | 75〜300(fc) 150〜1500(fc) 1000〜3000(fc) |
園芸植物は全てが同じ光の明るさを必要とするわけではありません。一般に日向や半日影を好む植物は、成長を維持するために中光(75〜149fc)〜強光(150〜999fc)が必要とされます。また成長を促進するためには中光(150〜1500fc)〜強光(1000〜3000fc以上)を必要とします。
しかし一部の半日影や日陰を好む植物では強い光が当たると葉焼け等の損傷が出る場合があります。一般に日陰を好む植物は成長を維持するためには弱光(25〜74fc)〜中光(75〜149fc)が必要です。また成長を促進するためには弱光(75〜300fc)〜中光(150〜1500fc)を必要とします。
植物が必要とする光の明るさを調べて適切な光量で植物を育てましょう。
光の明るさと同様に光の質(色)は、植物の成長に影響を与えます。
光には様々な波長の異なる色(波長の長い赤>橙>黄>緑>青>藍>波長の短い紫)がありますが、植物は一般に光スペクトルの青と赤の部分を使用して光合成を行います。
青い光で育つ植物は一般にコンパクトで、太い茎と濃い緑の葉が育ち、花は少なくなります。
赤い光で育った植物は開花が良く、茎の伸びがよくなります。
主な光源
植物に使われる人工の光源は主に白熱電球/蛍光灯/LEDの3つがあり、それぞれ特徴をもちます。
白熱電球
- 一般に赤色(多)
- 熱がある
- 一般に青色(少)
- エネルギー効率が悪い
- 電球の寿命が短い
蛍光灯
- 一般に青色(多)
- 園芸用の蛍光灯は全ての波長を持つ
- エネルギー効率が良い
- 白熱電球より寿命が長い
- 一般に赤色(少)
- 植物が必要とする波長をもつLEDが選択できる
- エネルギー効率が非常に良い
- 電球や蛍光灯より長持ちする
- 熱放射がなく光源を近付けて使える
植物は光を常に必要としているわけではなく光を必要としない反応もあります。例えば炭水化物を生成する暗反応がそれで光は必要としません。
また日長は植物の成長に影響することがあります。光源にさらされる時間(正くは暗闇の時間)の長さにより植物は塊根の形成や落葉、休眠に入る、花芽が形成され開花が促される等の生理反応を引き起こす事があり、この現象を光周性と呼びます。
一般に花芽を形成する為に長時間の暗闇(日照時間が短く)を必要とする植物は〝短日植物と呼ばれアスター/カーネーション/ペチュニア等があります。花芽を形成する為に短時間の暗闇が必要な植物は〝長実植物〟と呼びアサガオ/キク/コスモス等があたります。また日長に支配されない植物は〝中性植物〟と呼ばれます。
光と温度の関係
植物が一時的に部屋に入れられる時、その理由の大半は寒さからの保護だと思います。そのため植物は部屋の温かい環境におかれますが、一方で部屋の明るさは植物を育てるのに不足しています。
明るさの不足した部屋では光合成(糖等の合成)が不十分になりますが、一方で温度が上昇すると呼吸(糖等の分解)が早くなります。その結果光合成と呼吸のバランスが悪くなり植物は寿命を縮めてしまいます。そのため部屋の明るさを望めない場合は室内温度を低めに維持してあげるといいでしょう。
寒さや凍結による植物への影響
寒さによる低温ストレスは一般に0度を越える温度から12度の間で発生しやすい現象で熱帯植物の多くがこの被害を受けます。一般に組織が弱くなったり膜機能の不全が起こり、代謝が撹乱されます。
- 植物全体の萎れ
- 葉や茎の変色
- 落葉
- 植物の衰弱
- 葉や茎の腐敗
- 病気への抵抗性の低下
凍結や霜によるストレスは一般に0度を下回る温度で発生し多くの植物がこの影響を受けます。植物は凍結し、細胞内で氷晶が形成されると殆どの場合細胞は致命的なダメージをおいます。また氷晶の成長は脱水を促し細胞膜を細胞壁から引き剥がします。その際細胞膜は濃縮されたサイトゾルの葉緑体膜と接近し融合して損傷を引き起こします。また霜は植物体を冷やすだけでなく根を切断する事で植物を枯らすことがあります。
- 植物全体の萎れ
- 植物全体の衰弱
- 落葉
- 葉や茎の変色と枯れ
- 霜による根の切断
- 病気への抵抗性の低下
窓際
室内に植物を置く際に最も選ばれる場所は光の入る窓際です。成長を維持するのに十分の明るさをもちますが、一方で窓に近すぎると夜間に大きく冷え込み非耐寒性植物では株が弱る可能性があります。窓際からコンテナを最低でも15cm離して夜間の急激な冷え込みから植物を守りましょう。
玄関
玄関のドアを開閉する際に吹き込む冷気は、植物に急激な温度変化をもたらし損傷を与える可能性があります。玄関に置く際は冷気に当たらない場所に置くなど工夫しましょう。
暖房の効いた部屋
暖房の効いた部屋は乾いた風で植物が乾燥しやすくなるのはもちろん、温度が上がることでも呼吸の量が増え乾燥しやすくなります。また呼吸がえるとと光合成のバランスが崩れ植物に大きな負担がかかる事があります。無理に暖かな場所に置かず植物の最低温度以上の場所で育てる方が寿命が伸び健康に育つでしょう。サーモスタットの付いた暖房器を利用すれば温度の上昇しすぎを防ぎ一定の温度で植物を育てる事ができます。