原産:アジア/ヨーロッパ
科:キジカクシ(Asparagaceae)
属:スズラン(Convallaria)
種:スズラン(majalis)
別名:きみかげそう(君影草)/たにまのひめゆり(谷間の姫百合)/リリー・オブザ・バレー(Lily of the valley)/メイ・ベルズ(May bells)/アワー・レディース・ティアーズ(Our Lady’s tears)/メアリーズ・ティアーズ(Mary’s tears)
開花時期:4月~5月
花の色:白色〇桃色●
葉色:緑色●黄色●
分類:多年草
草丈:約15~30cm
誕生花:5月1日/5月2日/5月28日
花言葉:純粋/純潔/繊細/幸福が再来
用途:香りが良い/日陰植物/切り花
目次 | ||
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花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
スズランとは!?
スズランは学名Convallaria majalis、別名「きみかげそう(君影草)」や「たにまのひめゆり(谷間の姫百合)」とも呼ばれるアジアおよびヨーロッパ原産の多年草です。
スズランの語源(由来)
- 属名のConvallariaはラテン語で「一緒に」を意味する「con」と、「谷」を意味する「vallis」の2語からきており、自生地に由来します。
- 種小名のmajalisは「5月の」を意味しており、開花時期に由来します。
- 和名のスズランの由来は、花の形が「鈴」を連想させる所からきています。
スズランの特徴(魅力)
- スズランの花は「鈴」や「涙のしずく」等に例えられる可愛らしい花の形をしています。
- スズランはエデンの園を追放された後のイブの涙からうまれたとも言われています。
- スズランの花は鐘形で吊り下がる様に花茎に連なり可憐な雰囲気をつくります。
- スズランの花は「バラ」と「ジャスミン」と並べられ三大フローラルと呼ばれています。
- スズランの香りは甘く繊細な香りで瑞々しい「若草」や優しい「ジャスミン」の香り等に例えられます。
- 楚々とした雰囲気のある可憐な花は切り花として人気が高いです。
- またフラワーアレンジメントにも利用されます。
- スズランの花は「恋」と「幸運」をもたらすと考えられておりウェディングブーケの花として人気があります。
- キャサリン妃やモナコのグレース王女等が結婚式のブーケに利用しています。
- スズランは理想的環境(日陰・湿り気のある土壌)であれば放ったらかしで育てられます。
- 理想的環境では地面下の根茎が広がって群生をつくります。
- スズランは全草が有毒なため間違えても食べられません。
スズランは地面下に根茎があり、根茎から芽を出す事でしばしば群生をつくります。葉は1つの株から2枚出ますがどちらも根生葉で花茎を包む様に抱茎します。葉色は緑色、葉身の大きさは長さ約15~20cmあり、葉身は楕円形をしています。花茎は高さ約15~30cmで、花序は総状花序に約5~15個の小花をつけ、個々の花は白色(~薄桃色)で花被片が6個ある直径約0.5~1cmの鐘形をしており、ぶら下がるように下向きに開花します。花後にできる果実は赤色の液果で、大きさは直径約0.7cmあり果実の形は球形です。
スズランの香りの印象と精油成分
スズランの花の香りは繊細で甘く、春の「若草」や「ジャスミン」を思わせる様なフローラルな香りがあります。スズランの精油は従来の抽出方法で摂るのが難しく、採れても少量だけです。そのためスズランの香水では、スズランの精油ではなく「シトロネラール」等の合成香料が一般的に使われています。ちなみにスズランから抽出され識別された香り成分には「ベンジルアルコール」「青葉アルコール」「シトロネロール」「ゲラニオール」等があります。
ベンジルアルコールは「アーモンド」「フルーティー」「フローラル」等に例えられる甘く快い香りがあり、マイルドでフルーティーな風味(フレーバー)をもっています。一般に植物ではジャスミンやイランイラノキ等に含まれていて、殺菌作用があるため石鹸等に利用されています。
ゲラニオールは「フローラル」「柑橘系」「甘い」「ローズ」等に例えられるマイルドな香りがあり、風味(フレーバー)はフルーティーです。一般に植物ではゼラニウムやクチナシ等に含まれており、精油は食品の香料やアロマオイル等に利用されています。ゲラニオールの精油の効果には、まだ研究段階で科学的根拠が不十分なものもありますが「抗菌・抗真菌作用」「抗酸化作用」「抗炎症作用」「抗がん効果」等があります。
シトロネロールは「ローズ」「柑橘類」等を想像させる濃厚でフローラルな香りがあり、甘くフルーティな風味(フレーバー)をもっています。一般に植物ではバラやゼラニウム等に含まれており、シトロネロールの精油の効果には「抗菌作用・抗真菌作用」「効炎症作用」「鎮静作用」「昆虫忌避作用」等があります。
スズランの切り花の楽しみ方
- スズランの収穫は朝の涼しい時間帯もしくは夕方におこないましょう。
- 収穫したら水に漬けて水切りを行います。
- 水切りしたら花瓶に生けて、出来るだけ低温環境(糖の消費や蒸散が抑えられる)で直射日光の当たらない場所で楽しみましょう。
- 管理は数日(約1~3日)ごとに水切りと水換えを行います。
- ↳管理場所や管理の方法でも左右されますが日持ちは3~5日程度です。
水切り法
水切り法とは、切り花の切り口を水の中に付けた状態で切り戻しを行い、切り口の更新を行う水揚げ方法です。
水切りは、特定の植物または特定の条件を除いた、殆どの植物に行われている、最も一般的な水揚げ方法になります。
水切りは、水の中で茎を切るため導管内に気泡が入りにくいメリットがあります。また水切りを行うことで「微生物」「空気」「その他」が原因で詰まっている茎を取り除くため、切り口からの水揚げ正常に戻ります。
水切りの方法
切り花の切り口を水の中に浸けます。水の中につけた状態で、切口の根元から上に1~5cm程度を取り除くつもりで、ハサミを使って斜めにカットします。
切り口部分を斜めにすることで、吸水部分が広がり、水揚げの効果が高まります。
スズランの既知の危険性
スズランは人間や動物が摂取すると非常に有毒な約38種の強心配糖体(コンバラトキシン・コンバラリン・コンバラマリン等)を全草(茎・葉・花等)に含んでいます。
スズランを少量でも間違えて摂取した場合は、症状として嘔吐や頭痛、目眩や血圧低下、心臓麻痺等を引き起こす可能性があります。また大量に摂取した場合は、呼吸停止や心不全を引き起し死亡する事もあります。その為、スズランは絶対に食べられません。またスズランを挿した花瓶の水も有毒なため絶対に飲むことは出来ません。
スズランの栽培方法
園芸では、楚々とした可憐な雰囲気の花を鑑賞する目的や、その花を収穫して切り花として利用する目的で育てられます。スズランは耐陰性が強い事から、日陰(シェードガーデン)や木の下等に植えられて楽しまれたり、管理のしやすい鉢植えに植えて様々な場所で楽しまれたりします。
スズランは直射日光があまり当たらない日陰のやや湿り気のある土壌(場所)で育てれば、基本的には放ったらかしで育てる事が出来ます。逆に「強い日差し」や「乾燥」を苦手にしているため、植える場所には注意が必要でしょう。
スズランの主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
スズランの珍しい種類、主な種と園芸品種の紹介【2021】
スズランの育て方
花壇の土づくり
日当り
スズランは自生地では日の当たらない木陰等に生息しており、基本的に直射日光は不要です。植える場所は間接光のみが当たる日陰が最適ですが、午前中のみ日が当たり午後から日陰になる場所までで育てられます。
土壌の土質
スズランは水捌けと通気性がよく、有機物を多く含む肥沃な土壌を好みます。
植付けの前に土壌診断を行いましょう。
①土を掘る時に硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
②土を濡らして握った時にバラバラと崩れる場合は保水性がない可能性があります。逆に土の塊が出来ても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。
③肥沃な土の場合は土の色が黒っぽくなるため、土の色が薄い場合は土壌の肥沃さが足りない場合があります。
土壌診断後、必要に応じて通気性を高めるパーライトや川砂を入れたり、保水性や保肥力を高める田土や黒土を混ぜたり、肥沃さが足りない場合は牛ふん堆肥や腐葉土等の堆肥を混ぜこみ土壌改善を行いましょう。
鉢土づくり
日当り
スズランは間接光のみが当たる様な明るい日陰、もしくは午前中のみ日が当たり午後から日陰になるような場所で管理しましょう。
培養土
スズランは一般的な草花の培養土で育てられます。自作する場合は通気性と保水性のバランスが良く肥沃な培養土で育てましょう。
- 赤玉土(小粒・中粒)+腐葉土=6:4
- 赤玉土(小粒・中粒)+パーライト+腐葉土=4:2:4
肥料の与え方
スズランはある程度、有機物を含んだ肥沃な土壌であれば肥料を必要としません。
ただし土壌が風雨などで劣化している場合や、栄養が足りないと感じる場合などは必要に応じて堆肥や肥料を与えましょう。
植え付け時の元肥
植え付け時に肥料を与える場合は、腐葉土等の堆肥をしっかり混ぜ込んだ後に、水平型(肥料成分がバランスよく入る)もしくは山型(リン酸が多い)の緩効性肥料を規定量はかり培養土もしくは土壌に均一に混ぜこみ全面施肥しましょう。
植え付け後の元肥(寒肥)
植え付け後の肥料は毎年晩冬から早春に与えます。スズランは基本的に肥沃な土壌であれば肥料を必要としないことから、牛糞堆肥や腐葉土等を株から少し離れた場所にマルチングもしくは、穴を掘って埋めると良いです。肥料を与える場合は水平型もしくは山型の配合肥料を選びます。施し方は株元から少し離した場所に何ヶ所か穴を掘り、その中に肥料を施しましょう。