原産:南ヨーロッパ/中央アジア/中国
科:ウルシ(Anacardiaceae)
属:ハグマノキ(Cotinus)
種:ハグマノキ(coggygria)
英名:スモークツリー(smoke tree)
別名:ケムリノキ/カスミノキ/リュウスコチナス/スモーク・ブッシュ(smoke bush)ヨーロピアン・スモークツリー(European smoketree)/ベネチアン・スマック(Venetian sumach)
品種:ヤングレディ(young lady)
開花時期:5月~8月
花の色:黄色●桃色●
葉色:緑色●赤色●橙色●
分類:落葉低木
樹高:約180cm
誕生花:4月28日/6月18日/11月25日
花言葉:「賢明」「煙に巻く」
用途:カラーリーフ/背が高い花/切り花
目次 | ||
| ||
花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
スモークツリー(ヤングレディ)とは!?
スモークツリー(ヤングレディ)はクリーム色から薄桃色の煙状の花が、株を覆う様に咲く圧倒的ボリュームの花姿が魅力の園芸品種です。またスモークツリー(ヤングレディ)は樹高が180cm迄と非常に背が低いため、庭の花壇等でも育てやすい所も魅力です。葉色は緑色で秋になると赤色(~橙色)へと美しく紅葉します。
開花時期は晩春から晩夏、花色(花柄)は薄黄色もしくは桃色、個々の小花は黄緑色で直径約0.5(~1)mmの5数花(花弁5枚)、花序は円錐花序に咲き、雌株では花後に花柄が糸状に伸びてスモーク状になります。高さは約180cm × 幅は約180cmまで成長します。葉色は緑色、秋に赤色や橙色へと紅葉して、葉身は楕円形もしくは卵形で、葉序は互生葉序につきます
スモークツリー(ハグマノキ)とは!?
スモークツリー(ハグマノキ)は学名Cotinus coggygria、別名「白熊の木」や「スモークブッシュ(smoke bush)」等とも呼ばれる南ヨーロッパ及び中央アジア、中国が原産の落葉低木です。
スモークツリー(ハグマノキ)の語源(由来)
- 属名のCotinusはギリシャ語で「オリーブ」を意味する「kotinus」からきています。
- 種小名のcoggygriaはギリシャ語で「スモークツリー」を意味する「kokkugia」からきています。
- スモークツリーの由来は花の形が煙(スモーク)の様に見える所からきています。
- ハグマノキ(白熊の木)の由来は花がヤク(白熊)の毛を束ねて作られた仏具の払子に似ている所からきています。
スモークツリー(ハグマノキ)の特徴(魅力)
- スモークツリー(ハグマノキ)はその名前からも分かる通りスモーク(煙)を思わせる様な花姿が特徴です。
- ただし煙の様な花姿をつくるのは雌株のみです。
- 雄株の花の花糸は伸びないためスモーク状の花姿にはなりません。
- 雌株は花が終わると結実しなかった不稔性の雌蕊(花柱)が長く伸びてスモーク状の花姿をつくります。
- スモークツリー(ハグマノキ)の花は非常にボリューミーで独特なフォルムをしているため切り花やドライフラワーやプリザーブドフラワー等の花材として高い人気があります。
- 切り花としては管理の仕方にも左右されますが約10~14日の日持ちがあります。
- ドライフラワーとしては自然乾燥させるか着色液で染めてブリザードフラワー等にして楽しまれます。
- スモークツリー(ハグマノキ)の葉は通常緑色ですが秋になると赤色(~橙色)から紫色に美しく紅葉します。
- 品種によっては赤色や紫色等の葉が一年(冬除く)を通して見られるためカラーリーフとしても楽しめます
- スモークツリー(ハグマノキ)はシンボルツリーとして高い人気があります。
- ふわふわとしたスモーク状の花や赤色や紫色等の色鮮やかな葉は遠くから見ても目立ち景観植物として働きます。
- スモークツリー(ハグマノキ)は育て方(剪定)により木(単幹)に育てたり株立ち状に育てる事が出来ます。
- スモークツリー(ハグマノキ)は夏の暑さや冬の寒さに強く非常に丈夫なため地植えした場合は放ったらかしでも育てられます。
- スモークツリー(ハグマノキ)を触ると人によっては被れる場合があります。
- 重症化する事はないものの肌が敏感な人は注意が必要です。
スモークツリー(ハグマノキ)の茎は木質で樹皮は灰褐色をしています。茎は枝分かれがよく広がる傾向があり高さ約200(~700)cm 、幅約200(~700)cmの間で成長します。葉序は互生葉序、葉色は通常光沢のある緑色で秋になると赤色(~橙色)に紅葉します。また葉色は品種により赤色・橙色・黄色・紫色・黒色があります。葉身の大きさは長さ約3(8)cm × 幅は約2(6)cm、葉身の形は楕円形もしくは卵形です。花序は長さ約15~30cmの円錐花序、個々の花は直径約0.5(~1)cmあり花弁は5個、雌雄異株のため雄株(雄花だけ作る)と雌株(雌花だけ作る)があります。花後の果実は核果です。
スモークツリー(ハグマノキ)の切り花の楽しみ方
- スモークツリー(ハグマノキ)の収穫は朝の涼しい時間帯もしくは夕方におこないましょう。
- スモークツリー(ハグマノキ)の収穫は出来るだけ花柱が長く伸び綺麗に色付いたタイミングで行いましょう。
- 収穫したら根元割りを行い水揚げをよくします。
- 根元割りしたら花瓶に生けて楽しみましょう。
- 管理は必要に応じて数日(約1~3日)ごとに水換えと根元割りを行います。
- ↳管理場所や管理の方法でも左右されますが日持ちは10~14日程度です。
根元割り法・根元叩き法
根元割り法・根元叩き法とは、硬い茎や枝の根元に縦にハサミを入れて割る、または金槌などで硬い茎や枝の根元を叩いて潰して、水揚げする方法です。
根元割り・根元叩きをする事で、吸水する場所の面積が増えて、吸水力が高まり水揚げしやすくなります。
根元割り
- 切り花の根元をハサミを使って斜めにカットします。
- カットした切り口に対して垂直に、ハサミを入れて、十時に切れ込みをいれます。
根元叩き
切り花の切り口を、金槌で叩いて潰します。
スモークツリー(ハグマノキ)のドライフラワーの作り方
- スモークツリー(ハグマノキ)の収穫は乾燥が続く日の朝(朝露が消えた後)もしくは夕方に行いましょう。
- 収穫は出来るだけ花柱が長く伸び綺麗に色付いたタイミングで行いましょう。
- 茎を好みの長さで剪定ハサミで切って収穫して下葉を取り除きましょう。
- 収穫した花はハンギング法で乾燥させます。
ハンギング法
ハンギング法とは、植物を壁や天井等から吊り下げて自然乾燥でドライフラワーをつくる方法です。ハンギング法は最も一般的に利用されるドライフラワーを作る手順で、用意する物も花材以外には殆ど要らず手軽に作れる所が魅力です。手順は花の茎の下部を固定する物(麻紐・洗濯バサミ等)で抑えて、逆さにし壁や天井から吊り下げます。管理する場所は基本的に直射日光の当たらない涼しく乾燥した場所です。乾燥させる時間は2~4週間程度で、自然乾燥させます。
スモークツリー(ハグマノキ)の栽培方法
園芸では、もくもくした煙の様な大きく豪華な花を鑑賞する目的だったり、その花を収穫して切り花として利用する目的だったり、幾つかの品種で見られる赤色の葉や紫色の葉をカラーリーフとして楽しむ目的で育てられる事が多いです。スモークツリー(ハグマノキ)は非常に大きく成長して目立つため、木(単幹)に仕立てシンボルツリーとしたり、株立ち状に仕立て生垣として利用されたり、管理のしやすい鉢植えに植えて様々な場所で楽しまれたりします。
スモークツリー(ハグマノキ)を育てる際に注意する事は「日向に植える」くらいです。一度活着すれば水やりや肥料を与える事が殆ど不要になるため放ったらかしでも育ちます。また夏の暑さや冬の寒さにも強いため一度植えれば毎年花が楽しめます。
スモークツリー(ハグマノキ)の主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
スモークツリー(ハグマノキ)の珍しい種類、主な種と園芸品種の紹介【2021】
スモークツリー(ヤングレディ)の育て方
花壇の土づくり
日当たり
スモークツリー(ヤングレディ)は日光のよく当たる場所で最もよく成長して沢山の花を咲かせます。日当たりの悪い場所では葉が疎らになり花数も減ります。そのため基本的には直射日光が6時間以上当たる日向で育てましょう。
土壌の土質
スモークツリー(ヤングレディ)は土壌の土質をあまり選びません。基本的には通気性と排水性が良く、適度に肥沃な土壌であれば問題なく育ちます。
植付けの前に土壌診断を行いましょう。
①土を掘る時に硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
②土を濡らして握った時にバラバラと崩れる場合は保水性がない可能性があります。逆に土の塊が出来ても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。
③肥沃な土の場合は土の色が黒っぽくなるため、土の色が薄い場合は土壌の肥沃さが足りない場合があります。
土壌診断後、必要に応じて通気性を高めるパーライトや川砂を入れたり、保水性や保肥力を高める田土や黒土を混ぜたり、肥沃さが足りない場合は牛ふん堆肥や腐葉土等の堆肥を混ぜこみ土壌改善を行いましょう。
鉢土づくり
日当り
スモークツリー(ヤングレディ)は日当りの良い場所を好むため、直射日光が6時間以上当たる日向もしくは、午前中のみ日が当たり午後から日陰になるような半日影で管理しましょう。
培養土
スモークツリー(ヤングレディ)は一般的な草花の培養土で育てられます。自作する場合は通気性と保水性のバランスが良く肥沃な培養土で育てましょう。
- 赤玉土(小粒・中粒)+腐葉土=6:4
- 赤玉土(小粒・中粒)+牛糞堆肥+バーク堆肥=5:1:4
水やりの仕方
地植え
スモークツリー(ヤングレディ)を地植えしている場合は乾燥に強いため、極端に乾燥する場合を除いて、基本的には降水のみで育てられます。
鉢植え
スモークツリー(ヤングレディ)を鉢植えで育てる場合は土の乾燥が早くなるため、定期的な水やりが必要になります。基本的には土の表面(数cm)が乾いてきたタイミングで水やりを行うといいでしょう。土の表面の乾燥を確認する方法は目視(土の色)か、指の第1関節までを土に入れて乾燥しているかを確認します。
肥料の与え方
スモークツリー(ヤングレディ)は肥沃な土壌であれば多くの肥料は必要ありません。毎年一度、晩冬から早春の間に肥料と土質を改善する堆肥を与えましょう。
元肥
スモークツリー(ヤングレディ)の元肥は植え付け時もしくは、植付け2週間前(有機肥料の場合)に与えましょう。
元肥は緩効性肥料もしくは配合肥料を選びましょう。肥料の成分は水平型肥料(窒素・リン・カリがバランスよく入る)もしくは山型肥料(リン酸多め)を選びましょう。
元肥の与え方は花壇の場合も鉢植えの場合も、基本的に土壌に均一に混ぜこむ全面施肥です。規定された量を入れましょう。
元肥(寒肥)
寒肥とは休眠中の冬から早春に与える元肥の1種です。
寒肥は元肥と同様に肥効が長い物を選びましょう。具体的には配合肥料や緩効性肥料を選びます。また肥料の成分も元肥と同様に水平型肥料(窒素・リン・カリがバランスよく入る)もしくは山型肥料(リン酸多め)を選びます。
寒肥の施し方は株元から少し離した場所に何ヶ所か穴を掘り、その中に肥料を施しましょう。
また、土質は風雨等でどうしても年々劣化するため、土質を改善する牛ふん堆肥や腐葉土等も穴の中に入れたり、株の近くにマルチングする等して入れてあげるといいでしょう。
剪定のやり方
スモークツリー(ヤングレディ)の剪定のやり方は、求める樹形により変わります。木の様な単幹で育てる場合は不要な枝を「間引き剪定」しながら育てます。株立ち状に地際から沢山茎を出して育てたい場合は「切り戻し剪定」もしくは「萌芽更新」を行いましょう。
木(単幹状)の様な樹形に育てる場合
スモークツリー(ヤングレディ)を木のように1本の幹を伸ばして育てたい場合は間引き剪定を行いましょう。
間引き剪定を行う時期は晩冬から早春です。間引き剪定のやり方は主要な幹を1本もしくは幾つか残し、蘖と枯れた茎等の不要な茎を根元付近で強く剪定して取り除くだけです。
間引き剪定の目的は不要な茎を取り除く事で、主要な茎もしくは新しく成長する芽にエネルギーを優先的に送ったり、光の通りや風通しをよくしたりする事で健康な成長を促す所にあります。
株立ち状の樹形に育てる場合
スモークツリー(ヤングレディ)を株立ち状に地際から沢山の茎を伸ばして育てたい場合は切り戻しもしくは必要に応じて萌芽更新を行いましょう。
切り戻し剪定を行う時期は晩冬から早春です。切り花剪定のやり方は地面から約15~20cmのあたりで強く茎を切り戻すだけです。最初の2~3年は毎年行い、ある程度育ったら2~3年に一度の頻度で行います。また全て切り戻しすると花を犠牲にするため、株全体の3分の1(数本)を残しながら切り戻しする事も出来ます。
萌芽更新を行う時期は晩冬から早春です。萌芽更新のやり方は基本的に切り戻しと同様です。太くなった幹を地面から約15~20cmの辺りで強く剪定して、根元から新しい茎(蘖)を成長させて株を更新させます。
夏越しする方法
スモークツリー(ヤングレディ)は夏の暑さに強く基本的に対策不要で育てられます。
冬越しする方法
Hardiness:4b~8a
スモークツリー(ヤングレディ)は耐寒性がとても高く冬越しの準備をする必要は特にありません。翌年の成長に備え株の周囲に穴を掘り有機肥料を入れたり、腐葉土でマルチングしてあげる等して上げましょう。
挿し木や株分けで増やす
スモークツリー(ヤングレディ)は挿し木や取り木によって増やす事ができます。
挿し木の方法
スモークツリー(ヤングレディ)の挿し木時期は8月~9月頃です。この頃になると新鞘がやや硬くなり半熟枝になっており、未熟な枝と違い乾燥しにくく、また古い枝のように発根力が低くないため最も成功率が上がります。挿し穂の長さは約10cm、その時に植物ホルモンが集中している節の少し下で、切り口を斜めにすると成功率が上がります。挿し穂は下葉を落とし上部に葉を2枚残し切り口に発根ホルモンを付けて湿らせた培地に挿し穂を挿しましょう。また湿度を維持するためにポットごと袋の中に入れたり、プラスチックのカバー等を利用する事も有用です。
取り木の方法
スモークツリー(ヤングレディ)の取り木を行う方法は地上部の高い位置で取り木する「高取り方」と親株から発生した若い枝を土中に埋めて取り木する「圧条方」があります。
枝が曲がるのであれば圧条方がおすすめです。時期は9月頃に行い、枝を優しく曲げながら地面に近付け、埋める部分を決めたら発根しやすいようにナイフ等で少し傷つけます。枝の途中を地面に埋め土から出ないようにピン等で固定しましょう。茎の先端部は支柱等を利用して上を向かせます。活着するまでに時間がかるために親株から切り離すのは1年以上たった後に行うと良いでしょう。
播種で増やす
スモークツリー(ハグマノキ)の種蒔の方法
播種時期:9月~10月
発芽適温:約
発芽日数:
発芽条件:
雌株から採取した種子は休眠状態にあるため、そのまま撒いても発芽までにかなりの時間がかかる可能性があります。休眠打破を行うために熱湯の入った耐熱容器に1晩つけたり、冷蔵庫等で1ヶ月程度保管された後に播種される事もあります。
植物の病気
スモークツリー(ハグマノキ)の病気
- 斑点病
- 炭疽病
- 灰色カビ病
- さび病
- うどんこ病
スモークツリー(ハグマノキ)の害虫