キクは属の中に約43種がありますが、一般に園芸で親しまれている種は幾つかの種とその園芸品種です。例えば、中国原産で日本でも古典菊として古くから親しまれヨーロッパでは洋菊として発展しているキク(イエギク)、日本固有種のノジギク等が親しまれています。
キク属の種ごとの育て方は写真か育て方をクリックすると出てくる為よかったらそちらをご覧下さい!
このページでは主な種の種類と特徴、園芸品種の種類と特徴を紹介しています。
キクの主な種の目次
①キク(イエギク) 開花時期:夏菊(5月~6月or7月~8月)/夏秋菊(7月・8月・9月)/秋菊(10月~11月)/寒菊(12月~1月)/二度咲き菊(6月・10月) | ②ノジギク 開花時期:10月~11月 |
③その他の種や園芸品種 |
キクの特徴や園芸品種
原産:中国
学名:Chrysanthemum × morifolium(syn. Chrysanthemum × grandiflorum)
草丈:約20~100cm多年草
分類:
開花時期:夏菊(5月~6月or7月~8月)/夏秋菊(7月・8月・9月)/秋菊(10月~11月)/寒菊(12月~1月)/二度咲き菊(6月・10月)
花色:赤色●桃色●橙色●黄色●紫色●緑色●白色〇
葉色:緑色●黄色●白色〇
耐暑性:強い
耐寒性:強い
誕生花:9月9日/赤色:10月1日/黄色:11月3日/白色:11月23日/赤色:11月27日/12月13日
花言葉:高貴/高潔/高尚/白色限定「真実」/黄色限定「破れた恋」/赤色限定「あなたを愛します」
用途:切り花
キクとは!?
キク(イエギク)は学名Chrysanthemum × morifolium(syn. Chrysanthemum × grandiflorum)、中国のシマカンギク(C.indicum)を中心にチョウセンノギク(C.zawadskii var.latilobum)等の種が交雑(交配)されて生まれた雑種の多年草です。日本では奈良時代に渡来した後、江戸時代になると盛んに品種改良が行われ地域独特の形に発展を遂げています。またこれらは「古典ギク」とも呼ばれ多くの園芸品種がうみ出されており今でも親しまれています。
キクの語源(由来)
- 属名のChrysanthemumは古代ギリシア語で「金」を意味する「χρυσός(chrysos)」と、「花」を意味する「ἄνθεμον」の2語からなり、花の色に由来しています。
キクの特徴(魅力)
- キクは古くから栽培されており品種改良が盛んに行われています。
- 花形が非常に豊富で日本では和菊(大菊・古典菊)の中に様々な花形があり洋菊では花形が12(~13)種類に分類されます。
- 花の大きさは約1cm~20cmとありサイズにより小菊や大菊に分類されています。
- キクの花は主に仏花のとして利用されており日本での出荷数は1番です。
- ↳キクの切り花は管理の仕方にも左右されますが日持ち約7~10日程度です。
- 食味や花弁の大きさ等が改善されたものが食用菊として利用されたりもします。
- 葉は縁部分が深くカットされており装飾的です。
- キクは丈夫なため地植えした場合は放ったらかしでも育てられます。
- ↳ただし栽培品種では十分に水や肥料を与えないと綺麗に花が咲かない事があります。
キクの茎は若い時は緑色もしくは紫色で成熟すると木質化して褐色になり、直立して分枝しながら高さ約20~100cmの間で成長します。葉は茎に対して互生葉序になり、葉色は緑色で白色のうぶ毛があり、葉身の大きさは長さ約4(~10)cm幅約3(~5)cmあり、葉身の形は卵形もしく楕円形で羽状浅裂(~深裂)しています。花序は舌状花と筒状花の組み合わさる頭花で、単頂花序もしくは散房花序に咲きます。個々の花(頭花)は大きさにより小輪菊(直径1~3cm)・スプレー菊(3~6cm)・中輪菊(直径6~18cm)・大輪菊(18cm以上)に分類されています。
キクの開花時期の違い
夏菊(5月~6月or7月~8月)
夏菊とは日長に関係なく温度によって花芽を作り開花する性質をもつキクです。5月~6月咲きは最低温度10度以上、7月~8月は最低温度15度以上で花芽を作りはじめます。
夏秋菊(7月・8月・9月)
夏秋菊とは限界日長をもつ夏菊です。
秋菊(10月~11月)
秋菊とは秋に咲く普通の菊です。限界日長は12~15時間で、多くの品種は約15度で花芽が作られます。
寒菊(12月~1月)
寒菊とは晩秋から冬にかけて咲く菊です。秋菊と比べて限界日長が11時間以下と短く高温で花芽分化が抑制されます。
二度咲き菊(6月・10月)
二度咲き菊とは初夏に自然な状態で一度開花して、切り戻しを行う事で秋に再度開花する菊です。
電照菊(1月~3月・様々な時期)
電照菊とは秋菊が日長が短くなると花芽を形成する性質を利用して、光を当てて開花を遅らせながら、狙った季節に花を開花させる手法です。
和菊(大菊・古典菊)の特徴と種類
大菊
厚物とは花弁が鱗状に幾重にも重なり、中央一点に向けて高く盛り上がり半球状になる花形です。
厚走りとは、厚物の花の下に走り弁がある花形で、より大きく見えて豪華な雰囲気があります。
大掴みは別名「奥州菊」とも呼ばれます。花の形は上部分が両手を掴み握った時の様な形をしています。
管物とは、1個1個の花弁が管状になり放射状に広がる花形で、通常は花弁の先が内向きに巻いています。また管の大きさで「太管」「間管」「細管」「針管」「長管」と分けられている事もあります。
一文字菊は別名「御紋章菊」とも呼ばれます。天皇の菊の御紋を思わせる花形をしており、平たい花弁が一重に並ぶ所が特徴です。
美濃菊は大輪で蓮を思わせる様な花形をしており、個々の花弁の幅が広く内側に緩く巻き船を思わせる様な形をしており、八重咲きします。
古典菊
嵯峨菊は江戸末期頃、京都嵯峨地方で発展した品種群です。細い花弁が直立に付き、ホウキ仕立てや七五三仕立て等にされます。
伊勢菊は三重県松坂市と津市を中心に発展した品種群です。嵯峨菊が変化したものと言われており、細い花弁は裂けたり縮れたりしており優雅に垂れ下がります。
肥後菊は熊本県熊本市で発展した古典菊の1つです。花は一重咲きで、花弁の間に隙間があります。花弁の形は平弁・管弁・さじ弁があります。
江戸菊は東京で発展した古典菊の1つです。花は1度平に咲き、成熟するにつれて花弁が立ち上がりフリル咲きするように捻れたり折れ曲がったりする花形になります。
美濃菊は名古屋及び岐阜地方で発展した古典菊の1つです。大輪で蓮を思わせる様な花形をしており、個々の花弁の幅が広く内側に緩く巻き船を思わせる様な形をしており、八重咲きします。
奥州菊は奥州地方で発展した古典菊の1つです。花の上部分が両手を掴んだような形になるのが特徴ですが、花の形により、掴み部分が山2つになるものを「女咲き」、八の字になるものを「男咲き」、花の下部に走り弁が入るものを「雲咲き」と3つに分類されます。
洋菊の花形の特徴と種類
キクの仕立て方の特徴と種類
大菊の仕立て
一本仕立て
一本仕立てとは一鉢に一本の茎を伸ばして一花だけを咲かせる仕立て方です。
三本仕立て
三本仕立ておは一本の苗を摘芯して三本の枝を伸ばし、各茎に一花だけ三個の花を咲かせる仕立て方です。
七本仕立て
七本仕立てとは一本の苗を二回摘芯して七本の枝を伸ばし、各茎に一花だけ七個の花を咲かせる仕立て方です。
千輪作り
千輪作りとは一本の苗で何回も摘芯を繰り返して枝数を増やし、半球状になる様に花を並べて咲かせる仕立て方です。
ダルマ作り
ダルマ作りとは草丈60cm以内の小型の三本仕立てです。
福助作り
福助作りとは草丈40cm以内の小型の一本仕立てです。
小菊の仕立て
懸崖作り
懸崖作りとは一本の苗を何回も摘芯を繰り返し、上から下に流れる様に茎を伸ばして懸崖に似た草姿を作る仕立て方です。
杉作り/立懸崖
杉作り/立懸崖とは懸崖用の小菊を使い、直立した杉の木の形になる様につくる仕立て方です。
造形
造形とは懸崖用の小菊を使い、動物や鳥、城や富士山等を模造してつくる仕立て方です。
ポットマム
ポットマムとは矮性で花付きがよいキクの品種で何度も摘芯や切り戻しを行い1鉢に沢山の花を咲かせる仕立て方です。 ※切り花用のキクに矮化剤を使いポットマムに仕立てられてる場合もあります。
クッションマム
クッションマムは自然に芽どまりして分枝を繰り返しながら、半球状の草姿を作る性質をもつ菊です。また懸崖用のキクで摘芯を繰り返してクッション状に仕立てられる事もあります
古典菊の仕立て
ホウキ作り
ホウキ作りとは1本の苗を2~3回摘芯して枝数を増やし、下部の茎の下を束ねてホウキを立てたような形に仕立てる方法です。
七五三仕立て
七五三仕立てとはホウキ作りに似ており、頂部に七花、中部に五花、下部に三花を咲かせる仕立て方です。
天地人作り
篠作り
篠作りとは一本の苗を2~3回摘芯して、各茎に一本ずつ花を咲かせて9~15本立てにする仕立て方です。
食べられる食用菊
キクの中には食用を目的として品種改良されたものがあります。一般的なキクと比べて食用菊は花弁が大きいため可食部分が多く、また苦味が抑えられるため甘みを感じる事もあります。大輪タイプではおひたしや酢の物、サラダ等に入れて食べられ、また小輪タイプでは一般的に刺身のツマとして利用されています。
食用菊(大輪)の品種
- 安房宮
- 延命楽(もってのほか等)
- もって菊
- かきのもと
- 他
食用菊(小輪)の品種
- こまり
- 秋月
- 金錦
- とよおんちぎり
- 豊の秋
- 他
キクの切り花の楽しみ方
- キクの収穫は朝の涼しい時間帯もしくは夕方におこないましょう。
- 収穫の前に水を入れたバケツを準備しておきます。
- キクの収穫は花が4分の3以上開いてるものを選びます。
- ↳小菊であれば蕾の状態で収穫しても咲く事が多いです。
- 収穫したキクはバケツの中で不要な葉を取り除きます。
- 葉を取り除いたら水に漬けて水折りを行いましょう。
- 水折りしたら花瓶に生けて楽しみます。
- ↳管理の方法でも左右されますが日持ちは7~10日程度です。
- 管理は出来るだけ低温環境(糖の消費や蒸散が抑えられる)で数日(約1~3日)ごとに水折りと水換えを行います。
- ↳また花瓶の水に糖(小さじ1)もしくは延命剤(栄養入り)を入れると蕾が開きやすくなったり花が大きくなります。
水折り法
水折り法とは、切り花の切り口を水の中に付けた状態で茎を指でポキッと折り、切り口の更新を行う水揚げ方法です。
水折りはハサミと相性の悪い植物や、茎が硬い植物、茎の繊維が多い植物等に向いている水揚げ方法になります。水折りする事で茎の繊維の多くが剥き出しになるため、特定の植物では水切りよりも水揚げがよくなったりします。
水折りは、水の中で茎を切るため導管内に気泡が入りにくいメリットがあります。また水折りを行うことで「微生物」「空気」「その他」が原因で詰まっている茎を取り除くため、切り口からの水揚げ正常に戻ります。
水折りの方法
切り花の切り口を水の中に浸けます。水の中に漬けた状態で、茎の根元から約5cm上の部分に両手の親指を付けて、反対側に押すようにポキッと茎を折ります。
オススメの延命剤
キクの栽培方法
園芸では、華やで豪華な花を鑑賞する目的で育てられたり、また切り花として利用する目的で育てられたりします。キクは最大100cm迄の高さになるため、高性な品種では花壇の中央や後方等に植えて高さと立体感を出したり、また矮性な品種では花壇の前方や中央部に並べて楽しまれたり、管理のしやすい鉢植えに植えて様々な場所で楽しまれたりします。
キクを育てる際に注意する事は殆どありません。綺麗な花を咲かせたい場合は「日向」に植えたり「肥沃」な土壌に植えて「肥料」や「水やり」をしっかり与える必要がありますが、基本的に丈夫なため放ったらかしでも育てる事が可能です。
キクの主な園芸品種
ノジギクの特徴や園芸品種
原産:日本
学名:Chrysanthemum japonense
草丈:約50cm
分類:多年草
開花時期:10月~11月
花色:黄色●白色〇
葉色:緑色●
耐暑性:強い
耐寒性:強い
用途:切り花
ノジギクとは!?
ノジギクは学名Chrysanthemum japonense、日本固有種で本州(兵庫より西)・四国・九州に分布しており、太平洋沿岸や瀬戸内海近くの山野に自生しています。ノジギクは明治17年に高知県出身の植物学者の牧野富太郎により仁淀川付近で発見・命名されました。現在は宅地造成等で数が減ってきており準絶滅危惧種に指定されています。
ノジギクの語源(由来)
- 属名のChrysanthemumは古代ギリシア語で「金」を意味する「χρυσός(chrysos)」と、「花」を意味する「ἄνθεμον」の2語からなり、花の色に由来しています。
- 種小名のjaponenseは「日本の」を意味しており自生地に由来します。
- ノジギクの由来は「野」や「路地」に生えるキクを意味すると言われています。
ノジギクの特徴(魅力)
- ノジギクは直径約3~5cmの花(頭花)を散房花序に多数咲かせます。
- 花(頭花)は白色の舌状花と黄色の筒状花で構成されています。
- 茎は白色の短い毛で覆われるため灰緑色をしています。
- 茎は直立もしくは倒れます。
- ↳越冬した茎から新芽が出て広がり大株へと成長していきます。
- 葉は縁部分が深く裂け小動物の掌の様な形をしています。
ノジギクの茎は緑色もしくは赤みを帯び白色の短い毛が密生するため灰緑色の外観をしています。茎は直立もしくは倒れて斜上になり分枝しながら高さは50cmまで成長します。葉は茎に対して互生葉序になり、葉色は緑色で白色のうぶ毛があり、葉身の大きさは長さ約3(~5)cm幅約2(4)cmあり、葉身は卵形で3回~5回羽状浅裂(~中裂)しています。花序は頭花が散房花序に集まり、個々の花(頭花)は直径約3~5cmで白色の舌状花と黄色の筒状花が組み合わさります。
ノジギクの切り花の楽しみ方
- ノジギクの収穫は朝の涼しい時間帯もしくは夕方におこないましょう。
- 収穫の前に水を入れたバケツを準備しておきます。
- ノジギクの収穫は花が4分の3以上開いてるものを選びます。
- 収穫したキクはバケツの中で不要な葉を取り除きます。
- 葉を取り除いたら水に漬けて水折りを行いましょう。
- 水折りしたら花瓶に生けて楽しみます。
- ↳管理の方法でも左右されますが日持ちは7~10日程度です。
- 管理は出来るだけ低温環境(糖の消費や蒸散が抑えられる)で数日(約1~3日)ごとに水折りと水換えを行います。
- ↳また花瓶の水に糖(小さじ1)もしくは延命剤(栄養入り)を入れると蕾が開きやすくなります。
オススメの延命剤
ノジギクの栽培方法
ノジギクを育てる際に注意する事は殆どありません。綺麗な花を咲かせたい場合は「日向」に植えたり「肥沃」な土壌に植えて「肥料」や「水やり」をしっかり与える必要がありますが、基本的に丈夫なため放ったらかしでも育てる事が可能です。
ノジギクの主な園芸品種
その他の種や園芸品種
シオギクは学名Chrysanthemum japonense、日本固有種で四国南部の徳島県及び高知県に分布しており、太平洋沿岸や瀬戸内海近くの海岸の崖地等に自生しています。
開花時期は10月~11月(短日植物)、黄色の筒状花のみが集まる直径約0.8~1.0cmの頭花を散房花序に咲かせます。茎は直立で白色の毛が密生し高さ約20~40cmまで成長します。葉色は緑色で表裏(特に葉裏)に白色の毛が密生し、葉身は倒卵形もしくは楕円形で3~5回浅裂する、葉序は互生葉序につきます。