原産:ヨーロッパ/南西アジア/北西アフリカ
科:イチイ(Taxaceae)
属:イチイ(Taxus)
種:ヨーロッパイチイ(baccata)
別名:セイヨウイチイ/コモン・ユー(common yew)/イングリッシュ・ユー(English yew)/ヨーロピアン・ユー(European yew)
開花時期:3月~4月
果実時期:8月~10月
花の色:黄色●
葉色:緑色●黄色●
分類:常緑高木
草丈:約1000~2000cm
誕生花:9月23日/10月21日
花言葉:高尚/慰め/悲哀/慰め/ 憂愁/残念/哀しみ/悲しみ
用途:日陰植物
目次 | ||
| ||
花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
ヨーロッパイチイとは!?
ヨーロッパイチイは学名Taxus baccata、別名では「セイヨウイチイ」や「コモン・ユー(common yew)」等とも呼ばれるヨーロッパおよび南西アジア、北西アフリカが原産の常緑高木です。
ヨーロッパイチイの語源(由来)
- 属名のTaxusの由来は諸説ありますが、果実の果肉以外が有毒な性質から、インド・ヨーロッパ祖語で「走る」「逃げる」を意味する「*tekʷ-」や、ギリシャ後で「弓」を意味する「toxon」や、ギリシャ語で「毒矢」を意味する「toxicum」からきていると言われます。
- 種小名のbaccataはラテン語で「ベリーを運ぶ」を意味しています。
ヨーロッパイチイの特徴(魅力)

- ヨーロッパイチイは庭木や生垣、またトピアリーや盆栽として利用される常緑高木です。
- ヨーロッパイチイは春にクリーム色の花を咲かせますが目立たず装飾的でないため重要視されません。
- ヨーロッパイチイの果実は晩夏から秋頃に実ります。
- 果実は赤色をしていて種子の表面の仮種皮が発達して果肉になります。
- 果肉(仮種皮)は甘く食用となりますが果肉以外は全て(種子含め)が有毒なため食べられません。
- そのため果肉を食べる際は種子を噛まないように注意する必要があります。
- ヨーロッパイチイの果実は1口サイズで食べやすく甘いため鳥がよく食べにきます。
- そのため果期には果実の周りを元気に飛び回るヤマガラやムクドリやツグミの姿が見られるかもしれません。
- ヨーロッパイチイの葉は常緑で刈り込みに強く枝葉が密に茂ります。
- そのため家の境界等に等間隔(約30~50cm)で植えて生垣として利用する事ができます。
- また幾何学模様・動物・文字等の形に剪定すればトピアリーとして楽しむ事もできます。
- ヨーロッパイチイの材は硬く弾力性があるため家具や工具の取って等の様々な場所に利用されます。
- ヨーロッパイチイは寿命が非常に長く1500年を越え成長する事があります。
- ただしヨーロッパイチイは茎内部が空洞になる事も多く樹齢を正確にはかる事ができません。
- ノースウェールズには樹齢4000年とも言われ幹の周囲が1000cmをこえる「Llangernyw Yew」と呼ばれるヨーロッパイチイがあります。
ヨーロッパイチイの茎は木質で樹皮は灰褐色や赤褐色をしており、縦に割れ鱗状に剥がれます。茎(幹)は直径約50(~200)cmの太さになり、樹形は直立して枝分かれがよく高さ約1000(~2000)cmに成長します。葉序は互生葉序、葉色は緑色、葉身の大きさは長さ約1(~3)cm、葉身の形は線形です。花は腋生で一般的に雌雄異株(雌雄同株になったり逆になる事がある)のため雄株(雄花だけ作る)と雌株(雌花だけ作る)があります。花後は種子の表面を覆う仮種子が赤色の果肉として発達して、内側に球状の黒色の種子が収まっています。
ヨーロッパイチイの毒性(既知の危険性)

有毒成分:タキシン(アルカロイド)等
症状:痙攣・嘔吐・悪心・心不全・心停止・呼吸不全
特徴:ヨーロッパイチイは果肉(仮種皮)を除く全ての部分が有毒です。特にヨーロッパイチイは果実が食用とされるため果肉の中にある有毒な種子には注意する必要があります。
ヨーロッパイチイを食べる際は種子を噛まずに果肉だけ食べる必要があります。何故なら有毒な成分が放出されるからです。また種子を噛まずに飲み込んだ場合も、人間の胃の中で分解され体内で毒素が放出される可能性があります。その場合数粒程度で致死量となるため非常に注意が必要になります。
またこれは犬や猫、牛や馬等(鳥は除く)も同様なため動物を飼っている際は、これらの動物がヨーロッパイチイの実や葉を食べないように注意が必要でしょう。
ヨーロッパイチイの栽培方法
園芸では、最大2000cmの高さになり壮大に成長する樹木(成長は緩やか)を鑑賞する目的だったり、等間隔に並べ人の侵入や騒音等を軽減する生垣として利用する目的だったり、幾何学模様や動物の形等にカットしてトピアリーとして利用する目的、底の浅い鉢で根域を制限して盆栽に仕立て楽しむ目的で育てられます。
ヨーロッパイチイを育てる際に注意する事は基本的にありません。剪定(芯止め剪定等)を行わないと品種によっては高さ18m近くなる恐れもありますが、一度活着すれば水やりや肥料を与える事が基本的に不要になり、夏の暑さや冬の寒さに強いため放ったらかしでも育ちます。
イチイの主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
イチイの珍しい種類、主な種とおすすめの園芸品種の紹介【2022】
ヨーロッパイチイの育て方
花壇の土づくり
日当たり
ヨーロッパイチイは直射日光が6時間以上あたる日向から間接光のみがあたる明るい日陰までで育てる事ができます。ただし日当りの悪い場所では葉付きが悪くなったり間延びしたりして、また強い日差しが長時間あたる環境では幹焼けをしたりするため、午後から日陰になるような半日影で育てることが理想です。
土壌の土質
ヨーロッパイチイは通気性が良ければ、基本的に土壌の土質をあまり選びません。
植付けの前に土壌診断を行いましょう。
①土を掘る時に硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
②土を濡らして握った時にバラバラと崩れる場合は保水性がない可能性があります。逆に土の塊が出来ても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。
③肥沃な土の場合は土の色が黒っぽくなるため、土の色が薄い場合は土壌の肥沃さが足りない場合があります。
土壌診断後、必要に応じて通気性を高めるパーライトや川砂を入れたり、保水性や保肥力を高める田土や黒土を混ぜたり、肥沃さが足りない場合は牛ふん堆肥や腐葉土等の堆肥を混ぜこみ土壌改善を行いましょう。
鉢土づくり
日当り
ヨーロッパイチイは日向から半日影迄で育てる事が可能です。夏の暑さの厳しい地域では、必要に応じて株が弱らないように西日の当たらない半日影に移動します。
培養土
ヨーロッパイチイは一般的な草花の培養土で育てられます。自作する場合は通気性と保水性のバランスが良く肥沃な培養土で育てましょう。
- 赤玉土(中粒)+腐葉土=6:4
- 赤玉土(中粒)+バーク堆肥+腐葉土=4:2:4
水やりの仕方
地植え
ヨーロッパイチイを地植えしている場合は基本的には降水のみで育てられます。雨が降らず極端に乾燥が続く場合は必要に応じて散水しましょう。
鉢植え
ヨーロッパイチイを鉢植えで育てる場合は土の乾燥が早くなるため、定期的な水やりが必要になります。基本的には土の表面(数cm)が乾いてきたタイミングで水やりを行うといいでしょう。
肥料の与え方
ヨーロッパイチイは適度に肥沃な土壌であれば多くの肥料は必要ありません。毎年一度、晩冬から早春の間に肥料と土質を改善する堆肥を与えましょう。
元肥
ヨーロッパイチイの元肥は植え付け時もしくは、植付け2週間前(有機肥料の場合)に与えましょう。
元肥は緩効性肥料もしくは配合肥料を選びましょう。肥料の成分は水平型肥料(窒素・リン・カリがバランスよく入る)もしくは山型肥料(リン酸多め)を選びましょう。
元肥の与え方は花壇の場合も鉢植えの場合も、基本的に土壌に均一に混ぜこむ全面施肥です。規定された量を入れましょう。
元肥(寒肥)
寒肥とは休眠中の冬から早春に与える元肥の1種です。
寒肥は元肥と同様に肥効が長い物を選びましょう。具体的には配合肥料や緩効性肥料を選びます。また肥料の成分も元肥と同様に水平型肥料(窒素・リン・カリがバランスよく入る)もしくは山型肥料(リン酸多め)を選びます。
寒肥の施し方は株元から少し離した場所に何ヶ所か穴を掘り、その中に肥料を施しましょう。
また、土質は風雨等でどうしても年々劣化するため、土質を改善する牛ふん堆肥や腐葉土等も穴の中に入れたり、株の近くにマルチングする等して入れてあげるといいでしょう。
剪定のやり方
ヨーロッパイチイの剪定のやり方は、求める樹形により変わります。例えば庭木として花や実を楽しみながら高さを制限して育てる場合は「芯止め剪定」を必要に応じて行いながら育てます。また生垣(トピアリー)として形を維持しながら葉を密に茂らせたい場合は定期的に「刈り込み剪定」しながら育てます。
庭木として育てる場合
ヨーロッパイチイを庭木として花実を鑑賞しながら育てる場合は、剪定せずに育てるか、もしくは高さを抑える目的で必要に応じて「芯止め剪定」を行います。
芯止め剪定を行う時期は晩春から初夏、もしくは初秋から秋の気候が穏やかで植物にストレスのかからない時期に行います。
芯止め剪定のやり方は、木の最も高い場所にある成長点を高枝切り鋏や剪定バサミを利用して剪定するだけです。
芯止め剪定を行う事で、頂芽優勢が崩れて上への成長が抑えられますが恒久的に上への成長が抑えられるわけではないです。そのため必要に応じて定期的に芯止めが必要になる事もあります。
生垣(トピアリー)として育てる場合
ヨーロッパイチイを生垣やトピアリーとして形状を維持しながら育てたい場合は「刈り込み剪定」を行いましょう。
刈り込み剪定を行う時期は葉が濃い緑色になる初夏(6月)と秋(8月~9月)の2回行います。
刈り込み剪定のやり方は1本1本の茎を選別しながら剪定するのではなく、株全体を見ながら剪定します。枝葉の表面全体を均一に撫でる様に剪定して切りそろえましょう。
オススメの刈り込み鋏
播種で増やす
ヨーロッパイチイの種蒔の方法
播種時期:
発芽適温:約
発芽日数:
発芽条件:
- ヨーロッパイチイを種から増やす場合は完熟した果実を採取します。
- 採取したら赤色の仮種皮を剥き中の種子を取り出します。
- 種子を水で洗い発芽を抑制する果肉を綺麗に取り除きます。
- 果肉を取り除いた種子は直ぐに土に撒きましょう。
- 春に種を撒く場合はポリ袋の中にやや湿らせたバーミキュライトと種を入れ、冷蔵庫(約4度)の中で約3ヶ月保管して寒さを経験させます。
- 種を土に置き軽く押し込みます(鎮圧と呼ばれる方法で土と種の接着を高め水分の吸収をよくする)
- そのあと種の上に薄く土を被せます。
- 播種後は乾燥すると発芽率が落ちるため、基本的に土と種が乾燥しないように水やりを行い管理しましょう。