原産:日本/朝鮮/中国/ロシア
科:イチイ(Taxaceae)
属:イチイ(Taxus)
種:イチイ(cuspidata)
別名:シャクノキ/アララギ/キャラボク/スオウ/ヤマビャクダン/ジャパニーズ・ユー(Japanese yew)/スプラッティング・ユー(spreading yew)
開花時期:3月~4月
果実時期:9月~10月
花の色:黄色●
葉色:緑色●黄色●
分類:常緑高木
草丈:約1000~1800cm
誕生花:9月23日/10月21日
花言葉:高尚/慰め/悲哀/慰め/ 憂愁/残念/哀しみ/悲しみ
用途:生垣/日陰植物
目次 | ||
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花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
イチイとは!?
イチイは学名Taxus cuspidata、別名では「シャクノキ」や「ジャパニーズ・ユー(Japanese yew)」等とも呼ばれる日本および朝鮮、中国、ロシアが原産の常緑高木です。日本では北海道・本州・四国・九州・沖縄に広く分布して山地等に自生しています。
イチイの語源(由来)
- 属名のTaxusの由来は諸説ありますが、果実の果肉以外が有毒な性質から、インド・ヨーロッパ祖語で「走る」「逃げる」を意味する「*tekʷ-」や、ギリシャ後で「弓」を意味する「toxon」や、ギリシャ語で「毒矢」を意味する「toxicum」からきていると言われます。
- 種小名のcuspidataはラテン語で「尖った」を意味しており、葉の形に由来しています。
- イチイの由来は、仁徳天皇に献上された笏が、イチイの木で作られていた事からきており、高貴な木として「正一位(セイイチイ)」の名が付けられました。
イチイの特徴(魅力)
- イチイは成長が緩やかで年輪の詰まった良材がとれる事から材が彫刻品等の工芸品や机の天板など様々に利用されており、また園芸では生垣や盆栽等としても利用されます。
- イチイは春にクリーム色の花を咲かせますが、あまり目立たないため園芸的に重要視される事はありません。
- イチイの果実は秋頃に実り食用にされることもあります。
- 果実は種子の表面の赤色の仮種皮が発達して果肉になっており、果肉(仮種皮)は甘い味があり、食用として生のまま食べられたり果実酒として利用されます。
- ただし果肉以外は全て(種子含め)が有毒なためため果肉を食べる際は種子を噛まないように注意したり種子が傷付いていない果肉を果実酒に利用する必要があります。
- イチイの果実は1口サイズで食べやすく鳥がよく食べにくるため、果期には果実の周りを元気に飛び回るヤマガラやムクドリやツグミの姿が観察出来るかもしれません。
- 果実は種子の表面の赤色の仮種皮が発達して果肉になっており、果肉(仮種皮)は甘い味があり、食用として生のまま食べられたり果実酒として利用されます。
- イチイの生垣は本州(中部以北)・北海道等の寒冷地でよく利用されており、刈り込み剪定を行い形状をしっかり整えるフォーマルヘッジの生垣として使われます。
- イチイは葉が小さいため剪定をした時に形が綺麗に揃いやすく、また小さな葉のため途中で葉が剪断されても気になりません。表面を軽く剪定する事で枝葉が密に茂るため目隠し効果も高まります。
- イチイは非常に背が高く成長するため背が高い生垣を作りたい時にピッタリな植物の1つです。
- 希望の高さに成長した時に頂部を剪定(芯止め剪定)するだけで高さを調整する事が可能です。
- イチイは多くの針葉樹と違い、木質部まで剪定した場合も芽吹く事があり、強い剪定に耐える事ができます。
- イチイを生垣として利用する場合の植付け間隔は約30~50cmです。
- イチイは刈り込みに強く葉が小さいためトピアリー植物に向いています。
- トピアリーとしては球形に刈り込んだり、枠(フレーム)を利用して幾何学模様・動物・文字等の形等に剪定したり、また和の仕立てにする場合は玉散らし(主枝ごとに球状もしくは雲形に塊をつくり)に剪定されたりします。
- イチイは耐陰性があるためシェードガーデン等に利用する事が可能です。
イチイの茎は木質で樹皮は灰褐色や赤褐色をしており、縦に割れ不規則に剥がれます。茎(幹)は直径約50(~100)cmの太さになり、樹形は直立して枝分かれがよく円錐形になる傾向があり高さ約1000(~1800)cmに成長します。葉序は互生葉序、葉色は緑色、葉身の大きさは長さ約1(~3)cm、幅約0.2(~0.3)cm、葉身の形は線形です。花は腋生で雌雄異株のため雄株(雄花だけ作る)と雌株(雌花だけ作る)があります。花後は種子の表面を覆う仮種子が赤色の果肉として発達して、内側に球状の黒色の種子が収まっています。
イチイの毒性(既知の危険性)
有毒成分:タキシンB(アルカロイド)・タキシンA(アルカロイド)
症状:痙攣・嘔吐・悪心・心不全・心停止・呼吸不全
特徴:イチイは果肉(仮種皮)を除く全ての部分が有毒です。特にイチイは果実が食用とされるため果肉の中にある有毒な種子には注意する必要があります。
イチイを食べる際は種子を噛まずに果肉だけ食べる必要があります。何故なら有毒な成分が放出されるからです。また種子を噛まずに飲み込んだ場合も、人間の胃の中で分解され体内で毒素が放出される可能性があります。その場合数粒程度で致死量となるため非常に注意が必要になります。
またこれは犬や猫、牛や馬等(鳥は除く)も同様なため動物を飼っている際は、これらの動物がイチイの実や葉を食べないように注意が必要でしょう。
イチイの栽培方法
園芸では、最大1800cmの高さになり壮大に成長する樹木(成長は緩やか)を鑑賞する目的だったり、等間隔に並べ人の侵入や騒音等を軽減する生垣として利用する目的だったり、幾何学模様や動物の形等にカットしてトピアリーとして利用する目的、底の浅い鉢で根域を制限して盆栽に仕立て楽しむ目的で育てられます。
イチイを育てる際に注意する事は基本的にありません。剪定(芯止め剪定等)を行わないと品種によっては高さ18m近くなる恐れもありますが、一度活着すれば水やりや肥料を与える事が基本的に不要になり、夏の暑さや冬の寒さに強いため放ったらかしでも育ちます。
イチイの主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
イチイの珍しい種類、主な種とおすすめの園芸品種の紹介【2022】
イチイの育て方
花壇の土づくり
日当たり
イチイは直射日光が6時間以上あたる日向から間接光のみがあたる明るい日陰までで育てる事ができます。ただし日当りの悪い場所では葉付きが悪くなったり間延びしたりして、また強い日差しが長時間あたる環境では幹焼けをしたりするため、午後から日陰になるような半日影で育てることが理想です。
土壌の土質
イチイは通気性が良ければ、基本的に土壌の土質をあまり選びません。
植付けの前に土壌診断を行いましょう。
①土を掘る時に硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
②土を濡らして握った時にバラバラと崩れる場合は保水性がない可能性があります。逆に土の塊が出来ても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。
③肥沃な土の場合は土の色が黒っぽくなるため、土の色が薄い場合は土壌の肥沃さが足りない場合があります。
土壌診断後、必要に応じて通気性を高めるパーライトや川砂を入れたり、保水性や保肥力を高める田土や黒土を混ぜたり、肥沃さが足りない場合は牛ふん堆肥や腐葉土等の堆肥を混ぜこみ土壌改善を行いましょう。
鉢土づくり
日当り
イチイは日向から半日影迄で育てる事が可能です。夏の暑さの厳しい地域では、必要に応じて株が弱らないように西日の当たらない半日影に移動します。
培養土
イチイは一般的な草花の培養土で育てられます。自作する場合は通気性と保水性のバランスが良く肥沃な培養土で育てましょう。
- 赤玉土(中粒)+腐葉土=6:4
- 赤玉土(中粒)+バーク堆肥+腐葉土=4:2:4
水やりの仕方
地植え
イチイを地植えしている場合は基本的には降水のみで育てられます。雨が降らず極端に乾燥が続く場合は必要に応じて散水しましょう。
鉢植え
イチイを鉢植えで育てる場合は土の乾燥が早くなるため、定期的な水やりが必要になります。基本的には土の表面(数cm)が乾いてきたタイミングで水やりを行うといいでしょう。
肥料の与え方
イチイは適度に肥沃な土壌であれば多くの肥料は必要ありません。毎年一度、晩冬から早春の間に肥料と土質を改善する堆肥を与えましょう。
元肥
イチイの元肥は植え付け時もしくは、植付け2週間前(有機肥料の場合)に与えましょう。
元肥は緩効性肥料もしくは配合肥料を選びましょう。肥料の成分は水平型肥料(窒素・リン・カリがバランスよく入る)もしくは山型肥料(リン酸多め)を選びましょう。
元肥の与え方は花壇の場合も鉢植えの場合も、基本的に土壌に均一に混ぜこむ全面施肥です。規定された量を入れましょう。
元肥(寒肥)
寒肥とは休眠中の冬から早春に与える元肥の1種です。
寒肥は元肥と同様に肥効が長い物を選びましょう。具体的には配合肥料や緩効性肥料を選びます。また肥料の成分も元肥と同様に水平型肥料(窒素・リン・カリがバランスよく入る)もしくは山型肥料(リン酸多め)を選びます。
寒肥の施し方は株元から少し離した場所に何ヶ所か穴を掘り、その中に肥料を施しましょう。
また、土質は風雨等でどうしても年々劣化するため、土質を改善する牛ふん堆肥や腐葉土等も穴の中に入れたり、株の近くにマルチングする等して入れてあげるといいでしょう。
剪定のやり方
イチイは多くの針葉樹の仲間と違い木質部まで剪定した場合も芽吹く事があり、また芽吹く力も強く刈り込み剪定に強い針葉樹です。
イチイは成長が緩やかなため、一般的には年に1回、初秋に剪定すれば十分綺麗な外観を保てます。ただしよりフォーマルで美しい外観を保ちたい場合は年に2回、晩春から夏の間に1回と初秋に1回の剪定が推奨されます。また強い剪定を行う場合は、芽が動く前の早春に剪定を行う事が推奨されます。何故なら休眠中のため株へのストレスが少なく、春からの強い成長で回復が早いからです。
生垣の剪定方法
- イチイの剪定は初秋に1回、もしくは晩春から夏の間にも1回行います。
- 剪定する事により樹形が綺麗に整えられて、剪定した部分より枝分かれするため枝葉が密に茂ります。
- 剪定は刈り込みバサミやヘッジトリマーを利用して側面を刈り込み剪定します。
- 紐などを事前に張っておき、それに合わせて刈り込みを行うと均一に仕上げやすくなります。
- 全体的に上部をやや狭く下部を広く剪定すると下部の枝葉に光がしっかり当たり健康な成長が促されます。
- 側面が終わったら上面を刈り込み剪定をおこないます。
- 紐などを事前に張っておき、それに合わせて刈り込みを行うと均一に仕上げやすくなります。
- ただし希望の高さまで成長していない場合は上面の刈り込み剪定は行いません。
オススメの刈り込み鋏とヘッジトリマー
剪定をプロに任せる
剪定を自分で行う事が不安な場合は、剪定のプロに任せて綺麗に仕上げて貰う事も出来ます。また剪定する時間がとれない、他にも庭の作業を依頼したい時などもプロに作業を任せてしまう事が可能です。
- 剪定作業を自分で行う時に不安がある時
- 剪定は重労働になるため体力が最後までもつか不安がある。
- 大きな木を剪定する時は高所作業になるため怪我をするリスクがあり不安がある。
- 間違った剪定を行う事で、数年後に不格好な樹形になったり、スカスカした生垣になるかもしれない不安がある。※必要な枝と不要な枝の見極めが素人には難しい場合があり、太い枝や古い枝などを残すと不格好な樹形になることもある。
- 剪定を行う時間がとれず放ったらかしになっている
- 生垣の管理が疎かになると枝が暴れるため見た目が悪くなったり、枝が歩行者の邪魔になり怪我をさせるリスクがある。
- 木がどんどん成長していくと管理が難しくなったり、鑑賞したい花が上の方に咲いてしまったり、電線の近くだと枝が電線にかかる可能性がある。
- 剪定の他にも作業を依頼したい
- 庭の草が育って薮のようになっている、芝が伸びてボウボウになっている、庭石を並べたり外壁工事を頼みたい、庭にある不要物を撤去して欲しい等の相談も、剪定依頼をする時に一緒に行うことが可能です。
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播種で増やす
イチイの種蒔の方法
播種時期:
発芽適温:約
発芽日数:
発芽条件:
- イチイを種から増やす場合は完熟した果実を採取します。
- 採取したら赤色の仮種皮を剥き中の種子を取り出します。
- 種子を水で洗い発芽を抑制する果肉を綺麗に取り除きます。
- 果肉を取り除いた種子は直ぐに土に撒きましょう。
- 春に種を撒く場合はポリ袋の中にやや湿らせたバーミキュライトと種を入れ、冷蔵庫(約4度)の中で約3ヶ月保管して寒さを経験させます。
- 種を土に置き軽く押し込みます(鎮圧と呼ばれる方法で土と種の接着を高め水分の吸収をよくする)
- そのあと種の上に薄く土を被せます。
- 播種後は乾燥すると発芽率が落ちるため、基本的に土と種が乾燥しないように水やりを行い管理しましょう。