- 原産:地中海沿岸
- 科:ヒノキ(Cupressaceae)
- 属:イトスギ(Cupressus)
- 種:ホソイトスギ(sempervirens)
- 別名:メジタレイニアン・サイプレス(Mediterranean cypress)/イタリアン・サイプレス(Italian cypress)/タスカン・サイプレス(Tuscan cypress)/ペルシアン・サイプレス(Persian cypress)/ペンシル・パイン(pencil pine)/コニファー
- 開花時期:2月~4月
- 花の色:緑色●
- 葉の色:緑色●黄色●
- 分類:常緑高木
- 草丈:約2000~3500cm
- 花言葉:死/哀悼/絶望
- 用途:コニファー
目次 | ||
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花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
ホソイトスギとは!?
ホソイトスギは学名Cupressus sempervirens、別名では「セイヨウヒノキ」や「メジタレイニアン・サイプレス(Mediterranean cypress)」とも呼ばれる地中海沿岸が原産の常緑高木です。
ホソイトスギの語源(由来)
- 属名のCupressusの由来は恐らくギリシャ神話に出てくるキュパリッソス(Κυπάρισσος)からきています。
- キュパリッソスはテーレポスの子でケオース島に住む美少年です。ケオース島にはキュパリッソスと仲良くしていた金色の角をもつ雄鹿がいましたが、キュパリッソスはある時誤って投槍で雄鹿を殺してしまい深く落ち込んでしまいました。キュパリッソスはその哀しみから、神々に永遠に喪にふくす事を願い、その願いによりイトスギに変えられたという伝説があります。
- 種小名のsempervirensはラテン語で「常に」を意味する「semper」と、ラテン語で「(植物の)緑」を意味する「virens」の2語からきており、常緑の葉に由来しています。
ホソイトスギの特徴(魅力)
- ホソイトスギは幹に対して枝が短く横への広がりが殆どないため円柱形の洗練された形状をしており、その個性的な外観から庭園などのフォーカルポイントとして利用され美しいランドスケープをつくる植物です。
- また商業的には耐久性があり香りの良い材が工芸品等に利用されており、また枝葉から取られる精油が香料や化粧品等に使用されています。
- ホソイトスギの葉は非常に小さく鱗片葉と呼ばれており、小枝に鱗の様についています。
- 枝葉は羽のように広がり光を通す均一な空間をつくるため、透かし模様が入るレースの編み物の様な繊細な印象を与えます。
- ホソイトスギは境界を示す目的で、等間隔に並べて生垣として利用されることがあります。
- ホソイトスギの生垣はふつう洗練された印象や美しい景観をつくる目的で使用されるため、人や動物の侵入を防いだり、目隠し効果を期待する生垣ではないかもしれません。
- また植え付け間隔を狭めると密な生垣をつくる事もできます。
- 非常に高木になるため圧迫感のある高い壁の生垣となります。
- ホソイトスギは墓地の周り植えられている事が多く、歩哨の様に木が立っているため「the churchyard cypress(教会付属の墓地のヒノキ)」等とも呼ばれています。
- ヨーロッパやイスラム世界ではイトスギ(cypress)は喪の象徴であり墓地の木として知られています。
- 理由は強く切り倒されると再生する事が出来ないため死と冥界に関連付けられたと言われています。
- 一方でユダヤ人の伝統では、イトスギ(cypress)がノアの箱舟と神殿を作った木として信じられており、また常緑の性質から永遠の美しさと不滅を象徴しているとされています。
- ヨーロッパやイスラム世界ではイトスギ(cypress)は喪の象徴であり墓地の木として知られています。
- ホソイトスギは1000年を超えて生きる事がある長寿の木として知られており、イランのヤズド州には「アバルクー(Sarv-e Abarkuh)」と呼ばれる樹齢4000~5000年の長寿なイトスギが今も生きてそこにあります。
- ホソイトスギは多湿を苦手にしており、特に夏の高温多湿環境では病気の影響を受けやすい傾向にあります。
ホソイトスギの茎は木質で樹皮は灰褐色もしくは褐色をしており、縦に割れます。樹形は一般的に円柱形で、茎(幹)は垂直に伸び茎(枝)は横へあまり広がらず高さ約2000(~3500)cmに成長します。葉色は緑色、葉身は鱗の様に枝に付き長さ0.2(~0.5)cmの鱗片葉です。花は雌雄同株のため雄花と雌花が一つの木にあります。雄花は円筒型で黄色(~茶色)をしています。雌花は光沢のある緑色をしていて、熟すと赤褐色になり、最終的に灰褐色になります。果実は球果で、球果は直径約2(~4)cmまでの球状でゴツゴツした隆起があり、緑色から赤褐色、灰褐色に熟します。
イトスギの主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
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ホソイトスギの育て方
花壇の土づくり
日当たり
ホソイトスギは成長するために多くの光を必要とするため、基本的には直射日光が6時間以上あたる日向で育てましょう。
土壌の土質
ホソイトスギは幅広い土壌に耐えますが、ジメジメした過湿が長く続く状態や浸水する様な土壌では根腐れや真菌性(フィトフトラ等)の病気にかかりやすくなります。そのため植え付けの前に土壌診断を行いしっかり、水捌けと通気性のよい土作りを行いましょう。
- 土を掘る時に土が硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
- スコップで土を深くまで掘り返し石等を取り除きます。
- 土を適度に濡らして手にとり握って土塊を作り通気性・保水性を診断します。
- 手のひらを開き土の塊がバラバラと崩れる場合は通気性と排水性の高い砂壌土や砂土に近い土壌です。栄養の乏しい土壌や乾燥に強い植物にむきます。
- 手のひらを開いても土の塊は崩れず、土塊を軽く指で押すと崩れる場合は通気性と保水性のバランスが良い壌土に近い土壌です。幅広い植物に向く土壌です。
- 手のひらを開いても土の塊が崩れず、指で押しても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。必要に応じて排水性・通気性を高める用土(川砂・パーライト等)を混和しましょう。
- 土壌に入る有機物の量を診断しましょう。土の色を見て、有機物が沢山入る肥沃な土の場合は有機物(腐植)が多く含むため土の色が黒っぽくなります。一方で有機物(腐植)が少ない場合は土の色が薄くなります。
- 土壌の状態とバランスを見ながら、2割から3割を目安に堆肥(腐葉土等)を土壌に混和しましょう。
鉢土づくり
日当り
ホソイトスギは日当り好むため、直射日光が6時間以上当たる日向で育てましょう。
培養土
ホソイトスギの培養土を自作する場合は通気性と保水性のバランスが良く肥沃な培養土で育てましょう。
- 赤玉土+ボラ土(細粒)+腐葉土=4+2+4
- 赤玉土(中粒)+バーク堆肥=5:5
水やりの仕方
生育初期
ホソイトスギは植え付け後、根が張り活着するまでは、土が完全に乾燥しないように、水やりをしっかり行い育てましょう。
地植え
ホソイトスギは乾燥に強いため、地植えしている場合は極端に乾燥する場合を除いて、基本的には降水のみで育てられます。
鉢植え
ホソイトスギを鉢植えで育てる場合は土の乾燥が早くなるため、定期的な水やりが必要になります。基本的には土の表面(数cm)が乾いてきたタイミングで水やりを行うといいでしょう。
肥料の与え方
ホソイトスギはある程度、有機物を含んだ肥沃な土壌であれば肥料を必要としません。また冬から晩冬に肥料を与える事で成長がよくなる事もありますが、与えなくても問題ありません。
オススメは肥料の代わりに、株の周りに堆肥(腐葉土等)をマルチングする事です。堆肥でマルチングする事で、肥沃な土壌が作られ、雑草が生える事も防げます。
肥料を与える場合(寒肥)
植え付け後の肥料は毎年冬から晩冬(1月~2月)に与えます。基本的にある程度肥沃な土壌であれば肥料を必要としないことから、牛糞堆肥や腐葉土等を株から少し離れた場所にマルチングもしくは、穴を掘って埋めるだけで良いです。肥料を与える場合は水平型の配合肥料もしくは緩効性肥料を選びます。施し方は株元から少し離した場所に何ヶ所か穴を掘り、その中に配合肥料もしくは緩効性肥料を施しましょう。
剪定のやり方
ホソイトスギは基本的に円柱形の樹形になる習慣(決まりのように繰り返す癖)があるため、基本的には剪定しなくても美しい状態を保ちます。剪定高さを制御したり、外観をより美しくする目的で行われる事があります。
ホソイトスギの剪定方法
- ホソイトスギの剪定は早春から晩冬、もしくは夏の終わりに行います。
- ホソイトスギは剪定しない場合、1000cmを越えて成長する可能性があります。
- そのため希望の高さになったら木の最も高い場所にある成長点をノコギリ等をつかい「芯止め剪定」しましょう。
- ただし恒久的に上への成長が抑えられるわけではないため必要に応じて定期的に芯止めが必要になる事もあります。
- 不要な枝を必要に応じて剪定して取り除きます。
- 不要な枝とは側面から突出する徒長枝や、傷ついた損傷枝や、成長見込みがない枯れ枝、垂れ下がっている枝などです。
剪定をプロに任せる
剪定を自分で行う事が不安な場合は、剪定のプロに任せて綺麗に仕上げて貰う事も出来ます。また剪定する時間がとれない、他にも庭の作業を依頼したい時などもプロに作業を任せてしまう事が可能です。
- 剪定作業を自分で行う時に不安がある時
- 剪定は重労働になるため体力が最後までもつか不安がある。
- 大きな木を剪定する時は高所作業になるため怪我をするリスクがあり不安がある。
- 間違った剪定を行う事で、数年後に不格好な樹形になったり、スカスカした生垣になるかもしれない不安がある。※必要な枝と不要な枝の見極めが素人には難しい場合があり、太い枝や古い枝などを残すと不格好な樹形になることもある。
- 剪定を行う時間がとれず放ったらかしになっている
- 生垣の管理が疎かになると枝が暴れるため見た目が悪くなったり、枝が歩行者の邪魔になり怪我をさせるリスクがある。
- 木がどんどん成長していくと管理が難しくなったり、鑑賞したい花が上の方に咲いてしまったり、電線の近くだと枝が電線にかかる可能性がある。
- 剪定の他にも作業を依頼したい
- 庭の草が育って薮のようになっている、芝が伸びてボウボウになっている、庭石を並べたり外壁工事を頼みたい、庭にある不要物を撤去して欲しい等の相談も、剪定依頼をする時に一緒に行うことが可能です。
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夏越しする方法
ホソイトスギは夏の暑さに耐えますが、多湿を苦手にしています。そのため長雨等で浸水したりジメジメとした過湿が続かない様に注意する必要があります。
冬越しする方法
Hardiness:7b~11a
ホソイトスギは耐寒性が高く冬越しの準備をする必要は基本的にはありません。
挿し木や株分けで増やす
ホソイトスギは挿し木で増やすことが出来ます。
ホソイトスギの挿し木の方法
- ホソイトスギの挿し木時期は晩夏から秋が適します。
- 挿し穂は今年成長した部分を利用しましょう。
- 挿し穂を長さ約10~15cmとります。
- 茎の下部分を斜めにカットして吸水部分を広くします。
- 培養土に幾つかの節を入れ深く挿します。
- 節の部分からも発根する。
- 明るい日陰で土壌が完全に乾燥しない様に水やりを行いながら管理しましょう。
播種で増やす
ホソイトスギの種蒔の方法
播種時期:3月~5月(理想)・何時でも
発芽適温:約20~25度
発芽日数:
発芽条件:低温要求性種子
ホソイトスギは寒さを経験しないと発芽しない、低温要求性種子です。そのため、冬の寒さを自然に体験させて発芽させるか、冷蔵庫(約4度)等に入れて寒さを経験させた後に種を撒く必要があります。処理を行うメリットは発芽が揃いやすい所にあります。
種まき手順
- ホソイトスギは発芽の為に寒さの経験が必要なため、秋に種を撒いて冬の寒さを経験させた後に春に発芽させるか、低温処理した後で春に種を撒くかです。
- 春に種を撒く場合は果実(球果)から種子を取り出し、やや湿らせたバーミキュライトに種を混ぜポリ袋の中に入れて、冷蔵庫(約4度)の中で4~6週間保管して寒さを経験させます。
- 低温を種が経験すると休眠打破して発芽の準備が整います。
- 種を撒く前に、ポットに種まき用の培養土を準備します。もしくは直播きする場所の土壌を整えます。
- 種を土に置き軽く押し込みます(鎮圧と呼ばれる方法で土と種の接着を高め水分の吸収をよくする)
- 種の上に薄く土を被せます。
- 播種後は乾燥すると発芽率が落ちるため、基本的に土と種が乾燥しないように水やりを行い管理しましょう。
植物の病気
ホソイトスギの病気
ホソイトスギの害虫