- 原産:地中海沿岸
- 科:キキョウ(Campanulaceae)
- 属:ユウギリソウ/トラケリウム(Trachelium)
- 種:ユウギリソウ/カエルレウム(caeruleum)
- 別名:トラケリウム・カエルレウム/ブルースロートワート(blue throatwort)
- 品種:ハマーパンドラ(trachelium caeruleum ‘hamer pandora’)
- 開花時期:6月~9月
- 花の色:紫色●
- 葉の色:緑色●
- 分類:多年草
- 草丈:約60~90cm
- 誕生花:8月22日
- 花言葉:儚い恋/優しい愛情/穏やかな精神
- 用途:切り花
目次 | ||
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花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)とは!?
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)はモコモコと半球状に盛り上がり咲く直径約12cmの巨大な花姿と、落ち着いた雰囲気ある濃い紫色の花色が魅力的な園芸品種です。濃い紫色の美しい花色は、重厚的で高価な印象を与えたり、モダンでスタイリッシュな印象を与えたりします。そのため重厚感のあるお洒落なお庭や、洗練された現代的なお庭などにおすすめです。草姿は直立で高さ60~90cmまで成長するため花壇の中央や後方に植えて背景や立体感を作るのに利用しやすく、また茎が長いため切り花として利用しやすい所も魅力です。
ユウギリソウとは!?
ユウギリソウは学名Trachelium caeruleum、別名では「トラケリウム・カエルレウム」や「ブルースロートワート(blue throatwort)」等とも呼ばれる地中海沿岸が原産の多年草です。
ユウギリソウの語源(由来)
- 属名のTracheliumはギリシャ語で「首」を意味する「trachelos」と、接尾辞の「-ium」からなり、元は薬用植物として喉の治療に使われていたことに由来します。
- 種小名のcaeruleumはラテン語で「青色」や「空色」を意味しており、花色に由来しています。
- ユウギリソウ(夕霧草)の由来は夕刻の霞んだ霧のように咲く花姿からきています。
ユウギリソウの特徴(魅力)
- ユウギリソウは初夏から秋にかけて咲く花を鑑賞もしくは切り花として楽しむ目的で育てられる植物です。
- 花は直径約10~15cmと非常に大きく華やかで、雲のようなふんわりした外観をつくります。
- 小花は筒状で先端が5裂して星の様な形をしており、花冠から糸状の長い雌しべが突出しています。
- 雄蕊は花冠内部に5個あります。
- 花冠から突出する長い雌蕊が「雲」や「霧」を連想させるふんわりした柔らかな外観をつくります。
- 花にはライラックを思わせるような仄かな甘い香りがあります。
- 小花は筒状で先端が5裂して星の様な形をしており、花冠から糸状の長い雌しべが突出しています。
- 花は蝶々の蜜源にもなるため開花期(6月~9月)になると、花の周りを優雅に飛ぶ蝶々の姿や花房の上に乗って蜜を吸う蝶々の可愛らしい姿を観察出来るかもしれません。
- 花は収穫したあと切り花としても楽しまれており、管理の仕方にも左右されますが花瓶の中で5~14日程度楽しめます。
- ユウギリソウの大きくボリューミーな花は、部屋に飾ることで華やかで豪華な雰囲気をつくったり、また鮮やかな紫色の花色が静かで優雅な印象を与えたりします。
ユウギリソウは草丈が約30(~100)cm、草姿は叢生型(根元から多くの茎が出る)、茎は直立します。茎の色は緑色もしくは赤みを帯びます。葉序は互生葉序、葉色は緑色、葉身は卵形、縁部分に鋸歯があります。花序は複散房花序、複散房花序は直径約5(~12)cm、散房花序が複数組み合わさる複合花序です。花は直径約0.2cm、筒状で裂片が5個、花色は青色・紫色・桃色・白色があり、雄蕊は5個、雌蕊は花冠から突出します。果実は蒴果(複数の心皮からなり果皮が裂開して種子を放出する)です。
ユウギリソウの切り花の楽しみ方
- ユウギリソウの収穫は朝の涼しい時間帯もしくは夕方におこないましょう。
- 収穫は花が半分程が開いてきたタイミングで行うと日持ちが良くなります。あまり早いと蕾が綺麗に咲かないこともあるため注意が必要です。
- 茎に付いた葉は水揚げを悪くするため必要な分を除いて全て取り外しましょう。
- 水揚げは水切りもしくは湯揚げを行います。
- 花瓶に水と延命剤を入れて花を生けましょう。
- 湯揚げしてる場合は花瓶の水を多めに深水にします。
- 延命剤の効果によって蕾が開きやすくなったり日持ちが長くなります。
- 管理は必要に応じて数日ごとに水切りもしくは湯揚げを行い、水換えも同時に行いましょう。
- 日持ちは管理の方法でも左右されますが約5~14日です。
水切り法
水切り法とは、切り花の切り口を水の中に付けた状態で切り戻しを行い、切り口の更新を行う水揚げ方法です。
水切りは、特定の植物または特定の条件を除いた、殆どの植物に行われている、最も一般的な水揚げ方法になります。
水切りは、水の中で茎を切るため導管内に気泡が入りにくいメリットがあります。また水切りを行うことで「微生物」「空気」「その他」が原因で詰まっている茎を取り除くため、切り口からの水揚げ正常に戻ります。
水切りの方法
切り花の切り口を水の中に浸けます。水の中につけた状態で、切口の根元から上に1~5cm程度を取り除くつもりで、ハサミを使って斜めにカットします。
切り口部分を斜めにすることで、吸水部分が広がり、水揚げの効果が高まります。
湯揚げ法
湯揚げ法とは、切り花の切り口をお湯の中と冷水につけて、吸水を改善する水揚げ方法です。※水切りなどをしても、水揚げが上手くいかない場合等に行われます。
湯揚げは、導管内にある空気を熱で膨張させて外に押し出す効果があり、また熱のショックで一気に吸水する効果があります。またお湯で熱するため、切り口部分の雑菌が死滅して、微生物の影響が抑えられます。
湯揚げの方法
- お湯(約60~100度)と冷水を準備します。
- 切り花の花や葉が湯気で弱らないように、新聞紙で切り花を覆います。ただし、切り口の部分はお湯につけるため、茎の下部は新聞紙から出しておきましょう。
- 切り口の根元から上に1~5cm程度を取り除くつもりで、ハサミを使って斜めにカットします。
- お湯(約60~100度)の中に切り口を付けて、切り口から空気が出てこなくなるのをまちます。お湯につける時間はおおよそ20~60秒です。
- お湯から切り花を出して、そのまま冷水の中に2時間程度浸けて水揚げします。
- 水揚げが終わったら必要に応じて水切りを行い花瓶に生けて楽しみます。
深水法
深水法とは、深い水の中に切り花を漬けて水揚げする方法です。※水切りなどをしても、水揚げが上手くいかない場合等に行われます。
深水は、深い水の中に切り花をつけるため、水圧が高まり、水上がりがとてもよくなります。また茎や葉からも水分を吸水するため、萎れが素早く改善します。
深水は水の吸い上げが弱い花材(バラ・ダリア・ラナンキュラス等)でよく行われます。また茎や葉が繊細な植物で深水をすると傷むため、基本的に茎葉が丈夫な花材で行います。
深水のやり方
- バケツの中に切り花が半分程度浸かる程度の水をいれておきます。
- 切り花を新聞紙で包みながら、花や葉が潰れない程度で、しっかり立つように固定して、茎の下部数cmを新聞紙から出しておきます。
- 切り花の切り口を水の中につけた状態で、切口の根元から上に1~5cm程度を取り除くつもりで、ハサミを使って斜めにカットします。
- バケツの中に切り花が半分以上浸かる様にして入れておき、水揚げのため一から数時間程度放置します。
- 水揚げが終わったら花瓶の中に生けて楽しみます。
ユウギリソウのドライフラワーの作り方
- ユウギリソウの収穫は乾燥が続く日の朝(朝露が消えた後)もしくは夕方に行いましょう。
- 収穫のタイミングは花の見栄えが良いものを選びます。
- 茎を好みの長さで剪定ハサミで切って収穫して下葉を取り除きましょう。
- 収穫した花はハンギング法で乾燥させます。
ハンギング法
ハンギング法とは、植物を壁や天井等から吊り下げて自然乾燥でドライフラワーをつくる方法です。ハンギング法は最も一般的に利用されるドライフラワーを作る手順で、用意する物も花材以外には殆ど要らず手軽に作れる所が魅力です。手順は花の茎の下部を固定する物(麻紐・洗濯バサミ等)で抑えて、逆さにし壁や天井から吊り下げます。管理する場所は基本的に直射日光の当たらない涼しく乾燥した場所です。乾燥させる時間は2~4週間程度で、自然乾燥させます。
ユウギリソウの主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
ユウギリソウ(トラケリウム)の珍しい種類、主な種や園芸品種の紹介【2022】
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)の育て方
花壇の土づくり
日当たり
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は日光のよく当たる場所で最もよく成長して沢山の花を咲かせます。そのため直射日光が6時間以上当たる日向で育てる事が理想です。日当たりの悪い環境で育てると、生育が悪くなったり、花が上手く咲かなかったり、徒長して倒伏したりする可能性があります。
作土層
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)がしっかり根を張り健康な成長するには、十分な深さの作土層(表層にある柔らかな土)が必要です。深さ約30cmまでスコップを使い穴を掘り、根張りを邪魔したり保水性や栄養の保持を悪くする石やゴミ等を取り除いておきましょう。
土壌の土質
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は通気性が良ければ幅広い土壌で育てる事が出来ます。ただし雨の後もジメジメした状態が続く排水性の悪い土壌は生育不良を引き起こす原因となるため、水捌けの悪い粘土質な土壌は避けましょう。植え付け前にしっかり土壌診断を行い、水捌けのよい砂壌土から壌土に改善してから植え付けを行いましょう。
- 土を掘る時に土が硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
- スコップで土を深くまで掘り返し石等を取り除きます。
- 適度に濡れた土を、手にとり握って土塊を作り、通気性・保水性などを診断します。
- 手のひらを開き土の塊がバラバラと崩れる場合は通気性と排水性の高い砂壌土や砂土に近い土壌です。栄養の乏しい土壌や乾燥に強い植物にむきます。
- 保水性を改善したい場合は保水性を高める用土(堆肥や黒土など)を入れると良いでしょう。
- 手のひらを開いても土の塊は崩れず、土塊を軽く指で押すと崩れる場合は通気性と保水性のバランスが良い壌土に近い土壌です。幅広い植物に向く土壌です。
- 植物に合わせて保水性を好む植物であれば保水性を高める用土(黒土なバーミキュライト等)を入れたり、乾燥を好む植物であれば排水性や通気性を高める用土(川砂やパーライトなど)を入れましょう。
- 手のひらを開いても土の塊が崩れず、指で押しても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。必要に応じて排水性・通気性を高める用土(川砂・パーライト等)を混和しましょう。
- 手のひらを開き土の塊がバラバラと崩れる場合は通気性と排水性の高い砂壌土や砂土に近い土壌です。栄養の乏しい土壌や乾燥に強い植物にむきます。
- 土壌に入る有機物の量を診断しましょう。土の色を見て、有機物が沢山入る肥沃な土の場合は有機物(腐植)が多く含むため土の色が黒っぽくなります。一方で有機物(腐植)が少ない場合は土の色が薄くなります。
- 土壌の状態とバランスを見ながら、2割から3割を目安に堆肥(腐葉土・バーク堆肥等)を土壌に混和しましょう。
鉢土づくり
日当り
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は日光のよく当たる場所で最もよく成長して沢山の花を咲かせます。そのため直射日光が6時間以上当たる日向で育てる事が理想です。日当たりの悪い環境で育てると、生育が悪くなったり、花が上手く咲かなかったり、徒長して倒伏したりする可能性があります。
培養土
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は一般的な草花の培養土や山野草の土で育てられます。自作する場合は通気性と保水性のバランスがよい培養土から、有機物の少ない培養土で育てる事が可能です。肥沃な土壌で大きな花を咲かせますが、有機物の少ない培養土は夏に蒸れにくく夏越ししやすい等のメリット等があります。
- 赤玉土(小粒・中粒)+腐葉土=6:4
- 川砂+ボラ土(小粒)+赤玉土+腐葉土=3:3:3:1
水やりの仕方
生育初期
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は、活着するまでの生育初期は茎葉が萎れやすいため、土が乾燥しないように水やりをしっかり行いましょう。活着後は、ある程度の干ばつに耐えるほど乾燥に強くなります。逆に多湿になると蒸れて病気になりやすくなるため注意が必要になるでしょう。
地植え
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は乾燥に強いため、地植えしている場合は極端に乾燥する場合を除いて、基本的には降水のみで育てられます。ただし土の中に指を入れて湿り気がない場合、葉や茎が萎れている場合は直ちに水やりを行いましょう。
鉢植え
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)を鉢植えで育てる場合は土の乾燥が早くなるため、定期的な水やりが必要になります。ただし水やりを行い過ぎてジメジメとした環境が続くと根腐れしてしまうため、土のが乾いてきたタイミングで水やりを行うといいでしょう。
肥料の与え方
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は持続的な開花と大きな花を咲かせるために肥料を与える事がとても大切です。そのため植え付け時と開花期間中にしっかり肥料を与えましょう。
元肥の与え方
- 元肥は苗の植え付け時に与える肥料の事です。
- 肥料は肥効が長く続く緩効性肥料を選び、成分は山型肥料(リン酸が多い)を選びましょう。
- 元肥の与え方は土壌に均一に混ぜこむ全面施肥で行ます。
追肥の与え方
- ユウギリソウの追肥は開花期間中に行う肥料です。
- 追肥は肥料の効きが早い速効性肥料を選びましょう。
- ふつうは液肥を定期的に与えます。
- 肥料の与え方は7~10日の頻度で水やりの際に液肥を一緒に与えましょう。
剪定のやり方
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は剪定せずに育てる事も出来ますが、花がら摘みを行うことで株が弱ることを防いだり開花期間を延長する事が出来ます。そのため、開花期間中は定期的に花がら摘みをおこないましょう。
花がら摘み(6月~9月)
ユウギリソウの種を採らない場合は花がら摘みを行いましょう。何故なら枯れた花を残すと見た目が悪いばかりか、種の生成のためにエネルギーが使われて株が弱り寿命が短くなったり、蕾にエネルギーが送られずに開花が進まなかったりするからです。開花を促進するため、必要に応じて花がら摘みを行いましょう。
花がら摘みのやり方は、花の蕾が残ってる場所の上で切り戻し剪定を行うだけです。小さな花が不要な場合は下から切り戻す事も出来ます。
夏越しする方法
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は夏の暑さに耐えますが多湿を苦手にしており、根腐れしたり腐敗する原因になる事があります。そのため必要に応じた夏越し対策が必要です。
ユウギリソウの夏越し対策
- 湿度の高い環境を嫌うため乾燥した場所で管理しましょう。
- 雨に当たることが少ない場所
- 鉢植えの場合は雨に当たらない場所に移動すると良いでしょう。
- 地植えの場合は雨の当たりにく場所で育てると良いでしょう。
- 直射日光がよく当たる場所
- 直射日光6時間以上が理想です。
- 土壌の排水性がよい場所
- 植付けの際に土壌改良をしっかりおこないましょう。
- ロックガーデンなど、周りより高い場所に植えると、水が下に流れやすく、排水性が高まり根腐れしにくくなります。
- 空気の流れがあり風通しがいい場所
- 周りが壁に囲まれていたり、草が繁茂してる場所で管理すると空気が停滞して湿気が溜まりやすくなります。改善しましょう。
- 雨に当たることが少ない場所
冬越しする方法
Hardiness:9a~11b
ユウギリソウ(ハマーパンドラ)は軽い霜であれば耐えられる事があるため、暖地であれば地植えで育てられる事があります。ただし基本的に霜が降りると枯れてしまうため、必要に応じて冬越し対策が必要になります。
ユウギリソウの冬越し対策
- 軽い霜が降りる地域であらば、霜対策として腐葉土などでマルチングをしたり、不織布などを被せるとよいでしょう。
- 支柱を立ててビニールを被せるとより対策効果が上がります。
- 鉢植えで育てている場合は、霜の当たらない軒下に移動したり、凍結が心配な場合は屋内や温室に移動したりするとよいでしょう。
挿し木や株分けで増やす
播種で増やす
ユウギリソウの種蒔の方法
播種時期:3月~5月
発芽適温:約15~20度
発芽日数:約14~21日
発芽条件:
種まき手順
- 種を撒く前に、ポットに種まき用の培養土を準備します。
- もしくは直播きする場所の土壌を整えます。
- 種を土に置き軽く押し込みます(鎮圧と呼ばれる方法で土と種の接着を高め水分の吸収をよくする)
- 種の上に薄く土を被せます。
- 播種後は乾燥すると発芽率が落ちるため、基本的に土と種が乾燥しないように水やりを行い管理しましょう。
植物の病気
ユウギリソウの病気
- 灰色カビ病
- 立枯病
ユウギリソウの害虫
- アブラムシ