- 原産:ヨーロッパ
- 科:マツ(Pinaceae)
- 属:トウヒ/スプルース(Picea)
- 種:ドイツトウヒ(abies)
- 別名:オウシュウトウヒ/ノルウェー・スプルース(Norway spruce)/ヨーロピアン・スプルース(European spruce)
- 品種:ニディフォルミス(picea abies ‘nidiformis’)
- 開花時期:4月~5月
- 花の色:黄色●桃色●紫色●
- 葉の色:緑色●
- 分類:常緑高木
- 草丈:約60~120cm
- 花言葉:不運の中の希望
- 用途:コニファー/カラーリーフ
目次 | ||
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花壇土 | 鉢土 | 水やり |
肥料 | 剪定 | 夏越し |
冬越し | 増やし方 | 病気 |
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)とは!?
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は一般的なドイツトウヒと違いクッションのように地面を被覆する丸みのある樹形をつくり、また高さ約60~120cmと背が低く、幅約90~240cmと地面を広がるため地被植物や低い生垣としても利用できる園芸品種です。
ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)とは!?
ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)は学名Picea abies、別名では「ノルウェー・スプルース(Norway spruce)」や「ヨーロピアン・スプルース(European spruce)」とも呼ばれるヨーロッパが原産の常緑高木です。
ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)の語源(由来)
- 属名のPiceaは粘着性のある樹液および樹脂に関連して「タール」や「ピッチ (樹脂)」を意味するラテン語の「Pix + 接尾辞」に由来しています。
- 種小名のabiesはラテン語で「モミノキ(モミ属)」を意味しており、モミノキに似ている所からきています。
ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)の特徴(魅力)
- ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)はクリスマスツリーとしてヨーロッパでよく利用されている植物です。洗練された印象を与える円錐型の樹形や、トウヒ属で最大の長さがある球果(松ぼっくり)が特徴です。
- ドイツトウヒは他の針葉樹と同じように円錐型の樹形をつくる習慣(決まりのように繰り返す癖)があり、末端の小枝は下垂する傾向にあります。
- そのため枝垂れるような優雅な外観をつくる事があります。
- ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)の葉は針形で長さ1(~2.5)cmと短く螺旋状に密につくため、円柱形のような外観をつくります。
- 葉はふつう緑色ですが、明るく爽やかな印象を与える黄色の葉色などがあるため、品種を選んでカラーリーフとして楽しむ事も出来ます。
- ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)の実は長さ約9~17cmで、トウヒ属の中で最大の長さがあり ます。
- 雌花(未熟な実)は赤桃色をしていて上向きになり若枝の先端に数個つきます。
- ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)は野生では5500cmにも達し非常に大きく成長しますが園芸品種ではコンパクトな品種も多いため小さなお庭でも比較的に管理がしやすいです。
- 主に庭木として育てられたり底の浅い鉢で樹形をコントロールしながら盆栽として育てられたりします。
- クリスマスツリーは様々な針葉樹の木(モミノキやマツノキ等)が使われますが、欧州ではドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)が最も一般的に利用されます。
- ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)の木材は、軽くて腰が強く振動が長く続くなどの特徴があり、トーンウッド(楽器制作に適した特徴をもつ木)として楽器作りの際に重宝されています。
- ストラディヴァリウスの響板はドイツトウヒで作られています。
ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)の茎は木質で樹皮は褐色もしくは灰色をしており、樹皮は成熟すると鱗状に割れ厚く剥がれます。樹高は約3000(~5500)cm、樹形は円錐形、幹の太さは約100(~150)cmあり単幹(根元から上部まで幹が1本)、枝は輪生(同じ高さから枝が何本も出る)で水平に広がり、末端の小枝は垂れ下がる傾向にあります。葉序は互生で螺旋状に葉が密につくため円柱形の外観となり、葉色は緑色、葉身の長さ約1(~2.5)cm、葉身の形は針形です。花は雌雄同株のため黄褐色の長楕円形をした雄花と桃色(~紫色)の卵形をした雌花が個々にわかれて一つの木にあります。実(果実)は球果で松ぼっくりとも呼ばれます。球果は受粉後約5(~7)ヶ月かけて熟し褐色(~赤褐色)になります。球果の長さ約9(~17)cmの長楕円形、鱗状に種鱗が重なり、種鱗の内側に長さ約0.6(~1.5)cmの褐色の翼の付いた約0.5cmの黒色の種子があります。
ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)の園芸品種
- オーレア(picea abies aurea)は冬になるとやや赤みを帯びる黄金色の鮮やかな葉色と、春に最も色鮮やかに生える黄色の葉色が魅力の園芸品種です。樹形は円錐形、樹高は約150~300cmと背が低いため小さな花壇や植え込みでも育てやすいです。
- アクロコナ(picea abies ‘acrocona’)は多花性で春になると甘酸っぱいベリーを連想させるような赤桃色の花をたくさん咲かせる所が魅力の園芸品種です。樹高は約150~400cmまで成長します。
- ペンデュラ(picea abies ‘pendula’)は幹が大きく曲がったり、枝葉が大きく枝垂れたりして、幽霊が羽織るボロ布を連想させるような個性的な樹形をつくる園芸品種です。樹高は約120~450cmまでに成長します。
- ゴールドドリフト(Picea abies ‘Gold Drift’)は色鮮やかな黄色(~黄緑色)の葉色と枝垂れ様に下垂する枝葉が特徴の園芸品種です。横への広がりはほとんどなく樹高は約300~450cmまでに成長します。
- ニディフォルミス(picea abies ‘nidiformis’)は一般的なドイツトウヒと違いクッションのように地面を被覆する丸みのある樹形をつくり、また高さ約60~120cmと背が低く、幅約90~240cmと地面を広がるため地被植物や低い生垣としても利用できる園芸品種です。
- リトルジェム(picea abies ‘little gem’)は成長が非常に緩やかで殆ど剪定をしなくてもトピアリーボールの様にまとまる球状の樹形が魅力の園芸品種です。樹高は約50cmまでに成長します。
- プミラ(picea abies ‘pumila’)はクッションを思わせる様にふんわりと半球状に広がる樹形が魅力の園芸品種です。樹高は最大120cmになります。
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トウヒ(スプルース)の主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
トウヒ(スプルース)の珍しい種類、主な種とおすすめの園芸品種の紹介【2022】
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)の育て方
花壇の土づくり
日当たり
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は成長するために多くの光を必要とするため、基本的には直射日光が6時間以上あたる日向で育てましょう。また直射日光が3時間から5時間の半日影までで育てられます。直射日光の当たらない完全な日陰は許容しません。
土壌の土質
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は、やや湿り気が保たれた通気性の良い壌土から砂壌土を好み、肥沃な土でよく育ちます。そのため植え付けの前に土壌診断を行い改善を行いましょう。
- 土を掘る時に土が硬い場合は作土層が十分でない可能性があります。
- スコップで土を深くまで掘り返し石等を取り除きます。
- 土を適度に濡らして手にとり握って土塊を作り通気性・保水性を診断します。
- 手のひらを開き土の塊がバラバラと崩れる場合は通気性と排水性の高い砂壌土や砂土に近い土壌です。栄養の乏しい土壌や乾燥に強い植物にむきます。
- 手のひらを開いても土の塊は崩れず、土塊を軽く指で押すと崩れる場合は通気性と保水性のバランスが良い壌土に近い土壌です。幅広い植物に向く土壌です。
- 手のひらを開いても土の塊が崩れず、指で押しても崩れる感じがない場合は粘土質で水捌けが悪い土壌の可能性があります。必要に応じて排水性・通気性を高める用土(川砂・パーライト等)を混和しましょう。
- 土壌に入る有機物の量を診断しましょう。土の色を見て、有機物が沢山入る肥沃な土の場合は有機物(腐植)が多く含むため土の色が黒っぽくなります。一方で有機物(腐植)が少ない場合は土の色が薄くなります。
- 土壌の状態とバランスを見ながら、2割から3割を目安に堆肥(バーク堆肥等)を土壌に混和しましょう。
鉢土づくり
日当り
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は日当り好むため、基本的には直射日光が6時間以上当たる日向で育てましょう。
培養土
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)の培養土を自作する場合は通気性と保水性のバランスが良く適度に肥沃な培養土で育てましょう。
- 赤玉土+鹿沼土+腐葉土=4:2:4
- 赤玉土(中粒)+鹿沼土+バーク堆肥+くん炭=4:2:3:1
水やりの仕方
生育初期
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は植え付けから2年、根が張り活着するまでは、土が完全に乾燥しないように定期的に水やりを行い育てましょう。
地植え
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は乾燥に強いため、地植えしている場合は極端に乾燥する場合を除いて、基本的には降水のみで育てられます。
鉢植え
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)を鉢植えで育てる場合は土の乾燥が早くなるため、定期的な水やりが必要になります。基本的には土の表面(数cm)が乾いてきたタイミングで水やりを行うといいでしょう。
肥料の与え方
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)はある程度、有機物を含んだ肥沃な土壌であれば肥料を必要としません。成長初期に肥料を与える事で成長がよくなる事もありますが、与えなくても問題ありません。
オススメは肥料の代わりに、株の周りに堆肥(腐葉土等)をマルチングする事です。堆肥でマルチングする事で、肥沃な土壌が作られ、雑草が生える事も防げます。
肥料を与える場合(寒肥)
植え付け後の肥料は毎年冬から晩冬(1月~2月)に与えます。基本的にある程度肥沃な土壌であれば肥料を必要としないことから、牛糞堆肥や腐葉土等を株から少し離れた場所にマルチングもしくは、穴を掘って埋めるだけで良いです。肥料を与える場合は配合肥料もしくは緩効性肥料を選びます。施し方は株元から少し離した場所に何ヶ所か穴を掘り、その中に配合肥料もしくは緩効性肥料を施しましょう。
剪定のやり方
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は剪定しなくても樹形が整うため基本的には剪定不要です。樹形を制限したり形を整えたい場合など、必要に応じて秋もしくは早春に剪定しましょう。剪定する際は、他の多くの針葉樹と同様に葉のない場所まで剪定すると、その枝が枯れ込むため注意して剪定する必要があります。
剪定方法
- ドイツトウヒは剪定しなくても円柱形や円錐形に形が整う習慣があるため基本的には剪定不要です。
- ただし樹形が乱れる場合もあり、また一部品種をのぞいて成長が早く高木になる可能性があるため必要に応じて剪定を行います。
- ドイツトウヒの庭木として剪定する場合は早春もしくは秋が適します。
- 株全体を観察して枯れた茎・損傷した茎(折れてる茎等)・病気の茎を探して、これを根元から間引き剪定して取り除きます。
- 何故ならこれらの茎は日当りや風通しを阻害したり、エネルギーが分散して、健康に成長している茎葉に悪影響を及ぼしやすいからです。
- 剪定は基本的に樹形を生かした形にするため円錐形「▲」をつくるように剪定します。また上部を狭く下部を広く「▲」の形に剪定すると下部の枝葉にも光がしっかり当たるため、足元の枝が枯れこみにくくなるメリットもあります。※品種によりドーム状に成長するなど成長習慣が違う事もあるため一概ではありません。
- 形を整える場合は基本的には表面から飛び出た徒長枝を、表面から少し奥の場所で切り戻し剪定します。その際に葉のない場所まで強く切り込むと葉のない枝は復活しないため注意が必要です。
- 全体的に形を整えたい場合はヘッジトリマーなどを使って表面をなぞるように刈り込み剪定しましょう。
- 形を整える場合は基本的には表面から飛び出た徒長枝を、表面から少し奥の場所で切り戻し剪定します。その際に葉のない場所まで強く切り込むと葉のない枝は復活しないため注意が必要です。
- ドイツトウヒは高木のため上部を剪定しないとどこまでも高くなる可能性があるため必要に応じて剪定を行います。
- 希望の高さに達したら上部の茎の成長点を剪定(芯止め剪定)して成長を止めましょう。芯止めしても恒久的に成長がとまるわけではないため必要に応じて定期的に剪定する必要があります。
- また芯止め剪定により枝分かれして樹形が乱れる事があるため、幹が二股に分かれたらどちらか一方を取り除き、上部を「▲」に刈り込み剪定するとよいでしょう。
夏越しする方法
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は基本的に冷涼で湿度が高めの気候を好んでおり、高温多湿な環境では生育不良を引き起こしやすくなります。そのため必要に応じて夏越し対策を行いましょう。
夏越し対策
- 鉢植えで育てている場合は、暑さと乾燥対策として、西日の当たらない半日影に移動するといいでしょう。
- 乾燥を苦手にしていることから地植えした株でも雨が降らない時は必要に応じて水やりを行います。
- 鉢植えで育てている場合は、より乾燥が早くなるため注意が必要です。
- 高温多湿を苦手にしているため土壌の排水性を高めて、長雨でも浸水しないようにしたり通気性を高め根にしっかり酸素が行き渡る様にしておきましょう。
冬越しする方法
Hardiness:3b~8a
ドイツトウヒ(ニディフォルミス)は耐寒性が高く冬越しの準備をする必要は基本的にはありません。
挿し木や株分けで増やす
ドイツトウヒは挿し木(若木)や接ぎ木により増やす事が出来ます。
ドイツトウヒの挿し木の方法
- ドイツトウヒの挿し木時期は晩夏から初秋が適します。
- 挿し穂は今年成長した弾力がある茎(硬くない茎)を長さ約10~15cmでとりましょう。
- 茎の下部分を斜めにカットして吸水部分を広くします。
- 茎の下部の葉を取り除きます。
- 挿し穂の切り口を水の中に30分程浸けて水揚げを行います。
- 発根促進剤をつけます。
- 挿し木用の培養土に幾つかの節を入れ挿し穂を深く挿します。
- 明るい日陰で土壌が完全に乾燥しない様に水やりを行いながら管理しましょう。
おすすめの発根促進剤
播種で増やす
ドイツトウヒの種蒔の方法
播種時期:3月~5月(理想)・何時でも
発芽適温:約20度
発芽日数:
発芽条件:低温要求性種子
ドイツトウヒは寒さを経験しないと発芽しない、低温要求性種子です。そのため、冬の寒さを自然に体験させて発芽させるか、冷蔵庫(約4度)等に入れて寒さを経験させた後に種を撒く必要があります。処理を行うメリットは発芽が揃いやすい所にあります。
種まき手順
- 種を撒く前に果実(球果)から種子を取り出し、種子を水の中に24時間つけます。
- やや湿らせたバーミキュライトに種を混ぜ密閉される袋の中に入れて、冷蔵庫(約4度)の中で約6週間保管して寒さを経験させます。
- 種を撒く前に、ポットに種まき用の培養土を準備します。もしくは直播きする場所の土壌を整えます。
- 種を土に置き軽く押し込みます(鎮圧と呼ばれる方法で土と種の接着を高め水分の吸収をよくする)
- 種の上に薄く土を被せます。
- 播種後は乾燥すると発芽率が落ちるため、基本的に土と種が乾燥しないように水やりを行い管理しましょう。
植物の病気
ドイツトウヒの病気
ドイツトウヒの害虫
- ハマキムシ