
- 原産:フランス/ドイツ/スペイン/イギリス/イタリア/ベルギー/ポルトガル/スイス/モロッコ
- 科:キンポウゲ(Ranunculaceae)
- 属:ヘレボルス(Helleborus)
- 種:コダチクリスマスローズ(Helleborus foetidus)
- 別名:スティンキング・ヘレボア(stinking hellebore)/ダングワート(dungwort)/セッターワート(setterwort)
- 開花時期:2月~4月
- 花の色:黄緑色・赤紫色
- 葉の色:緑色
- 香り:葉
- 生活形:常緑多年草
- 草丈:約40~100cm
- 誕生花:
- 花言葉:
- 用途:種から育てる植物/日陰植物
- 購入方法:コダチクリスマスローズを楽天で購入
■コダチクリスマスローズとは!?
コダチクリスマスローズ(学名: Helleborus foetidus)は、別名で「スティンキング・ヘレボア(stinking hellebore)」「ダングワート(dungwort)」「セッターワート(setterwort)」とも呼ばれるキンポウゲ科ヘレボルス属に分類される多年草です。
コダチクリスマスローズの原産地はフランス、ドイツ、スペイン、イギリス、イタリア、ベルギー、ポルトガル、スイス、モロッコで、自生地は森林(落葉樹)の林床、林縁、岩場などに見られます。
■コダチクリスマスローズの語源(由来)
- Helleborusの語源:語源には諸説あり、一説には古代ギリシア語で「小鹿」を意味する「ἐλλός (ellós)」と、古代ギリシア語で「食事する」を意味する「βιβρώσκω(bibrṓskō)」の2語で構成されており「子鹿に食べられる植物」という説があります。またその一方で、古代ギリシア語で「傷つける」を意味する「ἑλεῖν (heleîn)」と、古代ギリシア語で「食べ物」を意味する「βορά (borá)」の2語で構成されており「食べると死ぬ(植物)」という説があります。
- foetidusの語源:ラテン語で「悪臭のある」を意味しており、本種の葉を傷つけたり揉んだりした時の匂いに由来します。
- コダチクリスマスローズの語源:本種が有茎種で木立ちのように茎が直立し、成熟すると木質化する性質をもっていることから「コダチ」と呼ばれており、またクリスマスローズの仲間であることから名前の由来がきています。
■コダチクリスマスローズの特徴(魅力)
- 形態:草丈は約40~100cm、生育型は叢生型で、株元から複数の直立茎を伸ばし、葉は鳥足状複葉に細長い小葉を複数つけます。花は集散花序に多数の萼片の目立つカップ形の花を咲かせます。
- ライフサイクル:春は冬から続く開花が終わりに近付き、開花が終わると結実し、株元から新しい芽をだし茎が伸長します。夏は葉を残しますが高温で生育が緩慢になります。秋になり涼しくなると生育が再度活発になります。冬になると開花が始まります。
- 近縁種との比較:本種は有茎種で、近縁種の多くのクリスマスローズと違い花茎ではなく直立茎を伸ばし普通葉をつけます。また草丈は100cmに達することもあり高性です。この茎には多数の花を付けますが、個々の花の直径が約2~3cmとかなり小振りです。また葉は傷つけたり揉んだりすると悪臭を漂わせる点も際立った特徴となります。
- 花の魅力:開花期は主に2月~4月頃、花の見た目は丸みがあるカップ形で可愛らしさがあり、また俯いて咲くため可憐な印象を感じさせます。花の色は黄緑色の単色、または黄緑色を基調として赤紫色の覆輪が入ります。この花弁に見える萼片は殆ど姿を変えずに数ヶ月に渡り鑑賞価値を保ち続けるため、お庭を長く彩ってくれる点も魅力です。
- シェードガーデン:本種は耐陰性があるため、午前中だけ日光に当たる場所から、日光が当たらず間接光しか入らないような明るい日陰までで栽培が可能です。
■コダチクリスマスローズの生活形と形態
●生活形・茎の形態
- 生活形:常緑多年草
- ライフサイクル:春は開花が終わりに近付き、開花が終わると結実し、古い茎は枯れ、株元からは芽をだし新しい茎が伸長します。夏は葉を残したまま生育が緩慢になる。秋は生育が再度活発になります。冬(主に晩冬)になると開花が始まります。
- 草丈:約40~100cm
- 生育型:叢生型
- 叢生型:根茎から茎が何本も出て叢生(株立ち)するもの。
- 茎の種類:根茎・直立茎
- 根茎:見た目が根に似ている地中にある茎です。
- 直立茎:茎がほとんど垂直に伸びる。
- 茎の色:一般的に緑色ですが、個体差や成熟度や低温などで赤ピンク色・赤紫色に変色することがあります。
- 備考:本種は有茎種で、花茎ではなく直立茎が伸び、茎に普通葉をつけます。茎は多肉質で、成熟すると木質化したように硬くなります。
●葉の形態
- 葉の位置:茎葉
- 葉序:互生葉序
- 葉柄:有柄
- 葉身の概形:鳥足状複葉
- 小葉の数:約7~11枚
- 小葉の概形:狭楕円形・線状披針形
- 小葉の縁部:鋸歯
- 葉の色:緑色
- 備考:常緑性で、質感は革質、傷つけたり揉んだりすると悪臭がします。
●花の形態
- 花序:集散花序で、茎の頂部に花を付けると、花の下にある節が分枝し、次の花が咲き、多数の花が咲きます。花の向きは斜め下向き、または下向きです。
- 苞:花柄の根元に付き、形は卵形、色は黄緑色になります。
- 花:花径は約2~3cm、花は萼・花弁・雄蕊・雌蕊で構成されています。
- 萼:萼の形は浅いカップ状に展開し、萼片の数は5枚、萼片の形は倒卵形、色は黄緑色または黄緑色を基調として赤紫色の覆輪が入ります。
- 花弁:萼片と雄蕊の間にあり、非常に小さく退化しており、形は漏斗状(筒状)で、蜜腺として機能します。
- 雄蕊:数は多数、花糸の色は黄緑色・白色で、葯はクリーム色です。
- 雌蕊:子房上位花で、心皮は数枚でそれぞれ離生し、複数の子房はそれぞれ直立して並び、それぞれ細長い花柱と小さな柱頭がつきます。
●果実・種子の形態
- 果実の分類:集合袋果で、ひとつの花の中にある複数の雌蕊が、それぞれ袋果となり、複数の袋果がひとまとまりになることで、ひとつの果実のように見られます。袋果は、1心皮子房からなり、成熟すると、縫合線に沿い縦に裂けて種子が露出します。
※植物の形態についてはこちらのページも参考にしてください。
■コダチクリスマスローズの園芸品種を紹介
■クリスマスローズ(ヘレボルス属)の主な種と園芸品種は下のリンクから紹介しています。
■コダチクリスマスローズの育て方
花壇の土づくり
●バイオーム
- 主なバイオーム:混合林・温帯広葉樹林
- 原産地:フランス、ドイツ、スペイン、イギリス、イタリア、ベルギー、ポルトガル、スイス、モロッコ
- 自生地:森林(落葉樹)の林床、林縁、岩場などに見られます。
- 気候:地中海性気候(Csa)・西岸海洋性気候(Cfb)に属します。気温は夏に高温になる地域から冷涼な地域まであり、冬は寒冷な地域では氷点下を大きく下回ります。降水量は地域により変わります。西岸海洋性気候では中程度あり、地中海性気候では夏場は乾燥しており、冬は夏の三倍以上の降水量があり比較的湿潤です。
- 日照:半日陰から明るい日陰
- 土壌:主にルビソル(Luvisols)・カルシソル(Calcisols)・カンビソル(Cambisol)・レゴソル(Regosol)・レプトソル(Leptosol)が分布します。このように、肥沃な土壌から痩せた土壌まで幅広い場所に生育しますが、本種はアルカリ質で水はけの良い肥沃な土壌を好む傾向があります。
※バイオームについてはこちらのページも参考にしてください。
●日照条件
コダチクリスマスローズは、明るい日陰から西日の当たらない半日陰で育てることができます。冬は日向で栽培できますが、夏の西日は強光で強いストレスを与えることはもちろん、高温と重なり、複合ストレスになることで致命的な影響を与えることがあります。そのため、理想的な環境は、落葉樹の下で、夏場の高温期に明るい日陰に入り、冬の低温期は落葉した樹木の下で柔らかな日差しをしっかり浴びる環境となります。
日照条件の分類(参考)
- 日向:直射日光が一日を通して6時間以上当たる場所です。一般的に全方位に障害物がない、またはお庭の向きが南向きの場所になります。
- 半日陰:直射日光が3時間から5時間程度当たる場所です。一般的には、午前中のみ日が当たり、午後から日陰になる場所となります。そのため、お庭の向きは東向き、または木漏れ日がはいるような場所です。
- 明るい日陰:直射日光が二時間程度までしか当たらないか、殆ど当たらずに間接光だけで明るい場所です。一般的にお庭の向きが北向き、または建物の影など日差しを遮る障害物が多い環境です。
- 暗い日陰:森の中にあるような直射日光も間接光もほとんど当たらないような暗い場所です。
●土壌の土質
- 土質:基本的に通気性と排水性が十分であれば幅広い土壌に適応しますが、土質は砂壌土・壌土で栽培するのが理想です。土壌が砂質で極端に水捌けが良いと乾燥が早まって萎れたり葉が落ちやすくなったり、栄養が極端に少ない土壌では生育が悪くなることがあります。また粘土質で硬い土壌は根張りが悪くなり、ジメジメとした過湿が続く土壌は根腐れを引き起こす可能性があるため避けた方が良いでしょう。
- 肥沃さ:有機物をしっかりと含む肥沃な土壌を好みます。腐葉土やピートモスなどの有機物を入れることで、土壌の団粒化が促されて物理性(通気性・排水性・保水性)が向上したり、陽イオン交換容量が高くなり保肥力が向上したり、植物が必要とする栄養分を含有するため成長を補助したりする効果が期待出来ます。
- pH:pHは6.5~7.5を好みます。土壌のpHを測定して適正範囲外にある場合は土壌改良材などを用いてpHを調整しましょう。pHが適正範囲から極端に外れた土壌では微量要素などの栄養を上手く吸収出来ずに生育不良になる場合があります。
土壌診断と改善の行い方(参考)
- 排水性の診断:深さ30cm程度・幅30cm程度の穴を掘り、穴の中を水で完全に満たす。一時間あたり約3~10cmの排水があれば、一般的な植物を育てるのに適した排水性になります。※それ以下またはそれ以上である場合は排水が悪い、または排水がよすぎる可能性があります。
- 排水性の改善:花壇を高くしたり、ロックガーデンを作り、植物を植える場所を周囲より高くする。また縦穴暗渠(縦穴排水)や排水溝をつくる。
- 作土層の診断:調べたい箇所の土壌に支柱を出来るだけ深くまでさします。支柱の入った部分が30cm前後あれば一般的な植物であれば、根を張るのに十分な作土層がありますが、それ以下であれば改善が必要です。また土壌を観察して石やゴミがあれば根を伸ばすのに邪魔になるため取り除いた方が良いでしょう。
- 作土層の改善:植物を植える箇所とその周囲をシャベルを使って30cm程度の深さまで掘り起こして解します。また石がある場合は土ふるいを使用して取り除きましょう。
- 土壌(土性)の性質の診断:土壌の通気性・保水性・保肥力を知るために、土壌を砂土・砂壌土・壌土・埴壌土・埴土に分類して、植物に合わせて土壌の改良をしましょう。
- 砂土:排水性と通気性が高く乾燥しやすいため、水分過剰による根腐れを引き起こしにくい。診断は、適度に湿らせた土を触った時にザラザラとした砂の粗い感触がある。手のひらや指で捏ねても全く固まらずに簡単に崩れる。
- 砂壌土:排水性と通気性が高く乾燥しやすい傾向がある、砂土と比べると、保水性と保肥力が少しあるため、乾燥気味の土壌を好む植物などに向いています。診断は、適度に湿らせた土を触った時に砂のザラザラ・粘土のヌルヌルとした感触がある。手のひらや指で捏ねると、緩く固める事が出来るが崩れやすい。
- 壌土:通気性・保水性・保肥力のバランスが高いため土壌管理がしやすい。診断は、適度に湿らせた土を触った時に砂のザラザラ・粘土のヌルヌルとした感触がある。手のひらや指で捏ねて伸ばすと、鉛筆程度の太さの棒状まで伸ばすことが出来る。 ただし伸ばした棒を曲げるのは難しい。
- 埴壌土:保水性・保肥力が高いため乾燥しにくい傾向がある。診断は、適度に湿らせた土を触った時に粘土のヌルヌルとした感触があり、砂のザラザラも少し感じる。手のひらや指で捏ねて伸ばすと、マッチ棒程度の太さまで伸ばすことが出来て、輪っかに曲げても切れにくい。
- 土壌(土性)の性質の改善:土壌の診断をしたら、植物が求める環境に合わせて土壌改良材をいれます。
- 通気性・排水性の改善:通気性・排水性の高い土壌改良材(パーライト・日向土・川砂・バーク堆肥 など)を混ぜ込む。
- 保水性の改善:保水性の高い土壌改良材(腐葉土・ピートモス・バーク堆肥・黒土)を混ぜ込む。
- PHの診断:土壌のPHを調べる方法は土壌酸度計を土壌に突き刺すタイプ・リトマス紙を溶液に浸すタイプ・ペーハー測定器を溶液に浸すタイプ・アースチェック液を溶液に垂らすタイプ等があります。製品によって調べ方がことなるため、詳しい手順は製品の取り扱い説明書をご覧下さい。
- PHの改善:PHを診断後に植物の適正なPHに合わせて、土壌改良材を入れてPHの改善をおこないます。
- PHを酸性に改善:ピートモスを使用する場合はPHを1下げるために、1㎡あたり、ピートモスを約1.2kgを入れて混和します。
- PHをアルカリ性に改善:苦土石灰を使用してPH1上げるには、1㎡あたり苦土石灰を約100~200g入れて混和します。
- 肥沃さの診断:肥沃さは土壌の色によりある程度診断できます。土壌の色は成分や状態を示しており、簡易的に植物を育てるのに適しているか調べる事が出来ます。黒色の場合は腐植が多く肥沃な傾向があり、赤色・黄色・白色の場合は腐植が少なく肥沃でない傾向があります。
- 肥沃さの改善:土壌に堆肥または微生物資材を入れます。堆肥を入れる量は土の量に対して二割から三割程度にします。入れ過ぎると通気性・排水性・保水性のバランスが崩れて植物が育つのに不適な環境になりやすいため注意してください。
※詳しい土壌診断と改善方法はこちらのリンクからご覧下さい
鉢土づくり
●日照条件
コダチクリスマスローズは、明るい日陰から西日の当たらない半日陰で育てることができます。冬は日向で栽培できますが、夏の西日は強光で強いストレスを与えることはもちろん、高温と重なり、複合ストレスになることで致命的な影響を与えることがあります。そのため、夏場の高温期は明るい日陰に移動し、冬の低温期は日向で育てると良いでしょう。
●培養土
コダチクリスマスローズの培養土を購入する場合は、クリスマスローズ専用の培養土を使用すると良いでしょう。
培養土を自作する場合
- 培養土の特性:自生地は森林の林床などです。そのため、基本的に有機物と腐植に富む肥沃な土壌であり、通気性・ 排水性・保水性が優れており、長く保たれるものを好みます。また本種は中性から弱アルカリ性の土壌を好むため、pHの値にも注意しながら培養土を作成しましょう。
- 土壌改良材(無機質):通気性・排水性・保水性を改善する目的で、赤玉土や日向土などの土壌改良材を6割~7割を目安に配合します。土壌改良材の土粒は小粒・細粒を利用します。大きすぎる土粒を使うと、培養土の中に大きな空隙が出来て根の活着が悪くなり、保水性も悪くなり植物の生育が悪くなる原因となるため避けてください。
- 土壌改良材(有機質):腐葉土などの堆肥を全体の3割~4割を目安に培養土の中に配合すると、土壌の物理性・化学性・生物性を改善して、根の活着を高めて根張りをよくしたり、栄養素を含有しており、微生物の働きを促進して土質を改善したり、植物の栄養補給に寄与する働きがあったりします。
培養土の配合例
- 基本の配合:赤玉土(小粒)6割+腐葉土4割+苦土石灰適量+元肥適量
- 保水性の高い配合:赤玉土(小粒)5割+バーミキュライト2割+腐葉土3割+苦土石灰適量+元肥適量
- 培養土が長持ちする配合:日向土(細粒・小粒)5割+腐葉土4割+くん炭1割+元肥適量
- 肥沃な配合:赤玉土6割+ 腐葉土3割+牛糞堆肥1割+苦土石灰適量+元肥適量
水やりの仕方
コダチクリスマスローズは、自生地が日陰の森林の中にあり、基本的に一定の湿り気がある環境を好みます。ただし過湿が続くと病原菌が増えて株が腐敗する原因となったり、根の呼吸を妨げて根腐れを引き起こす原因になったりします。そのため、水やりの頻度には十分な注意が必要です。
地植えで栽培する場合は、基本的に降雨に任せて育てることが出来ます。ただし、雨が全く降らずに土壌が乾燥していたり、極端な暑さで乾燥が早くなっている場合は水やりが必要となります。一方で、鉢植えで育てる場合は、地植えと比べて乾燥がかなり早いため、定期的な水やりが必要です。培養土の状態を見ながら水やりをする必要があるでしょう。水やりの方法は下記を参考にしてください。
●水やりの方法
- 春の水やり:株は生育旺盛で、多くの水を必要とします。そのため、土壌の表面が乾燥したタイミングで水をたっぷり与えましょう。
- 夏の水やり:この時期は、高温のため生育が緩慢になります。株が乾燥で致命的なダメージを受けやすいことはもちろんですが、高温多湿で根腐れを引き起こすこともあるため、水やりの頻度や時間帯も大切となります。基本は、朝の涼しい時間帯に土壌の表面が乾燥したタイミングで水をたっぷり与えましょう。
- 秋の水やり:気候が穏やかになり、生育が旺盛になります。そのため、土壌の表面が乾燥したタイミングで水をたっぷり与えましょう。
- 冬の水やり:生育は緩慢になり、土壌の乾燥も他の季節と比べると緩やかに進み、水やりの頻度も少なくなります。ただし、生育期間中であることは変わらないため、土壌の表層が乾燥したタイミングで水を与えましょう。
注意点
- 水やり時間帯:水やりの時間帯は、基本的に植物が水を欲しがりだす朝に与えるのが最適です。昼や夕方に与える事も出来ますが、季節によっては高温で水がお湯のようになり蒸れて根腐れを引き起こす可能性があります。また夕方に水やりを行うと、植物が水分をあまり必要としない夜間にも水がたっぷり残り呼吸を邪魔するなどして根腐れを引き起こす原因になる事があります。そのため、基本的に朝に水をやることが正しいですが、植物が萎れている場合は時間に関係なく直ぐに水やりを行って下さい。
- 水を与える量:1回に与える水の量はたっぷりです。鉢植えで植物を栽培している場合は、鉢底から水がしっかり流れるまで与えます。その際、水を与える場所が1箇所になると水の道が出来てしまい、特定の場所に水が流れないこともあるため水を与える場所を変えながら与えましょう。地植えで水やりを行う場合は、土壌の表面だけでなく奥まで水を染み込ませるつもりでしっかりと水を与えて下さい。
- 水を与える場所:水を与える場所は基本的に株元から少し離れた場所で、植物に直接かけないようにします。植物上に水が溜まると、そこから真菌などが植物の中に侵入し、病気を引き起こし腐敗させる原因になるため注意して下さい。
土壌の乾燥の確認方法
- 土壌表面の乾燥:土壌の表面の乾燥とは、土壌の最も上の部分の表面が乾燥している事です。土壌表面の乾燥の確認方法には目視・触感があります。
- 目視で確認:土は濡れているなら色が濃くなったり黒っぽくなったりしていて、乾燥すると色が白っぽくなります。
- 触感で確認:土の表面を指で触ってみてます。土は濡れていると湿り気があり、乾燥しているとサラサラとしています。
- 土壌の表層の乾燥:土壌の表層の乾燥とは土壌の表面から5cm以下が乾燥していることになります。※土壌の表層の定義は様々ありますが、ここでは土の表面から5cm程度の深さと定義しています。
- 目視で確認:透明な植木鉢を使用して植物を育てます。透明で土の色の変化が分かるため、土表面から5cm以下の土の色が白っぽくなってきたら水やりを行います。
- 重量で確認:鉢植えで育てている場合は、水分量で鉢の重量が変わるため、土が乾燥した時の軽さを覚えておいて土の乾きを判断します。
- 道具で確認:割り箸・竹串などを用土の中に差してみて、引き上げた時の割り箸・竹串の色と湿り気を見て乾燥具合を確認します。
- 専用の道具:サスティーを土壌にさして使用します。サスティーは土壌が乾くと色が変化して水やりのタイミングを教えてくれます。
肥料の与え方
コダチクリスマスローズは土壌が肥沃であれば肥料が無くても育てる事ができます。ただし、肥料を与えることで株の生育が促進されるため、生育期間中の春と秋は定期的に追肥を施してあげる方がよいでしょう。また土壌の状態を見ながら、土壌の色が薄く痩せていると感じる場合、また鉢植えで育てている場合などは、堆肥を入れてあげてください。
●堆肥の与え方
- 堆肥を入れる時期:植え付け時、または冬から早春に堆肥を入れます。
- 堆肥の入れ方:堆肥の入れ方は地植えと鉢植えでかわります。
- 地植え:植付けや株分けする時などに土壌改良を行い堆肥を入れて混和する。または株の周囲に堆肥を盛ったり、株の周囲に穴を掘り堆肥を入れることもできます。
- 鉢植え:植え替え時に堆肥がしっかり入った新しい培養土を使う。または古い土に2割から3割ほど新しい土を混ぜて再利用することもできます。
●肥料の与え方
- 元肥:元肥は植付け前または植付け時に土壌の中にあらかじめ入れて施す肥料です。
- 肥料の成分:窒素・リン酸・カリが同程度の割合で入る水平型、またはリン酸が多く含まれる山型を選びます。
- 肥料の製品:緩効性肥料・配合肥料(BB肥料など)がおすすめです。
- 施し方:基本的に全面施肥です。全面施肥とは、植物を植付ける土壌・培養土の中に、規定の量の元肥を入れて、偏りがないように混和する方法です。※全面施肥は肥料が植物の根に触れて肥焼けを引き起こす可能性があるため、肥効が緩やかに出る肥料を選ぶ。例として緩効性肥料やBB肥料などです。
- 追肥:植物が生育する途中で施す肥料です。土壌中の栄養素は植物が吸収して減っていくため、追肥を施すことで補います。
- 肥料を与える時期:生育期の春と秋に追肥を施します。夏場は生育が衰退し、この時期に肥料が残ると根腐れを引き起こしやすいため肥料を止めます。
- 肥料の成分:窒素・リン酸・カリがバランス良く入る肥料、またはリン酸が多く入る肥料を選びます。
- 肥料の製品:液肥・固形肥料(速効性・緩効性・BB肥料 など)がおすすめです。
- 施し方(液肥):液肥を規定された分量の水で希釈して、約10~14日の頻度で与えます。液肥は1箇所にかけるのではなく、植物の株元を中心に根が張っている範囲にまんべんなく、全ての根に液肥が行き渡るように施しましょう。
- 施し方(固形肥料):固形肥料の与え方は製品により置き肥タイプ・差し込みタイプ・埋め込みタイプがあります。製品に合わせて、規定された分量・規定された頻度・規定された方法で施しましょう。
剪定のやり方
コダチクリスマスローズは剪定せずに育てる事も出来ますが、より健康で美しい株を維持するために剪定が推奨されます。例えば、花がら摘みを行いエネルギーを栄養成長に振り分け健康な成長を促進します。
剪定をするかは剪定理由を見ながら決めるとよいでしょう。
●剪定方法
- 花がら摘みの方法:花がら摘みを行う時期は株元から新しい芽が発生する春です。花がら摘みの方法は、花が終わり株元から芽が出たのを確認したら、茎の根元から切り取りましょう。
夏越しする方法
コダチクリスマスローズの自生する地域の気候は地中海性気候(Csa)・西岸海洋性気候(Cfb)などに属し、夏場は気温が高温になる地域から冷涼な地域まであり、また降水量も少なく乾燥気味な地域から湿潤な地域まで様々です。ただし、高温になる地中海性気候では夏場にやや乾燥気味になり生育が緩慢になるため、水分の必要量が減ります。一方で、日本は高温多湿のため水分の与え方には注意が必要になってくるでしょう。
基本的な育て方に従えば夏越しはそれほど難しくはありませんが、高温多湿で生育が衰えやすいため、強光・高温・多湿の予防が本種の生育を衰えさせず健康に育てる秘訣になります。
●夏越し対策一覧
- 水やり:夏は生育が緩慢になり半休眠状態になるため水の吸い上げが弱まります。そのため、この時期に頻繁に水を与えると、過剰な水分となり根腐れを引き起こしやすくなります。土壌の状態を見ながら乾燥気味に水やりを行うことが大切です。
- 日差しを避ける:この対策法は高温・強光・乾燥対策になります。鉢植えで育てている場合は、直射日光が当たらない軒下などに移動しましょう。地植えする場合は、夏に栽培することも考えて適切な場所に植えて下さい。
- 日除けをつくる:この対策法は高温・強光・乾燥対策になります。植物と太陽の間に遮光ネットを張り強光を遮ります。
- 雑草の除去:この対策法は多湿対策になります。周囲の雑草は風の流れや太陽光を遮り、育てている植物の成長を妨げたり、多湿を生み出す原因になったりします。そのため、不要な雑草は抜きましょう。ただし、土壌が剥き出しになることで乾燥が早まる場合もあります。
- 排水性の改善:この対策法は多湿対策になります。雨水などが周囲から集まりやすい環境にあったり、硬盤があったりすると排水が上手くいかない場合があります。対策として排水溝をつくったり、縦穴暗渠(縦穴排水)をつくり雨水が外に流れる仕組みをつくりましょう。
- 花壇を高くする:この対策法は多湿対策になります。花壇をレイズドベッドにしたり、岩を並べてロックガーデンなどにしたりして、植物を植える環境を周囲よりも高くすることで排水性が改善されます。
- 土壌の改善:この対策法は乾燥・多湿対策になります。土壌は土質により乾燥のしやすさが変わります。植物の植え付け時や植え替え時に、植物に合わせた土壌に改善をしましょう。詳しくは花壇土からご覧下さい。
- マルチング:この対策法は乾燥・病気対策になります。地面の表面をバークチップや藁などのマルチング資材で覆います。急激な地温の上昇を防ぎ、高温による蒸発、泥はねからの病気の感染なども防いでくれます。
挿し木や株分けで増やす
コダチクリスマスローズは株分けによって増やすことができます。ただし、株分けで根が傷むと回復・定着までに時間がかかります。
●株分けの方法
- 株分け時期:秋に行うのが最適です。
- 株を観察:株を観察し、葉の数が十分にあり、株分けできる程度に大きく成長し、また株が健康であることを確認します。
- 株を掘りあげる:根を出来るだけ傷めないように、株元から離れた場所にスコップを入れて、周囲の土ごと掘り起こします。
- 土を落とす:掘り上げた株についている土や腐った根を優しく取り除きます。ただし、根はデリケートなため根鉢を完全に崩しきる必要はありません。
- 株を分割する:株は太い根茎で繋がっています。根茎に芽(葉)と根を、それぞれ3芽以上付けるようにして、根茎を清潔なナイフで切断し分割しましょう。
- 株分け後:株分け後は根が乾燥する前に素早く植付けを行い、養生しながら管理しましょう。
播種で増やす
コダチクリスマスローズの種蒔の方法
- 播種時期:4月~7月(採種後出来るだけ早く)または発芽促進処理後に撒きます。
- 発芽日数:生理的休眠しているため発芽に数ヶ月から数年かかります。
- 備考:高温湿層処理の後に低温湿層処理が必要です。
発芽促進処理
- 高温湿層処理:休眠から覚めさせるために、高温・湿潤の条件下で発芽促進処理を行うことです。この手順は、袋・バーミキュライト・完熟した種を準備する。次に、袋の中に、軽く湿らせたバーミキュライトを入れて、その中に種を入れる。袋の中の湿潤を保った状態で約15度~20度の場所で2ヶ月程度保管します。保管が終わったら、低温湿層処理を行います。
- 低温湿層処理:休眠から覚めさせるために、低温・湿潤の条件下で発芽促進処理を行うことです。この手順は、高温湿層処理を完了した袋を、湿潤を保った状態で冷蔵庫(約5度)の中に入れて2ヶ月程度保管します。保管が終わったら、冷蔵庫から種を取り出して種を撒きます。
種まき手順
- 種まきの時期:採種した種は、時間が経過すると発芽率が落ちるため、出来るだけ早く撒きますが、生理的休眠状態にあるため、必要に応じ高温湿層処理と低温湿層処理を行った後に撒きます。ただし、これを行った後も発芽に時間がかかることもあります。
- 培養土の準備:直播き・移植栽培※移植栽培はコストや手間が増えますが、苗を病害虫から保護したり、温度・水分の管理が楽になり成功率が高まります。
- 直播き:花壇やプランターの土を整えます。
- 移植栽培:プラグトレー・ピートポット・ポリポット・不織布育苗ポット・ジフィーセブンなどに種まき用の培養土を入れて栽培できます。おすすめは移植の際に根を傷めにくい不織布育苗ポット・ジフィーセブンなどです。
- 種の撒き方:点撒き・すじ撒き・バラ撒き
- 種まき後の管理:種が乾燥すると発芽率が落ちるため、基本的に土と種が乾燥しないように水やりを行い管理します。
- 発芽後:発芽が揃ったら、株同士の間隔を見て、混んでる場所の苗を間引きます。また間引きした苗は別の場所に移植することもできます。※直播きする場合は成長に合わせて株同士がくっついているものを状態がいい方を残し間引きするとよいでしょう。
- 移植:小さなプラグトレーやポットで移植栽培をしている場合は、本葉が2枚以上になったタイミングでポットなどに移植します。出来るだけ根鉢を崩さないように注意しましょう。
- 定植:株がある程度の大きさになったら定植します。定植が遅れると移植時に根を傷付けるリスクが増えると同時に、苗が老化して定植後の成長も悪くなるリスクが高まります。
※鎮圧は土と種の密着度を高め水分の吸収をよくします。










