ビオトープは、その地域に住む昆虫や野生動物が安心して暮らせる環境を作りたい、または共生したいという理念の元に作られる、生き物のためのお庭です。そのため、植物は昆虫や野生動物に有益な植物であり、また地域に密着した植物が基本的に求められます。
ここでは、ビオトープにピッタリな植物を一覧にして紹介しています。更に植物について詳しく知りたい場合は、種類と育て方のリンクからご覧ください。
ビオトープに求められる植物の機能
生物の多様性
ビオトープでは、生物の多様性が重視されます。植物の種類が少ないと訪れる昆虫や野生動物が偏り、生態系のバランスが崩れる事があります。そのため、小さなお庭の中でも多様性を意識して植物を植えてあげると良いかもしれません。
- 地域固有の植物を植えて、地域の生態系に適応した生物が集まりやすい環境を作ります。
- お庭の中に樹木・低木・ツル植物・草花・水生植物など、多様な植物を植えて、陸生や水生の生物が、茂みを隠れ場所として利用したり、葉っぱや果物を食料源にしたり、繁殖場所として利用出来る過ごしやすい環境を作ります。
- 開花期が違う様々な花を植えて、一年を通して昆虫が蜜源または花粉源を利用出来る環境を作ります。
自然環境の保全
ビオトープでは、生物の多様性だけでなく自然環境の保全も大切と考えられています。そのため、日本の生態系には無かった睡蓮などの植物は不適切と考えられる場合があります。そのため、環境保全も考えてビオトープを作りたい場合は、昔から日本原産で古くから地域に自生している植物を選んだ方が良いでしょう。
植物は丈夫なものを選ぶ
ビオトープは自然風のため、基本的に人の手は殆どいれません。そのため、農薬が無くても元気に育ち、地域の環境に合わせた耐寒性・耐暑性・耐湿性などをもっており、水やり・肥料・剪定を殆ど必要としない植物を選びましょう。
ビオトープに合う植物一覧
| 原産:中央アメリカ 草姿はドーム状になるタイプと、茎がスラリと伸びて草丈が高くなるタイプがあります。花壇で育てる場合は草丈が低く花が沢山咲くタイプを選んだり、切り花にしたい場合は草丈が高い品種を選んだりすると良いでしょう。 花はアザミを小さくしたような花が、茎の頂部に集まるためモコモコとしたボリュームのある可愛らしい花姿をつくります。また花からは、長い雄蕊が突出するため、全体としてふさふさとした柔らかな外観になります。 アゲラタムは開花期間が長く、蜜源として蝶々を初め沢山の昆虫を呼ぶことが出来ます。日本原産ではないもののビオトープにおすすめの植物のひとつです。 |
原産:日本 アザミの特徴は、花の雄蕊が突出する事で作られるふんわりとした花姿と、スラリと垂直に伸びる洗練した草姿、葉が鋭利に尖り近寄りがたい印象を与える葉の形です。 アザミの花は昆虫の蜜源になっており、開花中は蝶々などが蜜を求めて花の周りをよく飛び回っています。そのため、自然と生物と共生するスタイルのビオトープにピッタリな植物のひとつとなります。 | 原産:日本 例えば、一般的なアジサイは花が球状で花全体と装飾花が非常に大きく存在感があり土壌のPHで花色が変わる個性的な特徴をもっています。一方で、ノリウツギは花の形が円錐型をしていて、シャープな外観からカッコ良さも感じさせます。 上記のように様々なアジサイがありますが、ビオトープでおすすめなのはガクアジサイタイプのアジサイやイワガラミ等です。アジサイは日本原産のため古くから地域で親しまれており、様々な昆虫の食料源または隠れる場所として機能します。 |
原産:日本 草姿は直立、根茎で広がるため、年を追うごとに群生を作り自然な雰囲気となります。また耐陰性が強く日陰でも花を咲かせる事からシェードガーデンなどにも利用されることが多いです。 | 名称:イワミツバ イワミツバは、根茎を這うように伸ばして広がります。葉(根生葉)が根元から幾つも出て地面を覆う事から、お洒落な印象を与える地被植物として使われることもあります。ただし、根茎が想定外の場所まで侵入して雑草化する事も多い事から注意が必要な植物になります。 イワミツバは蝶々の食草になります。そのためビオトープにおすすめの植物のひとつです。 |
原産:メキシコ エリゲロンの花は、白色から桃色へと花弁の色が変化していきます。そのため、一株の中に白色+桃色+黄色(筒状花)の三色の花が入り交じり、ロマンティックな印象を与えたり、カラフルで元気の良い印象を与えたりする事ができます。また花は蜜源としてシジミチョウを初め様々な昆虫が来るためビオトープにもつかえます。 草姿は、こんもりと盛り上がるドーム状の外観をつくります。そのため、花壇の縁どり等におすすめです。また強健で岩の隙間等でも容易に育つためロックガーデン等に使われることもあります。 | 名称:オキザリス(トリアングラリス) 例えば、花が魅力的なイモカタバミやシボリカタバミ、葉の班が魅力的なモンカタバミ、根茎で広がり地面を被覆するコミヤマカタバミ等です。※詳しくは種類・リンクからご覧下さい。 |
原産:日本 ガマズミはビオトープでも人気の高い植物のひとつです。葉っぱは様々な昆虫に食草として利用されており、花は蝶々の蜜源になり、果実も様々な野鳥が食べに訪れます。 | 名称:カラミンサ 草姿はふんわりと丸みを帯びた草姿をしており、茎は直立するため上品な外観をしています。 花は穂状に並ぶためシャープな印象を与えやすく、また花と花との間に空間があり、光がよく通るためレースの編物ような上品な印象を与えます。白色の花は光を最も反射する色です。そのため、明るく輝くような印象を与え、神々しい雰囲気を感じさせる植物です。 カラミンサは日本原産では無いですが、楚々とした雰囲気が自然風のお庭に良く合い、また花は蝶々や蜜蜂 |
原産:日本 ギボウシはビオトープによく利用される植物のひとつです。日陰や半日影を好み、湿り気のある場所を好むため、ビオトープの環境に適応しやすいからです。 | 原産:アジア・ヨーロッパ 草姿は匍匐性、茎が地面を這うように広がり、葉柄を垂直に伸ばして葉をつけます。そのため、草丈は殆ど高くならず、地面をカーペットのよう覆います。またクローバーは踏圧にとても強いため、通行量が多い小道に使っても問題が起きることはほとんどありません。お庭のデザインに合わせて、葉の色を選び桃色の絨毯や紫色の絨毯を作ってみるのも面白いかもしれません。 クローバーの葉は、丸く可愛らしい小葉が三個集まり、一個の葉(三出複葉)をつくっています。また稀に三個以上の小葉がくっついて一個の葉をつくることもあるようです。 葉の色は、緑色の他にも、桃色や赤色、紫色や灰色と豊富にあるため、お庭のデザインに合わせて品種が選べる所も魅力です。例えば、桃色の葉をもつ品種を選べば、地面を覆うように桃色の葉が広がるため、お庭に桃色の絨毯を敷いたような美しい景観をつくり出すことが可能です。 クローバーは日本原産では無いですが、ビオトープによく合います。何故なら、日本の気候に合っているため育てやすく、また窒素固定菌と共生しているため、栄養の乏しい土壌でもよく育ちます。また花は蝶々や蜜蜂の蜜源ともなっており、葉はモンキチョウ等の食草として利用されているからです。 |
原産:日本 果実は食べることが出来るため、収穫されて生で食べたり、ジャムにして食べたりする目的で育てられます。また幾つかの種や品種では光沢のある白色の葉をもつ種や、黄色の葉色をもつ品種があるため、カラーリーフとして楽しまれることもあります。詳しくは種類のリンクからご覧下さい。 グミは、真っ赤な果実が野鳥の食料源となるため、ビオトープに植えられることが多い植物のひとです。 | 原産: 日本 ジャノヒゲは、幾つかの種や品種で、葉が黒かったり、白色の班が入ったりします。そのため、カラーリーフとして楽しむ事も可能です。 |
原産:日本 草姿はロゼット状、細長くシャープな外観の葉が地面から放射状に広がるため、行儀のよい外観をしています。 花は、普通の花と違い花弁の種類(上弁・側弁・唇弁)によって大きさや付き方がことなります。そのため、個性的な外観の花姿を楽しめたりします。 | 原産:日本・中国・朝鮮 草姿はツル性、茎は吸盤を使い壁面を登る事が可能で、また非常に生育旺盛なため、壁面緑化としてよく使用されます。ツタにより覆われる壁は、人工物と自然の境界を曖昧にするため、ナチュラルな美しい景観を作り出す事に一役かうはずです。 ツタの葉は、ふつう葉のふち部分が掌状に裂けるため「紅葉の葉」や「掌」などを連想させるシャープな外観の葉の形をしています。葉の色は四季折々に変化します。春から夏は青々とした葉色をしており、秋になると紅葉して力強く赤く色付き、冬になると落葉して壁面を這う茎のテクスチャーを楽しむ事が出来ます。 ツタはビオトープでも人気の高い植物のひとつです。何故なら、ツタは昆虫等の隠れ家として機能することはもちろん、花は蜜蜂などの蜜源となり、秋から冬に実る実は野鳥の食源として利用されるからです。 |
名称:テイカカズラ 草姿はツル性、茎は気根を使い壁面を登る事が出来る事から、壁面緑化として使用される事があり、また茎は柔軟で地面を這うように広がるため、地被植物として利用されたり、ハンギング仕立てにされて枝垂れる草姿が鑑賞されたりします。 園芸では、一般的にテイカカズラの園芸品種であるハツユキカズラが親しまれています。ハツユキカズラの特徴は、新葉の色が桃色または白色をしている所です。桃色または白色は愛情や優しさを感じさせます。そのため、愛情などの感情が強く強調されるロマンチックガーデンによく合います。 | 原産:日本 樹形は株立ち状、茎は真っ直ぐ伸びて葉を横に広げます。葉が横に広がりブッシュ状の外観となる事から生垣として利用されることもあります。 花は小さく白色、円錐状に沢山の花が集まるため開花期はボリュームのある花姿が楽しめます。また秋から冬になると赤色の実が実るため、ウィンターガーデンを華やかに彩る事が出来ます。 ナンテンは、赤色の果実が野鳥の食料源となる事から、ビオトープに使用されることもあります。 |
原産:日本・東アジア 例えば、エルダーフラワーは白色または桃色の花が枝の先端に平面状に集まりフラットな花姿を作ります。花後には黒色の果実を残し、果実はジャム等に加熱加工して食べられたりします。また、セイヨウアカミニワトコは小花が円錐状に集まり泡のような個性的な外観の花姿を作ります。また花後には赤色の果実を残し、こちらもジャム等に加熱加工した後に食べられます。 上記の他にも、ニワトコ属の中にはニワトコ等の種や品種があります。詳しくは種類の方のリンクからご覧下さい。 ニワトコは、花が蝶々や蜜蜂の蜜源となり、果実が野鳥の食料源となる事から、ビオトープに取り入れたい植物のひとつとして数えられます。 | 原産:南アメリカ 例えば、半球状に集まる花が非常に華やかで匍匐性の草姿をつくるラナタシリーズ、また燭台のように花穂が並び個性的な外観の花姿が楽しめるハスタータ種、茎がスラリと真っ直ぐ伸び半球状のコロンとした可愛らしい花を咲かせるボナリエンシス種などがあります。上記の他にもバーベナには様々な種と園芸品種があります。詳しくは種類のリンクからご覧ください。 バーベナは日本原産ではありませんが、ビオトープに取り入れたい植物のひとつです。何故なら、蝶々が強く引き寄せられるからです。そのため、ビオトープやバタフライガーデンに取り入れたい植物のひとつになります。ただし、こぼれ種が逸出しやすいため、環境保全の観点からはあまりおすすめ出来ないかもしれません。 |
原産:日本・東アジア 例えば日本にも自生しており、開花期には黄色の花を株一面に咲かせて甘くフルーティーな香りを数メートル先まで漂わせるスイカズラや、樹形が低木で主に生垣として利用されるロニセラ・ニティダ種等です。上記の他にもスイカズラ属には様々な種があります。詳しくは種類のリンクからご覧ください。 ハニーサックル(スイカズラ)は日本にも自生しており、イチモンジチョウの食草になります。また花は蝶々などの昆虫の蜜源にもなるため、ビオトープに取り入れたい植物のひとつになります。 | 名称:ヒヨドリバナ(フジバカマ) 草姿は直立、茎は殆ど横に倒れることなく垂直に伸びるため、雑多な印象を与えず洗練された雰囲気を作ります。また草丈が高くなるため、花壇の中で高さや立体感を出すのにおすすめです。 花は桃色または白色、茎の頂部で密に集まるため、丸みを帯びたボリューム良い花姿をしており、雌蕊が突出するためふんわりした外観を作ります。 また花はアサギマダラの蜜源として知られています。アサギマダラはフジバカマに含まれるアルカロイドの1種(ピロリジジンアルカロイド)を摂取する事で、雄が雌を誘うフェロモンをつくり、雌と雄が交尾します。そのため、ビオトープやバタフライガーデンに取り入れたい植物のひとつとして数えられます。 |